共和党デサンティス氏 来年秋の米大統領選挙に立候補を表明

来年秋のアメリカ大統領選挙に向けて野党・共和党の有力候補の1人である南部フロリダ州のデサンティス知事がツイッターで立候補を表明しました。現時点で、共和党内でトランプ前大統領の最大のライバルになるとみられていて、指名争いがいっそう熱を帯びそうです。

フロリダ州のデサンティス知事は24日、ツイッターに投稿したビデオ声明で「アメリカを先導していく勇気と、勝利する強さが必要だ。偉大なアメリカの復活を導くために立候補する」と述べ、来年秋の大統領選挙に立候補すると表明しました。また、立候補に必要な書類を連邦選挙委員会に届け出ました。

デサンティス知事は、現在2期目で44歳。リベラル派との対決姿勢を前面に打ち出す保守的な政策を進め、新型コロナへの対応では経済回復を優先させて感染対策の規制をいち早く解除したことで全米で注目されました。

デサンティス知事は世論調査では共和党内の支持率がトランプ前大統領に次いで高く、現時点で、トランプ氏の最大のライバルになるとみられています。

共和党内ではトランプ氏以外にも、ヘイリー元国連大使などがすでに立候補を表明していて、党内の指名争いがいっそう熱を帯びそうです。

ツイッターの技術的なトラブルで配信が中断

デサンティス知事の立候補表明はツイッターの音声配信機能を使って、起業家のイーロン・マスク氏との対談という形でも行われました。

ただ、ツイッターの技術的なトラブルで開始直後からおよそ20分間にわたって音声がほとんど配信されない状態が続きました。

これについてマスク氏はアクセスが殺到したことでシステムがダウンしたと説明しています。

その後、再開した音声配信でデサンティス知事は改めて立候補を表明しましたがソーシャルメディア上の音声の生配信という前例のない形での立候補表明が注目を集めていただけに、メディアは配信の中断を大きく取り上げています。

このうち有力紙、ニューヨーク・タイムズは「デサンティス知事のツイッターでの選挙活動の立ち上げは大失敗となった」などと伝えています。

また、トランプ前大統領はソーシャルメディアに「ツイッターでの選挙活動の開始は大惨事だった。彼の選挙戦全体も大惨事となるだろう」と投稿して早速、攻撃しています。

さらにバイデン大統領もツイッターに「私たちの方のリンクは機能している」として政治献金を呼びかけるリンクを投稿し、デサンティス知事を皮肉っています。

デサンティス知事とは

デサンティス知事は2018年の知事選挙で当時、大統領だったトランプ氏の全面的な支援を受けて初当選し、その政治姿勢や主張から「ミニ・トランプ」とも言われてきました。

共和党内でデサンティス氏が人気を高めた要因の1つがリベラル派との対決姿勢を前面に打ちだし、実現してきた保守的な政策です。

新型コロナ対応では感染拡大が続いていた3年前、ほかの州で感染対策の徹底が続く中、経済回復を目指して州内の規制をいち早く解除しました。

また個人の自由を重視する立場から、学校でマスク着用義務化に反対したり、飲食店などがワクチンの接種証明を求めるのを禁止したりして注目を集めました。

デサンティス知事の多くの政策に関係するのがジェンダーや人種などをめぐる保守とリベラルの間の価値観の衝突です。これは「文化戦争」とも呼ばれています。

このうち学校教育をめぐってはLGBTなど性的マイノリティーに関する話題を小学3年生までの授業で取り上げることを規制する州の法律を成立させました。「学校教育がリベラル化し過ぎている」と訴える保守層の声を受けたものでした。

こうした規制に対し州内で人気テーマパークを運営する「ウォルト・ディズニー」が反対を表明すると、これまで認めてきた税制上の優遇措置を含む特区制度を廃止する法律を成立させ、報復措置とみられる対応にも踏み切りました。

さらにジェンダーや人種問題を扱う一部の本を学校図書館から禁止することも後押ししています。

移民にも厳しい姿勢を示し、法的な手続きを経ないで入国した人々を移民に寛容なリベラル色の強い州に調整なしに送り込むことで保守派にアピールしています。

保守的な政策を進めるデサンティス知事がよく口にするのが「ウォーク(Woke)」という言葉です。

これは差別や人権といった社会への問題意識を強く持つリベラル派の人々を指す言葉で、批判的に使われます。

デサンティス知事は保守的な価値観を守るために「ウォークのイデオロギーを拒否する」と述べるなど保守とリベラルの対立を強調する政治姿勢で知られています。

デサンティス氏の支持率

調査会社「モーニング・コンサルト」が行っている世論調査によりますと、共和党内での支持率は今月21日時点でトランプ前大統領が58%となっているのに次いで、デサンティス氏は20%となっています。

デサンティス氏はことし1月初めには34%とトランプ氏に11ポイント差にまで迫っていました。

ただ、トランプ氏が3月末にニューヨーク州のマンハッタン地区の大陪審に起訴されて以降はトランプ氏が再び支持を伸ばしていて、2人の支持率の差が広がっています。

このほか共和党内ではヘイリー元国連大使などがすでに立候補を表明したほか、ペンス前副大統領も活動を活発化させていますが、いずれも支持率は1桁台と低迷が続いています。

アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズはデサンティス氏が先週、支持者に対する電話スピーチのなかで「現時点で選挙戦で戦える見込みがあるのは基本的には3人であり、それはバイデン大統領とトランプ氏、そして私だ。そしてこの中で大統領として選出される見込みがあるのはバイデン氏と私だけだ」と述べ、共和党の候補としてふさわしいのは自分だと強調したと伝えています。

デサンティス知事の立候補に賛否の声

フロリダ州マイアミのホテルでは、立候補表明のタイミングにあわせてデサンティス知事の政治献金者らによる会合が開かれました。

会合に訪れた支持者の男性は「デサンティス氏はリベラルな考え方と戦っていて、アメリカにはそれが必要です。私は共和党員として、負けることにうんざりしています。デサンティス氏は、これまでの選挙で負けたことがありません。予備選でトランプ氏を破り、本選でバイデン大統領に勝つでしょう」と話していました。

一方、このホテルの前では、立候補に反対する人々による抗議デモも行われました。

デモに参加した100人余りの人々は、デサンティス氏が進めてきた
▽性的マイノリティーに関して小学校で取り上げることを一部規制したり、
▽ジェンダーや人種問題を扱う一部の本を、学校図書館から禁止するなどの政策に反対し、「デサンティスを引きずり下ろせ」などと声を上げていました。

デモに参加した地元の女性の1人は「デサンティス氏が大統領になれば、トランプ氏よりも危険な存在になります。移民政策や公共教育をめぐって、弱い立場の人々を攻撃することにつながるのを懸念しています」と話していました。