アメリカ 債務上限引き上げる法案 議会下院で賛成多数で可決

アメリカの議会下院は政府の借金の上限、債務上限について適用を一時的に停止し、引き上げる法案を賛成多数で可決しました。アメリカの債務不履行の回避に向けて大きく前進した形で、このあと議会上院で法案が可決されるかが焦点となります。

アメリカ政府の債務上限をめぐっては、債務不履行を回避するため引き上げを求めるバイデン政権と、歳出削減を強く求める野党・共和党の対立が続いてきました。

バイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長の再三の協議の結果、28日に合意し、法案が作成されました。

法案は政府予算について、2024年度は国防費以外の歳出を2023年度とほぼ同額にするなど支出を抑えるかわりに、アメリカ政府の債務上限について適用を一時的に停止し、上限を引き上げる内容となっています。

そして31日、議会下院の本会議で法案の採決が行われました。共和党が過半数を握る下院では、一部の議員が歳出の削減が不十分だなどとして法案に反対しましたが、バイデン大統領、共和党のマッカーシー下院議長の説得もあり、超党派の議員の賛成多数での可決となりました。

イエレン財務長官は上限の引き上げなどがなければ、今月5日にも債務不履行に陥ると警告していましたが、回避に向けて大きく前進した形です。

このあと法案は議会上院で審議されます。上院で5日までに可決されるかが焦点となります。

バイデン大統領「極めて重要な一歩を踏み出した」

ホワイトハウスは31日、バイデン大統領の声明を発表しました。

声明では、「議会下院は今夜、史上初の債務不履行に陥ることを防ぎ、われわれの国が苦労して獲得した歴史的な経済回復を守るため、極めて重要な一歩を踏み出した」として歓迎しました。

そのうえでバイデン大統領は、「この法案は超党派による妥協で成り立つものだ。どちらもすべてを得られるわけではない」としたうえで「われわれの国が世界で最も強力な経済を維持できるよう、議会上院に対し、なるべく早く可決するよう求める」などとして、上院に対し速やかな可決を促しました。

マッカーシー下院議長「歴史に名を刻んだ」

野党・共和党のマッカーシー下院議長は記者会見で、「議会はこれまでで最大規模の歳出削減を盛り込んだ法案を通過させたことで歴史に名を刻んだ」と述べ、意義を強調しました。

法案は議会上院へ 期限までに可決されるか焦点

野党・共和党が過半数を握る議会下院での法案採決では、435議席のうち賛成314、反対117の賛成多数で可決されました。棄権が4でした。
117の反対票のうち共和党は71、民主党は46でした。

共和党の一部の議員からは、歳出の削減が不十分だなどの声が出ていた一方、民主党の一部議員からはバイデン大統領が譲歩しすぎだとの批判があがっていたとみられています。

法案はこのあと、与党・民主党が主導権を握る議会上院で審議・採決されます。

アメリカの経済チャンネルCNBCは、両党の指導者が48時間以内の6月2日までに法案の通過を目指していると伝えています。

一方、有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、共和党の一部の議員が法案審議を迅速に進める手続きに同意するかわりに条件をつけているとして、交渉が難航すれば法案通過は週明けにずれ込むおそれもあると伝えています。

イエレン財務長官は、上限の引き上げなどがなければ、6月5日にも債務不履行に陥ると警告していて、期限までに上院で法案が可決されるかが焦点となっています。