APEC貿易相会合始まる サプライチェーンや気候変動対応議論へ

APEC=アジア太平洋経済協力会議の貿易相会合が、25日、アメリカのデトロイトで始まりました。G7広島サミットでは、重要鉱物などのサプライチェーン=供給網の強化などで合意しましたが、中国やロシアも参加するAPECでどこまで一致した対応を打ち出せるかが焦点です。

太平洋を囲む21の国や地域が参加するAPECの貿易相会合には、日本から西村経済産業大臣と山田外務副大臣が出席しています。

会合では、G7広島サミットでも主要なテーマとなった重要鉱物や半導体などのサプライチェーン=供給網の強化や、気候変動問題への対応、それに食料安全保障の強化などについて議論が交わされる見通しです。

会合を前に、西村経済産業大臣は「世界が大きな課題に直面する中、自由で公正な貿易や経済秩序の維持などに向けてG7サミットの成果も踏まえ、日本としてしっかり主張したい」と述べました。
また、会合の冒頭でアメリカのタイ通商代表は「脆弱なサプライチェーンや悪化する気候危機などの課題はパンデミックや地政学的緊張の高まりでさらに悪化している」と述べ、問題解決の重要性を訴えました。

ただAPECには中国やロシアも参加していて、去年の閣僚級会合では共同声明を採択できないケースが相次ぎました。

両国はG7広島サミットの首脳宣言に反発を強めていて、どこまでAPECとして一致した対応を打ち出せるかが焦点です。

APECの焦点は

APEC=アジア太平洋経済協力会議は、1989年に発足した地域協力の枠組みで、日本や東南アジアの国々、アメリカや中国、ロシアなど、太平洋を囲む21の国や地域が参加しています。

今回の会合では、サプライチェーン=供給網の強化や、気候変動問題への対応や脱炭素化、食料安全保障の強化など経済分野の幅広いテーマについて議論が交わされます。

今月19日から21日まで開かれたG7広島サミットでは、重要鉱物や半導体などのサプライチェーンの強じん化や、太陽光や洋上風力などクリーンエネルギーへの移行、それに食料安全保障の強化などで「グローバル・サウス」とも呼ばれる新興国や途上国との連携を強化していくことが確認されました。

このため、APECの場でも新興国や途上国と経済分野のさまざまな課題で一致点を見いだし、広島サミットの成果を引き継ぐことができるかが注目されます。

IPEFの焦点は

またAPEC閉幕後の27日には、日本やアメリカ、それにインドなど14か国が参加するIPEF=インド太平洋経済枠組みの閣僚会合が開かれる予定です。

IPEFは経済的に影響力を拡大させる中国を念頭に、アメリカのバイデン大統領が新たな経済連携の枠組みとして提唱し、去年5月に協議の開始が発表されました。

そして去年9月には半導体などのサプライチェーンの強化や、デジタル技術を活用した貿易の円滑化、クリーンエネルギー技術の開発や脱炭素化、汚職の防止などの公平な経済という4つの分野で交渉開始が宣言されました。

このうち今回の閣僚会合では、サプライチェーンの強化で交渉が進展するかが焦点となっています。

日本としても、重要鉱物や半導体などの供給が感染症や紛争などで途絶える事態に備えるため、一定の合意を得たいとしています。

アメリカや中国と個別会談も

一連の閣僚会合に出席するためアメリカを訪れている西村経済産業大臣は、期間中、アメリカのレモンド商務長官と会談を行うほか、中国の王文涛商務相との会談も調整されています。

アメリカとは、日本が国産化を目指す先端半導体の技術開発などで共同声明を発表する方向で調整を進めているほか、中国の閣僚とも会談を行い、安定的な関係の構築につなげられるかが注目されます。