電気料金 大手電力7社 きょうから値上げ 最大で2700円余値上げ

東京電力や東北電力など大手電力7社は、6月1日の使用分から電気料金を値上げします。電気料金は値上げ前と比べて最大で2700円余り値上がりします。

大手電力10社のうち、▽北海道電力、▽東北電力、▽東京電力、▽北陸電力、▽中国電力、▽四国電力、▽沖縄電力の7社は、国から認可を受け、6月1日の使用分から家庭向けで契約者が多い「規制料金」を値上げします。

電力各社が平均的な使用量とする家庭の電気料金は、値上げ前と比べて
▽北海道電力が1518円上がって8299円
▽東北電力が1621円あがって7833円
▽東京電力が881円上がって7690円
▽北陸電力が2196円上がって6786円
▽中国電力が1667円上がって7720円
▽四国電力が1783円上がって7345円
▽沖縄電力が2771円上がって9265円となります。

高騰する電気料金をめぐっては、政府の負担軽減策によって、ことし1月の使用分から家庭向けで1キロワットアワー当たり7円が補助されているほか、再生可能エネルギーの普及のために電気料金に上乗せされている「再エネ賦課金」が、ことし4月の使用分から引き下げられています。

こうした措置でことしに入って電気料金は段階的に引き下げられてきましたが、6月1日の使用分から再び値上げに転じることとなります。

高齢者施設では不安の声

6月1日からの電気料金の値上げを受けて、夏に向けて高齢者の体調管理にエアコンを欠かすことができない高齢者施設では、厳しい運営を迫られることになり、不安の声が上がっています。

およそ30人が入所する徳島県阿波市にある高齢者施設では、物価高の影響をうけて、すでに、ことし3月末までの1年間の食材費やガソリン代、それに光熱費などの支出は、前の年度に比べ、およそ490万円、率にして10%近く増えています。

さらにこれから夏に向けて増えるのがエアコンの費用です。

夏を前にした電気料金の値上げは、大幅なコストの増加につながりますが、利用者の体調管理にエアコンは欠かすことはできず、絶対に削ることができません。

全国の介護事業者でつくる団体などが、ことし3月、施設や事業者を対象に物価高の影響について尋ねた調査によりますと、9割以上の施設や事業所が「影響があった」と答え、このうちの3割近くが「事業の廃止や倒産の可能性がある」と回答したということです。

この施設では、職員の部屋の電気を一部消すなどの節電を行っていますが、厳しい運営を迫られると不安を感じています。

施設を運営する徳島市の社会福祉法人の担当者、犬伏功二職員は「すり減ってるというひと言に尽きる。この状態になるまでに本当は手助けが欲しかったんですが、さらに電気代の値上げで厳しいというのが正直なところです」と話していました。

経営への影響 懸念の声も

富山市北新町で酒屋を営む石川正浩さんは、今回の値上げによる経営への影響を懸念しています。

石川さんの店では、富山の地酒を中心に日本酒や焼酎、ウイスキーなどおよそ1600種類の商品を取りそろえていて、商品を保管するために業務用の冷蔵庫を店頭と倉庫であわせて9台設置しています。

冷蔵庫を中心に電気代はこの時期は1月当たり7万円前後かかっていますが、今回の値上げで少なくとも10万円を超えるのではないかと見ています。

しかし、冷蔵庫は商品の品質管理に欠かせず節電は難しいと言います。

また、電気料金の値上がり分を商品に上乗せすると、お客さんがほかの店に流れてしまうおそれがあるため商品の価格は上げられず、電気代の値上げ分がそのまま経営を圧迫すると言います。

店主の石川さんは「メーカーの希望小売価格で販売しているので、値段を上げることは難しく、自社努力で吸収するしかない。酒はしこう品のため家計のために削られやすいが、なんとか削らないで購入してもらいたい」と話していました。

高知のアイスクリーム製造会社では…

電気料金の値上げで、高知県南国市でアイスクリームの製造などを手がけている業者は、電気代が従来のおよそ1.5倍に増加すると見込んでいて、対策に取り組んでいます。

南国市でアイスクリームや冷凍食品の製造などを手がけているこの会社では、電気料金の値上げに伴い、電気代が去年のおよそ1.5倍に跳ね上がり、年間で1700万円ほど増える見通しだということです。

会社では、節電のために工場の空調機器を冷却する装置を設置したり、休みの日は工場の一部の空調を切り、社員が朝早く出勤して、作業場を冷やすなどの対策にすでに取り組んでいます。

さらに7月からは、工場の屋根を使った太陽光発電を導入することにしていますが、こうした対策でおさえられる費用は、電気代全体の1割程度にとどまるということです。

この会社では製造コストの上昇を受けて、ことし3月に4年ぶりとなる商品の値上げを行っていますが、場合によっては再度の値上げも検討せざるをえないということです。

この会社の武市学社長は、「原材料の価格も高騰する中、電気料金の試算を見て、がく然としました。アイスクリームは単価が安いしこう品で、価格転嫁が難しいため、さらなる節電など、やれる手を打っていくしかないと考えています」と話していました。

中小企業 大幅なコスト増加に悩む

電気料金の値上げで、中小企業はコストの大幅な増加に悩まされています。

福井県鯖江市でメガネフレームの製造などを手がける「ウチダプラスチック」では、事務所の倉庫の電灯や、従業員が生活する寮で使う電気を北陸電力の「規制料金」で契約しています。

6月1日から値上がりする分は、会社が負担する方針で、経営者は、寮に住む従業員たちに、こまめに電気を消すなど節電を呼びかけています。

一方、メガネフレームなどの工場で使う電気は、新電力が提供する「自由料金」で契約していますが、燃料費の高騰などに伴って、すでに去年より30%ほど値上がりしています。

このため、電気の使用量をこれまでの6分の1に減らせる最新の機械を導入し、節電に取り組んでいますが、この夏には、さらに値上げされることになっています。

相次ぐ電気料金の値上げで、会社はコストの大幅な増加に頭を悩ませています。

「ウチダプラスチック」の内田栄時社長は、「省エネになる機械の導入や、付加価値の高い商品作りなど、企業として、できることに必死に取り組んできたが、さらにもう1段階の値上げとなると、投資した設備の償却も終わっていない中で、大幅にもくろみが狂ってしまう」と話していました。

負担軽減に 再生可能エネルギーへ切り替える会社も

一方で、電気料金の値上がりや燃料費高騰の負担を、再生可能エネルギーへの切り替えで軽減しようとする会社もあります。

福井県越前市で住宅の防水工事などを手がける「明光建商」は、本社と事務所の屋根に太陽光パネルを設置しています。

以前は、発電した電気を電力会社に売っていましたが、去年1月にパネルを追加で設置して、オフィスで使うようにした結果、年間の電気の使用量は20%余り減少しました。

去年10月までの1年間の電気代の支払いは295万円余りとなり、電気を売ることで得た収入で、すべてまかなえたということで、実質的な負担はゼロとなりました。

さらに、日々の発電で余った分は、社用車として購入した電気自動車やプラグインハイブリッド車に充電することで、ガソリンの消費量も抑えているということです。

この会社は、北陸電力の「規制料金」と連動する料金メニューで契約しているため、値上がりの影響を受けますが、電力会社に売っていた分を自社での使用に回して、値上がり分を賄う計画です。

「明光建商」の塩谷和宏社長は、「太陽光発電で社内の電力をほとんどまかなっているため、値上がりの影響は少ない。電気代も燃料代もさらに上がることも見据えて、コスト意識を高め、再生可能エネルギーの導入を拡充していきたい」と話していました。

この会社に太陽光パネルを設置した「サビデンキ」の山下光一部長によりますと、最近は、太陽光発電の買い取り価格が下落してきたことから、自分で使うための発電に関する問い合わせが増えているということで、「設置の目的が電気を売ることから、値上げ対策に変化している」と話していました。