エチオピアのゴミをエネルギーに 日本企業の挑戦

経済成長が続くアフリカのエチオピア。
いま社会問題となっているのが、「ゴミ問題」です。
解決に自社の技術を生かすことができないか?
この国への進出を目指す企業の挑戦とは。
(帯広放送局記者 嘉味田朝香)
いま社会問題となっているのが、「ゴミ問題」です。
解決に自社の技術を生かすことができないか?
この国への進出を目指す企業の挑戦とは。
(帯広放送局記者 嘉味田朝香)
経済成長の陰で多くの犠牲者も
アフリカ東部に位置するエチオピア。
人口はおよそ1億2000万人とアフリカで2番目に多く、急速な経済成長を続けています。
人口はおよそ1億2000万人とアフリカで2番目に多く、急速な経済成長を続けています。

日本を含む外国企業の注目も高まる一方、現在、ある課題に直面しています。
それが「ゴミ問題」です。
首都アディスアベバにあるゴミ処分場には、処理しきれなかったゴミがそのまま埋め立てられているといいます。
それが「ゴミ問題」です。
首都アディスアベバにあるゴミ処分場には、処理しきれなかったゴミがそのまま埋め立てられているといいます。
近くに焼却炉がありますが、休止が続くこともあり、処理が追いついていないのです。
6年前には、この処分場でゴミの山が崩れて多くの人が亡くなる事故も発生しています。
周囲の環境への影響に加え、汚臭による健康被害も懸念されています。
6年前には、この処分場でゴミの山が崩れて多くの人が亡くなる事故も発生しています。
周囲の環境への影響に加え、汚臭による健康被害も懸念されています。
“ビジネス×社会貢献” 北海道企業の挑戦
そのエチオピアに今、帯広市の廃棄物リサイクル会社が進出を目指しています。
会社の専務の田邊義康さんです。
会社の専務の田邊義康さんです。

エチオピアからの留学生と知り合ったことがきっかけで、エチオピアに関心を持った田邊さん。
なにか現地でビジネスができないかと視察に行き、そこでエチオピアの深刻なゴミ問題を知ったといいます。
なにか現地でビジネスができないかと視察に行き、そこでエチオピアの深刻なゴミ問題を知ったといいます。

タナベ 田邊義康 専務
「10年前に行ったときは、埋め立て処分場はほとんどだだっ広い土地だったんですけど、去年行ってみたら、もう山になって汚臭も数キロ先まで漂うというような、あまりいい状況ではないなというのを肌で感じた」
「10年前に行ったときは、埋め立て処分場はほとんどだだっ広い土地だったんですけど、去年行ってみたら、もう山になって汚臭も数キロ先まで漂うというような、あまりいい状況ではないなというのを肌で感じた」
廃棄物をリサイクルする自社の技術がエチオピアのゴミ問題の解決に生かせるかもしれない。
田邊さんは、現地で事業の展開を目指すようになりました。
核となるのは、RPFという固形燃料です。
田邊さんは、現地で事業の展開を目指すようになりました。
核となるのは、RPFという固形燃料です。

RPFの原材料となるのは、紙や木、プラスチックなどの産業廃棄物。
材料を加工しやすいように砕いたあと、不要な金属を取り除き、熱を加えて圧縮して作られます。
材料を加工しやすいように砕いたあと、不要な金属を取り除き、熱を加えて圧縮して作られます。

業界団体によると、国内では石炭の代替燃料としても使われ、石炭よりも二酸化炭素の排出量が少ないことなどが特徴で、田邊さんはこれを現地に根づかせたいと考えているのです。
現地で高まる期待
JICA=国際協力機構はODA=政府開発援助を使って、途上国の課題を解決する技術を持った中小企業の海外進出を支援する事業も行っています。

田邊さんはこうした支援の枠組みも活用しながら、10年ほど前から現地での視察を繰り返してきました。
ことし3月には、エチオピアの公営の工業団地や、市の清掃局と産業廃棄物の取り扱いに関する覚書も交わしました。
ことし3月には、エチオピアの公営の工業団地や、市の清掃局と産業廃棄物の取り扱いに関する覚書も交わしました。

田邊さんは、現地に自社工場を作ってRPFを製造し、燃料として販売することを目指しています。
今後は、エチオピア政府などの協力を得ながら、ゴミを分別して回収する仕組みを作ったうえで、RPF製造のパイロット事業を開始したい考えです。
今後は、エチオピア政府などの協力を得ながら、ゴミを分別して回収する仕組みを作ったうえで、RPF製造のパイロット事業を開始したい考えです。
田邊義康 専務
「とにかく何でも埋めてしまっているゴミを減らしたいという思いがエチオピア側にはある。それをリサイクルして、資源として有効活用し、さらに数百キロ先の埋め立て処分場まで運ぶという運搬コストなども下げられるなど、さまざまな面で経済的なメリットがあるので、そういったことを向こうでできたらなと思います」
「とにかく何でも埋めてしまっているゴミを減らしたいという思いがエチオピア側にはある。それをリサイクルして、資源として有効活用し、さらに数百キロ先の埋め立て処分場まで運ぶという運搬コストなども下げられるなど、さまざまな面で経済的なメリットがあるので、そういったことを向こうでできたらなと思います」
「まずはシステムとして確立させることが重要かなと思っています。そのあとに、お互いにちゃんと利益がもたらせるような仕組みがなんとかして作れたらなと」
また、帯広市の別の廃棄物リサイクル会社と協力し、RPFの原材料となる紙や木などの廃棄物以外のゴミを堆肥として活用することも目指しています。
農業国であるエチオピアでは現在、世界的な肥料の高騰も課題となっています。
ゴミを減らしながら、さらに肥料問題の解決につなげることも期待されています。
覚書の締結の際には、現地のメディアも取材に来るなど、高い関心が寄せられているということです。
農業国であるエチオピアでは現在、世界的な肥料の高騰も課題となっています。
ゴミを減らしながら、さらに肥料問題の解決につなげることも期待されています。
覚書の締結の際には、現地のメディアも取材に来るなど、高い関心が寄せられているということです。
中国も存在感 進出阻む壁とは
エチオピアのゴミ問題の解決を目指すというこの挑戦。
しかし、課題もあるといいます。
一つが、廃棄物の処理に対する現地の人の意識です。
しかし、課題もあるといいます。
一つが、廃棄物の処理に対する現地の人の意識です。

エチオピアでは、廃棄物にお金をかけて適切に処分するという意識がまだ根づいていないため、廃棄物の有効活用の重要性から広めていく必要があると田邊さんは言います。
廃棄物処理に対する現地の人の意識を高めていけるかが、事業化への重要なポイントとなります。
もう一つの大きな課題が中国との競争です。
アフリカ連合の本部が置かれるなど、アフリカの外交拠点の一つともいえるエチオピアでは、中国の巨大経済構想「一帯一路」により、インフラなどを含めて多くの中国資本が投入され、中国が存在感を示しています。
廃棄物処理に対する現地の人の意識を高めていけるかが、事業化への重要なポイントとなります。
もう一つの大きな課題が中国との競争です。
アフリカ連合の本部が置かれるなど、アフリカの外交拠点の一つともいえるエチオピアでは、中国の巨大経済構想「一帯一路」により、インフラなどを含めて多くの中国資本が投入され、中国が存在感を示しています。
この中に日本の中小企業が食い込んでいかなければなりません。
会社としては、事業の安定性をアピールするなどして中国企業との差別化を図り、現地の信頼を得ることで、ビジネスチャンスにつなげたい考えです。
途上国の社会問題の解決に貢献しながら、ビジネスとして成り立たせることはできるのか。
会社としては、事業の安定性をアピールするなどして中国企業との差別化を図り、現地の信頼を得ることで、ビジネスチャンスにつなげたい考えです。
途上国の社会問題の解決に貢献しながら、ビジネスとして成り立たせることはできるのか。

エチオピアに進出できるかはまだ不透明な段階だということですが、田邊さんはパイロット事業なども行いながら、一つ一つ壁を越えて事業化を目指したいとしています。
田邊義康 専務
「埋め立て地に処理できなくなったゴミが山になっているために、汚臭が数キロ先の住宅に漂っているというような状態をなくせるようにしていきたい」
「埋め立て地に処理できなくなったゴミが山になっているために、汚臭が数キロ先の住宅に漂っているというような状態をなくせるようにしていきたい」

帯広放送局記者
嘉味田 朝香
2021年入局
地域の自治体などを取材
嘉味田 朝香
2021年入局
地域の自治体などを取材