月面着陸失敗 ベンチャー企業「高度の認識ずれ 燃料尽き落下」

世界初の民間による月面着陸を目指し、地球からおよそ38万キロ離れた月に着陸船を送ったものの、先月、着陸に失敗した日本のベンチャー企業が会見を開き、着陸船が月面にある崖の上を通過したあと高度の認識にずれが生じ、燃料が尽きて5キロほどの高さから落下したと明らかにしました。この企業では、対策を講じたうえで来年、再び着陸に挑む予定です。

日本のベンチャー企業「ispace」は先月26日、世界初の民間による月面着陸に挑みましたが、着陸船が高度を誤って認識し、着陸に失敗しました。

26日、企業の代表が日本記者クラブで会見し、着陸船が月面の高さ3キロほどの崖の上を通過したことで高度の認識にずれが生じ、実際より低いところを降下していると認識するようになったと明らかにしました。

そのため、着陸船が月に降り立ったと認識した時点では、実際には月面から5キロほどの高さを降下していたということです。

その後も燃料の噴射を続けたものの、途中で燃料がなくなり、およそ2分後に月面に落下したとしています。

今回の件を受けて、高度を認識するシステムの改修や事前に行うシミュレーションの精度を上げるなど対策を講じたうえで来年、再び着陸に挑む予定です。

企業の代表、袴田武史CEOは「地球との距離から比べると残り5キロというのは誤差の範囲で、最終フェーズまでいけたのは非常に大きな成果だと思う。今回得た貴重な知見を次の進化につなげたい」と話していました。

今後の月探査計画は

月の開発をめぐっては、近年、国内外の複数の民間企業が探査を計画し、「民間初の月面着陸」をどの企業が達成するかの競争が激しさを増しています。

背景には、月の北極や南極などに水が存在することを示す研究論文が相次いで発表されていることがあります。

水を水素と酸素に分解することで燃料として利用できるという期待などから、月探査に関連する経済活動の市場規模は2040年までにおよそ24兆円になるという試算もあります。

日本のベンチャー企業「ispace」は、着陸船と月面を走行する探査車を新たに開発し、来年、再び着陸に挑む予定で、再来年にはアメリカの研究機関などとともに月面に荷物を運ぶサービスを計画しています。

民間企業では、ほかにもアメリカの「アストロボティック・テクノロジー」などが開発した着陸船を打ち上げる予定で、「民間初の月面着陸」をどの企業が達成するか注目されます。

国の宇宙機関も月の探査計画を打ち出していて、アメリカは再来年、宇宙飛行士を南極に降り立たせ氷の量などを探るほか、ロシアやインドもことし中に探査機を月の南極に送る計画です。

日本のJAXA=宇宙航空研究開発機構も、ことし8月以降に「SLIM」という探査機を打ち上げ、日本初の月面着陸を目指すほか、再来年には探査機を月の南極に送り、水について調査する計画です。