【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(30日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる30日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

プーチン大統領「われわれを挑発している」

ロシアの首都モスクワを狙った無人機の攻撃についてプーチン大統領は30日、記者の質問に答えるかたちで「ウクライナの政権はロシアを威嚇する道を選んだ」と述べ、具体的な根拠は示さずにウクライナによる攻撃だと主張しました。

その上で「彼らはわれわれを挑発している。どう対応するかはこれからだ」と述べ、何らかの対抗措置を示唆しました。

“モスクワで無人機8機が攻撃 高層住宅2棟被害” ロシア側発表

ロシア国防省は30日、首都モスクワや近郊を狙って、8機の無人機が攻撃を仕掛けてきたと発表しました。

いずれも撃墜したとしていますが、モスクワのソビャーニン市長はSNSで、2棟の建物で被害があり、現場で2人が軽いけがをして手当てを受けたと明らかにしました。

被害が出たのは、モスクワ南西部にある高層住宅で、このうち1棟の住宅の18階に住む女性は「眠っていて衝突の音は聞こえなかったが、警備員から、無人機が飛んできたとして避難を促された。外に出ると14階の窓ガラスが割れ、無人機の破片が地面に落ちていた」と話していました。
ロシアのショイグ国防相は、30日の会議で「ウクライナによるテロ攻撃だ」と主張しましたが、具体的な根拠は示していません。

また、ロシア大統領府のペスコフ報道官は記者団に、プーチン大統領が国防省などから随時、報告を受けているとしたうえで、ウクライナがロシア軍による首都キーウなどへの集中的な攻撃に対して対抗措置をとったものだとする見方を示しました。

これに対して、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は、地元メディアに対して「われわれは直接関係ない」として関与を否定しました。

ベラルーシ「連合国家加盟で核共有」カザフスタン「必要ない」

ロシアのプーチン政権は、同盟関係にある隣国ベラルーシに戦術核兵器を配備すると表明しています。

これについてベラルーシのルカシェンコ大統領は28日に公開されたロシアの国営テレビのインタビューで「ロシアとベラルーシの連合国家に加盟するだけで核兵器が手に入る。カザフスタンなどが、われわれのような緊密な関係を持つことに誰も反対しない」と述べました。

この発言に対してカザフスタン大統領府は29日、トカエフ大統領の動画を公開し「冗談だと思う。われわれはNPT=核拡散防止条約とCTBT=包括的核実験禁止条約に参加していて、その必要はない」と一蹴しました。

トカエフ大統領は24日モスクワで行われた会合でも、プーチン大統領などを前にしてロシアとベラルーシは核兵器さえも共有しようとしていると懸念を示していて、ウクライナへの侵攻を続けるロシアと距離を置く立場をとっています。

ロシア軍 異例の頻度と規模で攻撃繰り返す

ロシア軍は30日もウクライナの首都キーウに対し大規模な無人機による攻撃を仕掛けるなど、異例の頻度と規模で無人機やミサイルによる攻撃を繰り返しています。

これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は「決定が下された」と述べて本格的な反転攻勢を近く開始する考えを示したものとみられ、ウクライナ軍の動向が焦点となります。

ウクライナ空軍 ロシア軍の無人機29機を撃墜

ウクライナ空軍は30日、前日の29日夜から30日未明にかけてロシア軍が31機のイラン製の無人機で攻撃を仕掛け、このうち29機を撃墜したと発表しました。

そのほとんどが首都キーウを狙っていたとしていて、ロシア軍は連日にわたって異例の頻度と規模で無人機やミサイルによる攻撃を繰り返しています。

ゼレンスキー大統領「決定が下された」近く反転攻勢開始

これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は29日、国民に向けた動画メッセージを公開しました。

このなかで「1日に何度もロシアのテロ攻撃があった。イラン製の無人機や、ミサイルによる攻撃だ。防空部隊のおかげで少なくとも数百人の命は救われた」と述べ、無人機やミサイルの多くを撃墜したとしています。

ゼレンスキー大統領は軍の参謀本部と会議を開いたことを明かし、「砲弾の供給や部隊の訓練状況、戦術だけでなく、タイミングについても報告があった。タイミングこそが最も重要であり、いかに前進していくのか、決定が下された。すべての兵士や将校たちに感謝している」と述べました。

ウクライナは大規模な反転攻勢に向けた動きを続けてきましたが、ゼレンスキー大統領みずから領土奪還を目指した本格的な反転攻勢を近く開始する考えを示したものとみられます。

今後、ウクライナ軍がどのような動きに出るのかが焦点となります。

ロシア内務省 アメリカ共和党の上院議員を指名手配

アメリカ共和党 グラム上院議員
アメリカの共和党の重鎮、グラム上院議員は、5月26日、ウクライナの首都キーウでゼレンスキー大統領と会談しました。

このなかでゼレンスキー大統領がウクライナに対するアメリカの軍事支援について謝意を述べたのに対してグラム議員は「アメリカにとって最良の金の使い方だ」などと応じました。

その上でグラム議員は「ロシア人は死につつある」などと述べました。

この一連の発言を受けてロシアで重大事件を扱う連邦捜査委員会は28日グラム議員について「ロシア人の殺害に関する発言をした」と指摘し捜査する方針を示したのに続いてロシアの国営通信社は29日、内務省がグラム議員を指名手配したと伝えました。

グラム議員の発言をめぐってはロシア大統領府のペスコフ報道官も28日「このような議員がいるということ以上の国の恥はない」と述べ批判していました。

アメリカをはじめとした欧米側がウクライナ側に巨額の軍事支援を続けていることでロシア側に大きな損失が出ているとして神経をとがらせているものと見られます。

一方、指名手配されたことについてグラム議員はSNSに「私は、腐敗し、モラルもない政府が出す逮捕状を名誉あるバッジとして身につける」と投稿したほか「すべてのロシア兵がウクライナの領土から追放されるまで、ウクライナの自由のために共に立ち向かい続ける」としてウクライナの勝利に向けて支援を継続する姿勢を改めて示しました。

ロシア 欧州通常戦力条約から脱退 欧米へのけん制一段と強める

ロシアのプーチン政権は、NATO=北大西洋条約機構との間で通常兵器の保有上限を定めたCFE=欧州通常戦力条約から29日、脱退しました。ウクライナへの軍事支援を行う欧米へのけん制を一段と強めるねらいとみられます。

CFE=欧州通常戦力条約は、冷戦時の東西両陣営の対立を前提として戦力均衡を図る目的でヨーロッパにおける通常兵器の保有上限を定めたものです。

1990年にNATOと当時のワルシャワ条約機構との間で調印され、ロシアは1999年に批准しましたが、NATOとの対立が続く中、2007年に履行を停止しています。
これについてロシア政府は5月、CFE条約から脱退すると発表し、議会の上下両院で関連法案が可決され29日、プーチン大統領が署名し、脱退しました。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は29日、「条約は、すでに機能不全に陥っていて、直接の影響はない」とする一方で、「軍備管理や戦略的な安定面では大きな空白があり、早急な対応が必要だろう。しかし、ロシアに落ち度はない」と述べ、欧米を念頭に批判しました。

ロシアは、ことし2月にはアメリカとの核軍縮条約「新START」の履行を停止すると一方的に表明しています。

欧米側がウクライナへの軍事支援を強化する中、プーチン政権としてはCFE条約からも正式に脱退することで、欧米へのけん制を一段と強めるねらいとみられます。

キーウにミサイル攻撃 ゼレンスキー大統領がロシアを強く非難

ウクライナ空軍は29日、未明から早朝にかけて、ロシア軍が合わせて75に上る巡航ミサイルと無人機による攻撃を仕掛け、このうち67のミサイルと無人機を迎撃したと発表しました。

さらに現地時間の昼前、日本時間の29日夕方、ロシア軍が再びミサイル合わせて11発を撃ち、すべて迎撃したと発表しました。

キーウの市当局によりますと、撃墜された破片が市内の建物や道路に複数落下し、これまでに1人がけがをしたということです。

このうち、商業施設が建ち並ぶ地区では、交通量の多い交差点で落下した破片が炎上し、近くで働く男性はNHKの取材に、「すぐ近くで爆発が起きたと思った。道路にも火が燃え移っていた」と話していました。

市当局はSNSに、「夜間の攻撃からわずか6時間後だ。市民が街頭にいる日中に平和な都市を攻撃した。ロシアは民間人を殺そうとしていることを、はっきり示した」と書き込みました。

また、ウクライナのゼレンスキー大統領は、通りを歩いていた子どもたちが大きな爆発音のあと、悲鳴をあげながら走って逃げる様子を写した映像とともに、「これがウクライナの子どもたちの日常だ」とSNSに投稿し、ロシアの攻撃を強く非難しました。

ロシア軍は、28日もキーウなどに対して無人機による攻撃を行うなど、首都をねらった攻撃を繰り返しています。

ウクライナのマリャル国防次官は29日、SNSで、「ウクライナの人々にとって、キーウは単なる首都ではなく不屈の心や抵抗の象徴だ。われわれは恐れない」と強調しました。

ロシア外相 ことし3回目のアフリカ歴訪 欧米に対抗の動き

ロシアのラブロフ外相は29日、アフリカのケニアを訪問し、ルト大統領らと会談しました。ラブロフ外相は会談後、記者団に対し、ロシアが侵攻するウクライナ情勢についても意見を交わし、ロシア側の立場を説明したと述べました。また、ケニアの港にロシアが無償で提供した肥料が数日以内に到着するとして支援する姿勢をアピールしました。

一方、ウクライナ産の農産物の輸出をめぐるロシアとウクライナの合意に関連して、ロシアからの農産物などの輸出は滞っていると批判し、合意を破棄する姿勢を改めて示し、欧米などをけん制しました。

ラブロフ外相が、アフリカ各国を訪問するのは1月と2月に続き今回、ことし3回目だということで、6月1日からは南アフリカで行うBRICS=新興5か国の外相会議に出席する予定です。

さらにロシアは、ことし7月、第2の都市、サンクトペテルブルクでアフリカ諸国との首脳会議や経済フォーラムも開催する予定で、プーチン政権はアフリカとの関係を強化し、ウクライナへの軍事支援を進める欧米に対抗する動きを活発化させています。

ロシア 欧州通常戦力条約から脱退

ロシアのプーチン政権は、NATO=北大西洋条約機構との間で通常兵器の保有上限を定めたCFE=欧州通常戦力条約から29日、脱退しました。

CFE=欧州通常戦力条約は、冷戦時の東西両陣営の対立を前提として、戦力均衡を図る目的でヨーロッパにおける通常兵器の保有上限を定めたもので、1990年にNATOと当時のワルシャワ条約機構との間で調印され、ロシアは1999年に批准しましたが、NATOとの対立が続く中、2007年に履行を停止しています。