岸田首相 G7サミットの成果を強調 野党側は批判 衆院予算委

G7広島サミットの閉幕を受けて、衆議院予算委員会の集中審議が行われ、岸田総理大臣は、法の支配に基づく国際秩序の維持を確認するなど、ねらいどおりの成果が達成できたと強調しました。
これに対し、野党側からは核廃絶に向けた道筋が十分に示されなかったなどの批判が出されました。

24日開かれた衆議院予算委員会の集中審議では冒頭、岸田総理大臣がG7広島サミットの成果について「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持していくという強いメッセージを示し、グローバル・サウスと呼ばれる国々との関与を深め、当初のねらいどおりの成果が達成できた」と強調しました。

また、ウクライナのゼレンスキー大統領の参加をめぐり「G7と招待国の首脳にゼレンスキー大統領を加えて世界の平和と安定に関する議論を行い、力による一方的な現状変更は認めないなどの認識の一致が得られたことは歴史的意義を持つものだ」と述べました。

自民 坂井学氏

自民党の坂井学氏はサミットの成果について「多くの人が関心を持っているが、テーマが難しいこともあり、まだ成果が十分に伝わっていないのではないか。サミットで日本は何を得たのか国民にわかるように説明していただきたい」と求めました。

これに対し、岸田総理大臣は「国際社会が直面するさまざまな課題を議論し、国民の安全と繁栄、日常生活改善にもつながる成果を収めることができた。例えば食料価格の高騰は、世界中の人々の暮らしに関わる喫緊の課題で、G7と招待国が共同で声明を採択した。協力を進めていくことで、食料不安や価格高騰などが起きにくくなると期待される」と述べました。

公明 平林晃氏

公明党の平林晃氏は各国首脳らの原爆資料館の視察について「サミットでG7や招待国の首脳、ゼレンスキー大統領らが被爆の実相に触れたことは、歴史的に大きな意義があった。核兵器のない世界を築いていくうえで、どのような影響を与えると考えるか」と質問しました。

岸田総理大臣は「ロシアによる核の威嚇は断じて受け入れられず、ましてやその使用はあってはならないという立場を改めて共有できた。核兵器のない世界に向けての機運が後退していると言われる中で、今一度、機運を盛り上げる1つのきっかけになりうるのではないか」と述べました。

立民 泉代表

立憲民主党の泉代表は、少子化対策の財源について「新たに確保する3兆円のうち1兆円が医療保険の上乗せ徴収だと言われているが、社会保険料を上げると会社側が賃上げを止めかねない。現役世代の負担が上がることにもなり、当事者たちからお金を奪って渡す『プラス・マイナス・ゼロ』みたいな話になりかねない」と指摘しました。

これに対し、岸田総理大臣は「今まさに議論を行っている。増税は行わないと明らかにしたが、そのためにまずは歳出改革の取り組みを徹底し、すでにある予算を最大限活用する。実質的な負担を最大限抑制して全体像を作り上げていきたい」と述べました。

維新 馬場代表

日本維新の会の馬場代表は、台湾有事をめぐり「今回のサミットでは台湾海峡の平和と安定の重要性という文言が首脳宣言に入ったが、もし中国が武力による現状の変更というアクションを起こした場合、日本が何らかのアクションを起こせるのか」とただしました。

これに対して、岸田総理大臣は「仮定の質問に答えることは控えなければならないが、台湾海峡の平和と安定は国際社会全体の安定にとって重要で、G7サミットでも再確認した。こうした立場を中国側に首脳レベルを含めしっかり伝えることも大事であり、関係国とも連携しながら明確に発信していく努力が重要だ」と述べました。

国民 斎藤アレックス氏

国民民主党の斎藤アレックス氏は、賃上げについて「ことし実現できたような賃上げを、来年以降も20年、30年続けることが重要だ。中小企業、非正規雇用、サービス業といった賃金が上がっていないところにどのように賃上げを波及させていくのか」とただしました。

岸田総理大臣は「中小企業においては、下請け取引の適正化、労務費を含めた価格転嫁が大変重要なポイントになる。中小企業、特に地方の中小企業が賃上げの流れの中で持続可能であるように政策を進めていく」と述べました。

共産 笠井亮氏

共産党の笠井亮氏は、サミットで発表された核軍縮に関する首脳声明「広島ビジョン」について「核兵器廃絶への前向きなメッセージが期待されていたが、それを真っ向から裏切るものだと、被爆者や2世・3世から失望と怒りの声が広がっている。被爆者と被爆地を愚弄するものだ」と批判しました。

これに対し、岸田総理大臣は、「厳しい安全保障環境の中で、現実的にそれぞれの国の国民を守り、核兵器のない世界という理想にどう結びつけていくかという考え方を示したものだ。機運を盛り上げるためのきっかけになるもので、これから具体的にどういった取り組みを進めるかが大事だ」と述べました。

れいわ 櫛渕共同代表

れいわ新選組の櫛渕共同代表は経済政策をめぐり「30年間、成長せず賃金が下がり続ける流れを反転させるためには、増税ではなく、消費税やインボイスの廃止、最低でも減税や保険料の減免などが必要だ」と訴えました。

これに対し、岸田総理大臣は「30年間デフレで苦しんだ日本経済を振り返りながら、コロナ禍を乗り越えた先の経済再生を考えている。成長と分配の好循環を実現するために賃上げを最重点項目として取り組まなければならない」と述べました。

ジャニーズ事務所 元所属タレントが性被害を訴えた問題

また、ジャニーズ事務所の元所属タレントが性被害を訴えた問題をめぐり、立憲民主党が児童虐待防止法の改正案を国会に提出する考えを示していることについて、岸田総理大臣は「性犯罪・性暴力は子どもの心身に有害な影響を及ぼし、人権を著しく侵害する極めて悪質な行為で、断じて許されない。立憲民主党の考えについては、今後、政党間で議論を深めてほしい」と述べました。