公明 東京で自民との「協力関係解消」決定 なぜ今回の事態に?

次の衆議院選挙に向けた自民・公明両党の候補者調整で、公明党は、焦点となっている「東京28区」への擁立を断念したうえで、東京では自民党の候補者に推薦を出さない方針を決定し、自民党に伝えました。これに対し、自民党は持ち帰って検討する考えを示しました。

衆議院選挙の小選挙区の「10増10減」に伴い、選挙区の数が5つ増える東京への対応について、公明党は25日朝、常任役員会を開き、党の方針を決定しました。

それによりますと、焦点となっている「東京28区」への候補者の擁立については自民党が「受け入れられない」としていることから、断念するとしています。

そして、すでに公表している「東京29区」への現職議員の擁立に自民党の都連の一部が協力しない意向を示していることも踏まえ、東京での協力関係を解消するとしています。

具体的には、
▽「東京29区」では自民党の推薦を求めず、
▽そのほかの東京の選挙区では自民党の候補者に推薦を出さないとしていて、
▽再来年の都議会議員選挙など都内の各種の選挙でも協力せず、
▽都議会での協力関係も解消する方針です。

このあと、石井幹事長が自民党の茂木幹事長と国会内で会談し、「これまでの協議で東京における自公の信頼関係は地に落ちたと言える」と指摘したうえで、決定した方針を伝えました。

そのうえで、石井氏は今回の件は東京に限った話で、ほかの地域に波及させるつもりはなく、自公の連立政権にも影響を及ぼすつもりはないという考えを伝えました。

茂木氏は公明党の方針について持ち帰って検討したい考えを示し、来週、再び会談することになりました。

自公の選挙区調整 これまでの経緯は

次の衆議院選挙から適用される小選挙区の「10増10減」に伴い、自民・公明両党は選挙区の調整を進めています。

公明党は、国政選挙の比例代表で得票数の減少傾向が続く中、小選挙区の数が増える都市部で、積極的に新たな候補者の擁立を図っています。

具体的には、「10増」の対象となっている5つの都と県のうち、これまでに、選挙区が1つずつ増える埼玉と愛知で、比例代表選出の現職議員を選挙区で擁立する方針を発表しています。

そして、選挙区が5つ増える東京では、現職議員を新たに「東京29区」で擁立すると公表し、さらに、今月に入って、練馬区東部からなる「東京28区」でも候補者を擁立する意向を自民党に正式に伝えました。
その際、公明党は「『東京28区』への協力が得られなければ、東京での選挙協力は白紙にする可能性がある」として、自民党に受け入れを迫りました。

これに対し、自民党内では「『10増10減』で選挙区が減る影響は自民党が受けるのに、増える選挙区を公明党に譲りすぎるのはおかしい」などと反発が強まりました。

こうした状況を踏まえ、自民党は23日、公明党に対し埼玉と愛知、それに「東京29区」については、地元組織は反発しているものの前向きに調整する考えを伝える一方、「東京28区」は、東京都連が候補者をすでに決めているとして、認められないとの考えを伝えました。

ただ、東京で2人目の擁立を目指す公明党の意向は最大限尊重するとして、北区などからなる「東京12区」や江東区からなる「東京15区」などでの擁立で調整できないか打診しました。

これに対し、公明党は、持ち帰って検討する考えを示していました。

【なぜ今回の事態に 記者解説】

なぜ今回の事態に至ったのか、今後どうなるのか、政治部の佐々木森里記者が解説します。

Q.なぜこんなことに?

A.次の衆議院選挙での議席獲得に向けた思惑の違いが表面化している形です。

公明党としては比例代表の得票数が減少する中、小選挙区で勝利して全体の議席を維持したいため積極的な擁立を目指しています。一方、自民党は「10増10減」で選挙区が減る影響を受けるのは主に自民党側であり、新たな選挙区は譲れないとしています。

また、両党のパイプが細っていると指摘する声もあります。両党の20年以上にわたる連携の中では、たびたび意見が対立することもありましたが、気脈を通じたベテラン議員が、公明党の支持団体である創価学会の幹部も含めて水面下で落としどころを探って話をまとめてきました。ベテラン議員が引退し、それぞれの執行部が変わる中で関係が希薄になり、意思疎通が難しくなってきていることが原因の1つといえます。

Q.今後どうなる?連立への影響は?

A.一致点を見いだすのは難しいと言わざるを得ません。

公明党は、今回の方針は最終決定だと強調しています。公明党側は、方針は東京に限った対応で連立政権にも影響しないとしていて、双方から冷静な対応を求める声がある一方、自民党側からは、全国の選挙や政権運営への影響を懸念する声も出ています。

事態が長引けば、岸田総理大臣の解散戦略に影響を与える可能性もありそうです。

【各党などの反応】

公明 石井幹事長「党の最終的な方針」

公明党の石井幹事長は、会談のあと記者団に対し「協議の過程の中で、誠心誠意対応してきたつもりだ。公明党としては、選挙で協力しないことは東京都に限定する話であり、ほかの地域に波及させるつもりはなく、全体として連立関係に影響を及ぼすこともわれわれとしては考えていない」と述べました。

また、石井氏は「茂木幹事長からは持ち帰って検討したいという話があったが、党の最終的な方針なので、持ち帰って案を出されてもわれわれとしては方針を変えることはないと申し上げた」と述べました。

岸田首相「丁寧に対応するよう指示」

岸田総理大臣は総理大臣官邸で記者団に対し「自民・公明両党の幹事長、選挙対策委員長で必要な調整を行っている。私から自民党の茂木幹事長、森山選挙対策委員長に対して丁寧に対応するよう指示している」と述べました。その上で「岸田政権としては強固な自民・公明両党の連立の基盤に立って先送りできない重要な課題に1つ1つ対応していきたい」と述べました。

松野官房長官「岸田政権は自公連立基盤の上に成立」

松野官房長官は午後の記者会見で「岸田政権が自民・公明両党の強固な連立基盤の上に成り立っていることに変わりはなく、引き続き両党と連携しながらさまざまな政策課題に全力を尽くしていきたい」と述べました。

自民 遠藤総務会長「引き続き協議してもらいたい」

自民党の遠藤総務会長は谷垣グループの会合で「20数年、自民・公明両党はいろいろな活動をともにし、最終的にはお互い話し合った上で合意して選挙協力をしてきた。今回、話がうまくいかない状況であっても、引き続き幹事長や選挙対策委員長のもとで協議して、長年一緒になって政権を担ってきたので、しっかりと取り組んでもらいたい」と述べました。

自民 石原議員「これからも仲良くしていきたい」

品川区などからなる新たな「東京3区」から立候補を予定している自民党の石原宏高衆議院議員は、東京都内で記者団に対し「公明党とはいままで一緒に一生懸命やってきたので、これからも仲良くしていきたいし、まとまってほしい」と述べました。

自民 若宮・前万博担当相「なかなか厳しい話」

世田谷区東部からなる新たな「東京5区」から立候補を予定している自民党の若宮・前万博担当大臣は党本部で記者団に対し「なかなか厳しい話だ。公明党の推薦をもらわずに戦っている議員もいるので、影響のあるところとないところが出てくると思う。公明党との間で候補者調整ができないと、ちまたで言われているような解散・総選挙にはならないのではないか」と述べました。

自民 平沢・元復興相「準備することが大事」

葛飾区からなる新たな「東京17区」から立候補を予定し、これまで公明党からの推薦を受けていない自民党の平沢元復興大臣は東京都内で記者団に対し「どんなに厳しくてもそれにうち勝つ準備をふだんからすることが大事だ。自民・公明両党でいろいろ協力しながら仕事はしているので、特に支障はない」と述べました。

自民 井上幹事長代理「直接 話ができれば」

青梅市などからなる「東京25区」から立候補を予定している自民党の井上幹事長代理は東京都内で記者団に対し「報道でしか聞いてないが、東京都連としては直接、公明党側と話ができればと思う。最終的に両党で合意したことではないと思うので、話し合いを続け、いい結論を導いていくことが必要だ」と述べました。

自民 長島議員「私たちはまな板の上のこい」

府中市などからなる新たな「東京30区」から立候補を予定している自民党の長島昭久衆議院議員は「協議の行方を見守るしかない。私たちは、まな板の上のこいなので、与えられた条件の中で最善を尽くして戦う」と述べました。

その上で「東京は選挙区の数からも比重が高く、かつ首都でもあり、東京で起こったことが全国に波及しないと考える方が不自然な気がする」と述べました。

立民 安住国対委員長「与党がぐちゃぐちゃ」

立憲民主党の安住国会対策委員長は党の会合で「与党がぐちゃぐちゃになって、このままいくと近代の応仁の乱に入ってしまうのではないかというぐらい深刻で、やらせとは思えない。野党第一党のわが党は、結束して火の粉の中をかいくぐっていくことが非常に重要だ」と述べました。

維新 馬場代表「駆け引きが頻繁に」

日本維新の会の馬場代表は党の会合で「選挙がらみで、大きな政党間の動きがあり、駆け引きが頻繁に行われている。選挙は、人の足を引っ張ったり人の票を取りにいったりというよりも、自分自身の票をいくら積み上げられるかの戦いだ。常在戦場で頑張っていきたい」と述べました。