OPECプラス会合 協調減産の今の枠組み 2024年末まで延長で合意

サウジアラビアやロシアなどの主な産油国でつくる「OPECプラス」は4日、会合を開き、協議は難航しましたが今の協調減産の枠組みを来年末まで延長することで合意しました。

さらにサウジアラビアが来月1か月間、1日あたり100万バレルの自主的な追加減産を実施すると表明し、下落傾向にある原油価格を下支えするねらいです。

サウジアラビアが主導するOPEC=石油輸出国機構と、ロシアなどの非加盟の産油国でつくる、「OPECプラス」は4日、OPECの本部があるオーストリアのウィーンで今後の原油の生産量を決める会合を開きました。

このなかでアフリカの一部の国などが生産量の割り当てで難色を示したとされ、協議は難航しました。

交渉の結果、OPECプラスとして今の協調減産の枠組みを来年末まで延長することで合意しました。

OPECプラスでは去年10月、1日あたり200万バレルの減産を実施することを決めましたが、今回の会合では年内、全体でのさらなる減産には至りませんでした。

一方で、サウジアラビアは来月1か月間、自主的に1日あたり100万バレルの追加減産を実施すると明らかにしました。

下落傾向にある原油価格を下支えするねらいです。

サウジアラビア エネルギー相 成果を強調

サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相は会合のあとの記者会見で「前例のない合意にいたり、すばらしい日になった。市場を安定化させるわれわれの野心がいかに大きく適切であるかが理解されたと思う。もっとも重要なことは市場を安定化させ、持続可能にすることだ。それ以上優先されるものはない」と述べ、会合の成果を強調しました。

ロシア ノバク副首相「合意事項を順守していく」

ロシアでエネルギー政策を担当するノバク副首相は会合に出席したあと記者団に対して「ロシアは今後も合意事項を順守していく」と述べたうえで、ロシアとしても1日あたり50万バレルの自主的な減産を来年末まで延長する考えを示しました。

一方、サウジアラビアとの協議について聞かれると「何の不一致もなかった。サウジアラビアとは常に共通の解決策を見いだすことができる。もちろん事前の議論は常にあるが、それでも全体としての合意に至ることができるものだ」と述べ、両国は足並みをそろえているとアピールしました。

WTIの先物価格 一時75ドル台まで上昇

4日のニューヨーク原油市場では国際的な原油取り引きの指標となるWTIの先物価格が先週末の1バレル=71ドル台から一時、1バレル=75ドル台まで上昇しました。

サウジアラビアが来月1か月間、1日あたり100万バレルの自主的な追加減産を実施すると表明したことを受けて需給が引き締まるとの見方が広がったためです。

アナリスト「市場の均衡を保ちたい産油国の強い思い」

OPECプラスの動向に詳しいUBSグループのアナリスト、ジョバンニ・スタオノボ氏は今回、OPECプラスでの協議が難航したことについて、「産油国はOPECプラスの結束を示すことが重要だと思っていて、時間をかけてでも合意に至った。それだけ市場の均衡を保ちたいという強い思いがある」と述べ、産油国が協力関係を重視して妥協点を見いだしたとの見方を示しました。

また、サウジアラビアが自主的に追加減産を決めたことについては、「ここまで大きな規模の追加減産は予想していなかった。大きな動きであり、市場をコントロールしたいサウジアラビアによる各国へのシグナルと言える」と話していました。

松野官房長官「原油市場の安定化を働きかけていく」

松野官房長官は5日午前の記者会見で、「需給のタイト化や不透明さが増し、原油価格の高止まりにもつながりかねない。国際的なエネルギー市場の動向や日本経済に及ぼす影響について緊張感を持って注視するとともに、IEA=国際エネルギー機関や主要消費国との連携を強化しつつ、産油国に対し、増産や生産余力への投資を通じた世界の原油市場の安定化を働きかけていく」と述べました。

価格下落にいらだつサウジ 減産の経緯は

サウジアラビアが自主的な減産を発表した背景には原油価格の下落傾向があります。

OPECを主導するサウジアラビアは国家歳入の6割を石油に頼っており、原油価格が産油国が思うような水準になかなか定着せず、下落傾向にあることに危機感を強めていました。

4月にはサウジアラビアなど、一部の産油国が1日あたりあわせて116万バレルの自主的な減産を行うと発表し、ニューヨーク原油市場のWTIの先物価格は一時、1バレル=83ドル余りの水準まで値上がりしました。

しかし、アメリカの景気減速懸念や銀行破綻などで5月初旬には一時、1バレル=63ドル台まで値下がりしました。

この原油価格の下落には投機筋による空売りと呼ばれる、価格下落を期待する取り引きもあったと言われています。

サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相は先月、投機筋の動きを念頭に、「気をつけろとだけ言っておく」と述べ、空売りへの警告と追加減産の可能性も示唆しました。

また、ロイター通信は2日、今回の会合で、OPEC側がロイター通信とブルームバーグ、それにウォール・ストリート・ジャーナルの記者の取材を拒否したと報道しました。

これら3社は金融市場の動きを専門的に伝えており、会合を主導するサウジアラビアが、原油価格に投機的な動きがあることに神経をとがらせていたのではないかとの見方が出ています。

一方、今回の会合ではOPECプラスを主導してきたサウジアラビアとロシアが原油生産の方針をめぐって対立していると伝えられてきました。

欧米による原油の禁輸などの経済制裁を受けたロシアが外貨収入を稼ごうと輸出を続けていることにサウジアラビアが強く反発しているとも伝えられています。

ウクライナへの侵攻で軍事費が膨れ上がるロシアは欧米の制裁に加わっていないインドや中国などへの原油の輸出を伸ばしており、両国の間で利害が一致していないものとみられていました。

アメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルは先月下旬、「サウジアラビアは、西側の制裁に対抗して生産を絞るという公約を完全に実行しないロシアに怒りを表明し、サウジアラビアの当局者がロシアの高官に苦言を呈した」と伝えています。