【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(29日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる29日(日本時間)の動きをお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

キーウ市当局「ミサイル攻撃相次ぐ」防空警報も

キーウ市当局は29日、市内の各地でロシア軍によるミサイル攻撃が相次いでいると発表しました。

日本時間の29日午後5時すぎ、防空警報が発令され、NHKの取材班が滞在しているキーウ市内のホテルでも「ドーン」という大きな爆発音が何度も聞こえました。

キーウ市のクリチコ市長は、自身のSNSで首都への攻撃が続いているとして市民に対してシェルターにとどまるよう呼びかけています。

ロシア「NATO加盟の断念など 和平条件は変わらず」外務省次官

ウクライナ情勢をめぐりロシア外務省のガルージン次官は、ロシア国営のタス通信が今月27日に伝えたインタビューの中で、ウクライナの「非軍事化」や「非ナチ化」が軍事作戦の目的であることに変わりがないと主張しました。

また、和平の条件としては、欧米がウクライナへの兵器の供与をやめるほか、ウクライナがNATO=北大西洋条約機構やEU=ヨーロッパ連合への加盟を断念し、ロシアが住民投票を経て併合したとするウクライナ東部と南部の支配地域をロシア領と認めることを改めて主張しています。

ウクライナ「ロシア軍の撤退が先決」大統領府長官

これについてウクライナ大統領府のイエルマク長官は27日「ロシア軍がわれわれの領土にいるかぎり、ウクライナの社会や国の指導部にロシアと話すよう強要する勢力はいない」とSNSに投稿し、ロシア軍の撤退が先決だという考えは、欧米諸国と広く共有されていると強く反発しました。

ウクライナ元国防次官「形成作戦」開始の見方示す

ウクライナの元国防次官は、NHKの取材に対し、ウクライナ軍は大規模な反転攻勢に向けてロシア側の兵器の集積所といった後方支援の拠点などを攻撃する「形成作戦」と呼ばれる準備段階の作戦をすでに始めているという見方を示しました。

ウクライナの元国防次官で防衛戦略センターのアリーナ・フロロワ副所長は今月23日、NHKのインタビューに応じました。

このなかでフロロワ副所長は、今月に入ってウクライナとの国境に近いロシア領内の鉄道の路線で爆発があったことなどに触れ「ウクライナ側は、兵器や弾薬の集積所や補給路などを攻撃し、ロシア軍の攻撃能力に打撃を与えようとしている」と述べ、ウクライナ軍は、大規模な反転攻勢に向けてロシア側の後方支援の拠点などを攻撃する「形成作戦」と呼ばれる準備段階の作戦をすでに始めているという見方を示しました。

そのうえで「期待した装備はほぼそろい、兵士の訓練も行われている。ウクライナ軍の準備はおおよそできている。反転攻勢がいつ始まってもおかしくない。ただ、その始まりは、後になってあれがそうだったと思えるような小さな動きかもしれない」と述べ、反転攻勢は、明確に分かる形で始まらない可能性もあると指摘しました。

そして反転攻勢が始まる地域についてフロロワ副所長は「いくつかの選択肢があり、戦場や補給の状況に影響されるだろう」と述べたうえで「第1の選択肢は南部での作戦で、ここを攻撃すれば、クリミアへの補給を断って孤立させることができ、ウクライナ軍にとって価値がある」としています。

ただ「南部は森林地帯が少なく、平野が広がっていて何もかも見えるので歩兵は簡単に移動できない」と述べ、進軍は容易ではないという見方も示しました。

一方、フロロワ副所長は、ゼレンスキー大統領が参加したG7広島サミットについて「サミットの前には、ウクライナの反転攻勢がうまくいかなければ、支援を見直すべきだとかほかのシナリオを考えるべきだといった声が出ていた」と指摘し、欧米側が、ウクライナへの支援を長期的にも続けると表明したことが重要だったとしています。

ウクライナ軍 バフムトでロシア軍の攻撃 著しく減少の見方示す

ウクライナのメディアは28日、東部での戦闘にあたっているウクライナ軍部隊の報道官の話として、東部ドネツク州の激戦地バフムトで、ロシア軍の攻撃が著しく減少していると伝えました。

ロシア軍による砲撃などが相次いでいるものの、部隊どうしの衝突は27日以降、1回しか起きていないということです。

キーウなどに無人機やミサイル攻撃 繰り返される

ウクライナの北部に位置する首都キーウなどでは、ロシア軍の無人機やミサイルによる集中的な攻撃が繰り返され、28日未明にも無人機による大規模な攻撃がありました。ウクライナ空軍は、飛来した54機のうち52機を迎撃したと、成果を強調しています。

ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、首都の防衛にあたった防空部隊に対して「敵の無人機やミサイルを撃墜するたびに人々の命が救われる。まさにわれわれの英雄だ」と功績をたたえました。

クリミアつなぐ橋の爆発 ウクライナ政府の関与 事実上認める

ウクライナ保安庁のマリュク長官は、ロシアとウクライナ南部のクリミアをつなぐ橋で、去年10月におきた爆発についてウクライナ政府の関与を事実上、認めました。

マリュク長官は、ウクライナのジャーナリストとのインタビューで「戦争の常識として、敵の重要な輸送ルートを遮断することはわれわれにとって必要であり、適切な措置が講じられた」と述べました。

この橋は、9年前、ロシアが一方的に併合したクリミア半島とロシア南部をつなぐもので、全長が19キロあります。ロシアにとって、戦略上、極めて重要なインフラで、ロシアによるクリミア支配の象徴ともされてきました。

去年10月の爆発では、橋の一部が崩落し、ロシア側はウクライナによる破壊工作だとして報復攻撃を行いましたが、ウクライナ側はこれまで関与を認めていませんでした。

またマリュク長官は、去年10月、ロシア海軍の黒海艦隊が無人機で攻撃されたことについても、ウクライナ保安庁とウクライナ海軍が協力して実行したと関与を認めました。

ロシア駐在の外交官などドイツ人公務員 数百人退去へ 独有力紙

ドイツの有力紙「南ドイツ新聞」が27日、ロシアに駐在する外交官や文化交流機関の職員など数百人のドイツ人の公務員が、ロシア側の要求により退去することになったと伝えました。

これについてドイツ外務省は「一方的かつ不当で、理解しがたい措置だ」と非難しています。