【詳しく】マイナンバー相次ぐトラブル 何が起きた?今後は?

国の給付金などを受け取るためにマイナンバーにひも付けられた公金受取口座に本人ではないが家族名義の口座登録されていたことについて、ことし2月ごろに税金の還付申告の手続きで明らかになり、デジタル庁も情報を把握していたことがわかりました。

マイナンバーカードをめぐるトラブルが相次いでいることを受けて岸田総理大臣は信頼の確保に向けた対応の強化を図るよう改めて指示しました。

相次ぐトラブルについて詳しくまとめました。

“2月ごろには確認していた”

マイナンバーと金融機関の口座をひも付けて登録することで、国の給付金などを受け取ることができる公金受取口座をめぐって、子どもの親など、本人ではない家族名義の口座が登録されたケースが複数、見つかっています。

国税庁ではことし2月ごろ、税金の還付申告の手続きを進める中で公金受取口座の名義と納税者の氏名が異なるケースを確認していたということです。

デジタル庁は国税庁から連絡を受けて、調べた結果、本人ではない家族名義の口座が登録されたケースを2件把握したということですが、具体的な対応はとっていませんでした。

河野デジタル相 情報が共有されず再点検

これについて、河野デジタル大臣は閣議後の記者会見で、デジタル庁で情報が共有されていなかったとしたうえで「イレギュラーな事案の報告を受けていないか再点検をするよう命じた。デジタル庁の中で情報共有がされていなかったことは大変申し訳ない」と陳謝しました。

デジタル庁では、登録された口座の名義が本人と異なる場合には給付金を受け取れない可能性があるとして、本人名義の口座に変更するよう呼びかけていくことにしています。

公金受取口座をめぐっては、これとは別に別の人のマイナンバーに登録されるミスが全国の15の自治体で21件が確認されています。

トラブル相次ぎ システム改修も

マイナンバーカードをめぐっては、トラブルが相次いで明らかになっています。

【マイナ保険証に他人の情報】
政府は、今の健康保険証を来年秋に廃止し、マイナンバーカードに一体化することを目指していますが、マイナンバーカードと一体化した健康保険証に他人の情報が登録されていたケースが、7312件確認されています。

厚生労働省は、主な原因は、健康保険を運営する組合による、加入者情報の入力ミスだったとして先月23日に、およそ3400ある全国すべての組合に対し、これまでの入力作業でルールを守っていたか点検を要請しています。

点検の結果、ルールを守っていなかった場合は入力された情報が正しいかどうか、改めてデータの照会をかけて確認を行い、来月末までに報告するよう求めています。

【コンビニで他人の証明書発行】
マイナンバーカードを使い、コンビニで住民票の写しや戸籍証明書などを交付するサービスでは、別人の証明書が発行されるトラブルが、あわせて14件起きたほか、システム設定の誤りで住所変更が反映されず、古い証明書が発行される不具合が1日、新たに9件確認されています。

また、すでに登録を抹消した印鑑登録証明書が誤って発行されるトラブルも、13件確認されています。

【公金受取口座が別人のマイナンバーに登録】
マイナンバーにひも付けて登録することで、国の給付金などを受け取ることができる「公金受取口座」をめぐっては、別の人のマイナンバーに登録されるトラブルが相次いでいます。

これまでに15の自治体であわせて21件に上っていて、関連するシステムの総点検を実施するとともに、誤った登録を防ぐためのシステム改修を進めています。

【マイナポイントが他人に付与】
さらにマイナンバーカードの取得などで、ポイントがつく「マイナポイント」が、誤って他人に付与されたケースが97の自治体で、あわせて121件確認され、デジタル庁では本人確認を厳格に行うシステムに改修を進めています。

なぜトラブルが起きるのか?

なぜトラブルが起きるのか?家族名義の口座が登録されたケースを見ていきます。

マイナンバーと公金受取口座に登録する金融機関の口座の名義は照合できない仕組みとなっています。

デジタル庁のホームページのよくある質問のページには、「こどもは銀行口座を持っていません。代わりに親の口座を登録できますか」という質問に対して、「登録者本人と異なる名義の口座を公金受取口座として登録することはできません」と案内されています。

しかし、実際にはマイナンバーの登録者と違う名義の口座を公金受取口座として登録することができるのが現状です。その背景にはマイナンバーと公金受取口座に登録する金融機関の口座の名義が照合できない仕組みがあります。

システム上 照合できないため、今後改修へ

マイナンバーには、氏名のふりがながふられておらず、漢字のみが登録されています。一方、金融機関の口座は、カタカナのふりがなのみで登録されているため、システム上、照合することができないのです。このため、子どもの親など、本人ではない家族名義の口座でも、公金受取口座としてマイナンバーにひも付けることが可能になっています。

デジタル庁は、6月2日に成立したマイナンバーに関連する改正法で、マイナンバーにふりがなの登録ができるようになるのにあわせて、ふりがなどうしの照合をシステム上できるよう、改修を行うことにしています。

岸田首相 信頼確保に向け 対策強化を改めて指示

岸田総理大臣は、関係閣僚らが出席して開かれた政府のデジタル社会推進会議で「デジタル社会への移行に際しては『デジタルガバメント』への国民の信頼が重要だ」と指摘しました。

その上で「マイナンバーカードへの信頼確保に向け、一連の事案に関する全てのデータやシステムの再点検を行うとともに、インシデントなどへの対応や、ヒューマンエラーを防ぐデジタル化を徹底するなど、対策を強化してもらいたい」と述べ、河野デジタル大臣に対し対応の強化を図るよう改めて指示しました。

コンビニでの住民票写し 全国でシステム点検

マイナンバーカードを使い、コンビニで住民票の写しなどを交付するサービスで別人の証明書が発行されるトラブルが相次いでいる問題で、デジタル庁は、システムを運営する全国およそ50社で点検が行われていることを明らかにしました。
マイナンバーカードを使い、コンビニで住民票の写しなどの証明書を交付するサービスでは、別人の証明書が発行されるトラブルが相次いでいます。これを受けて富士通の子会社が運営するシステムを使う全国123の自治体などではシステムを最長で6月中旬まで停止し一斉点検を行っています。

その後、ほかの会社が運営するシステムでも住所の変更が反映されていない証明書などが発行されるトラブルが確認されています。

このためデジタル庁は、国と地方公共団体が管理する「J-LIS=地方公共団体情報システム機構」を通じてシステムを運営する全国およそ50社で点検が行われていることを明らかにしました。点検は、システムを止めずに行われ、同じようなトラブルが起きていないか確認作業が進められています。

「マイナポイント」導入で申請が急増

マイナンバーカードの申請は、カードの取得などでポイントがもらえる「マイナポイント」の導入によって増加しました。

去年6月末に、最大2万円分のポイントがもらえる「マイナポイント第2弾」の申し込みが始まったことを受けて、翌7月には、前の月の倍以上のおよそ147万枚の申請がありました。

ポイントが与えられる対象となるカードの申し込み期限とされた去年9月は、1か月でおよそ587万枚の申請がありました。

カードの申込期限はその後2回にわたって延長され、2回目の期限となった12月には658万枚あまり、3回目の期限となったことし2月には、月間では過去最多となる758万枚あまりの申請がありました。

最終日となる2月28日には、自治体の窓口が混雑し、総務省は、申請を1日延長する緊急措置をとるなど対応に追われました。4日時点でのカードの累計の申請枚数は国民の77%にあたる9707万枚あまりとなっています。

専門家 「急速な広がりに人が対応できず事故が相次いだ」

相次ぐトラブルについて、マイナンバー制度に詳しい中央大学の宮下紘教授は、「想定すれば今回は防げるミスだったと思っています。たとえば、子どもの口座がなければ親の口座を登録する、そのような想定のもとシステム上、本人以外の口座をはじく仕組みを作るべきだった」と指摘しています。

こうしたトラブルが、マイナポイントの導入で、カードの申請が急増する中で起きたことについて「ポイント事業による性急な普及、そしてマイナンバー制度が急速に広がりを見せている中で人が対応できない、十分なシステム対応ができていないからこそ事故が相次いでしまった。一定の長いスパンの中で、まずはシステム的なミスが生じないかどうか、こういったことをチェックしていく作業が必要だったのではないかと、
デジタル化というのは、そもそも時間がかかるものです。安全第一で進めることが大切です」としています。