北朝鮮「衛星」発射通報で政府 警戒監視を強化 沖縄上空通過も

北朝鮮から通報があった「人工衛星」の打ち上げ計画について、政府は、近く「衛星」と称する弾道ミサイルが発射され、沖縄県の上空を通過する可能性があると分析しています。Jアラートでの避難情報の発出に万全を期すとともに、情報収集や警戒監視を強化することにしています。

北朝鮮は、31日から6月11日までの間に「人工衛星」を打ち上げると、海上保安庁に通報してきました。

岸田総理大臣は「『衛星』と称したとしても、弾道ミサイル技術を用いた発射は国連の安保理決議違反であり、国民の安全にかかわる重大な問題だ」と北朝鮮を非難しました。

政府は、北朝鮮が近く「衛星」と称する弾道ミサイルを発射すると見ていて、2016年のケースと同様に、沖縄県の先島諸島付近の上空を通過する可能性があると分析しています。

このため、浜田防衛大臣は29日に、自衛隊に対して日本の領域への落下に備え、迎撃できるようにするための「破壊措置命令」を出しました。

一方、外務省幹部は、アメリカと韓国の高官と電話で対応を協議し、北朝鮮に対し、自制を強く求めていくことを確認しました。

政府は、Jアラート=全国瞬時警報システムでの避難情報の発出に万全を期すとともに、アメリカや韓国と連携しながら、情報収集や警戒監視を強化することにしています。

韓国 連合ニュース「世界航行警報業務に従い日本に通報」

韓国の通信社、連合ニュースは「IMO=国際海事機関の総会決議に基づいて運用されている世界航行警報業務に従って、東アジア・太平洋区域の調整国を務めている日本に対し通報が行われた」と伝えています。

北朝鮮は、2009年以降「人工衛星の打ち上げ」と称する事実上の長距離弾道ミサイルの発射に先立って、IMOなどの国際機関に対し直接通告していましたが、今回はこれまでの対応とは異なると指摘しています。

一方、連合ニュースは、フィリピンの東側の太平洋上に設定された、ロケットの2段目の落下が予想される場所が以前よりも遠くなっていて、性能が向上している可能性があるという専門家の見方を伝えています。

また、キム・ジョンウン(金正恩)総書記が5月16日に視察した、軍事偵察衛星1号機とされる物体の重さは300キロと推定され、ロケットのエンジンの推力も以前に比べて大きくなるとしています。

浜田防衛相「警戒監視に全力を挙げていく」

北朝鮮から通報があった「人工衛星」の打ち上げ計画について、浜田防衛大臣は、「衛星」と称しても、過去の例を踏まえれば弾道ミサイルと推定され、国民の安全に関わる重大な問題だとして、情報収集や警戒監視に全力を挙げる考えを示しました。

北朝鮮が5月31日から6月11日までの間に「人工衛星」を打ち上げると海上保安庁に通報したことを受けて、浜田防衛大臣は5月30日、自衛隊に対して日本の領域への落下に備え、迎撃できるようにするための「破壊措置命令」を出しました。

これについて浜田防衛大臣は閣議のあと記者団に対し「北朝鮮が『衛星』と称して発射を表明したものは過去の例を踏まえれば、弾道ミサイルと推定される」と指摘しました。その上で「北朝鮮による弾道ミサイル技術を用いた発射は国連安保理決議に違反し、国民の安全に関わる重大な問題だ。アメリカ、韓国などと緊密に連携しつつ北朝鮮に対し挑発行為の自制や安保理決議の順守を求めるとともに引き続き情報の収集、分析、警戒監視に全力を挙げていく」と述べました。

松野官房長官 「公表すべき情報を入手後は速やかに発表」

松野官房長官は閣議のあとの記者会見で「北朝鮮の軍事動向に平素から重大な関心を持って情報収集、分析に努めている。防衛省・自衛隊は、各種情報を踏まえた総合的な分析評価などに基づき 適切な体制を構築しており、北朝鮮からミサイルが発射された場合、公表すべき情報を入手した場合には速やかに発表する」と述べました。

その上で「人工衛星の打ち上げには弾道ミサイルとほぼ同一で互換性のある技術が組み込まれており、北朝鮮が用いる呼称にかかわらず、今回も弾道ミサイル技術を使用すると考えている。いかなる発射も国連安保理決議に違反する」と述べました。