国境付近の戦闘 プーチン大統領 友好国と結束し欧米側に対抗

ロシア西部のウクライナとの国境付近で起きた戦闘について、プーチン政権は、ウクライナの工作員によるテロ事件だと主張し、事態を深刻に受け止めているとみられます。その一方でプーチン大統領は友好国と結束して、欧米側に対抗する姿勢を一段と強めています。

ロシア西部のウクライナと国境を接するベルゴロド州の知事は22日、州内に侵入したウクライナの工作員との間で戦闘が起きたと発表したのに続き、24日も「無人機による攻撃が夜、何度も起きた」とSNSに投稿し、避難中の女性など2人が死亡したとしています。

ロシア国防省は「70人以上のテロリストを殺害した」と発表するなど、プーチン政権はウクライナの工作員が侵入したテロ事件だと主張し、事態を深刻に受け止めているとみられます。

ウクライナ側が関与を否定する一方で、ロシアによる軍事侵攻に反対しウクライナ側に立つロシア人などの義勇兵を名乗る「自由ロシア軍」と「ロシア義勇軍」の2つの組織が関与を主張しています。

プーチン大統領は24日、モスクワで開催している安全保障関係の国際会議で行ったビデオ演説で「多くの国が、外部によって組織されたクーデターを経験している。他国の主権や国益を無視し、自国の優位性を維持しようとする国々の願望と直接関係している」と述べ、欧米などを念頭に批判しました。

そのうえで「われわれはアジア、アフリカ、ラテンアメリカとの友好的で信頼できる関係を大切にしていく」と述べ、途上国や新興国と連携強化を図る姿勢を強調しました。

プーチン大統領は、この後、同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領とも会談する予定で、ウクライナへの侵攻から24日で1年3か月となる中、友好国と結束し、欧米側に対抗する姿勢を一段と強めています。

ロシア国防相「ウクライナ武装勢力の行動に迅速かつ厳しく対応」

ロシアのショイグ国防相は24日、国防省で行った会議で「ウクライナの民族主義者の部隊がロシア領に侵入した。民族主義者をウクライナ領まで押し戻し、完全に排除するまで攻撃し、70人以上のテロリストを殺害した」と述べました。

そのうえで「ウクライナの武装勢力によるこうした行動に対して、迅速かつ厳しく対応していく」と強調しました。

また、ロシア大統領府のペスコフ報道官は「ロシア軍の部隊や国境警備隊は自分たちの仕事に取り組んでいる」と述べ、軍などが適切に対応しているとして、懸念の払しょくにつとめています。

ロシア人などの義勇兵2組織とは

ロシア西部のベルゴロド州に侵入し、戦闘を行っていると主張しているのは、ロシア人などの義勇兵を名乗る「自由ロシア軍」と「ロシア義勇軍」です。

組織の規模など詳しいことは分かっていませんが、欧米やロシアのメディアによりますと、「自由ロシア軍」は、ロシアによる軍事侵攻が始まった直後にあたる去年3月結成され、ロシア人やベラルーシ人などで構成されているということです。

団体のウェブサイトでは、「ウクライナ軍と協力し、ウクライナの指揮下で活動している」と記され、軍事侵攻でウクライナ軍と連携しているとしています。

また、「ウクライナ全土からロシア軍が完全に撤退したあと、クレムリンに行って殺人者と略奪者を解体することを計画している」としていて、プーチン政権の打倒を目標に掲げています。

ロシアの最高裁判所は「自由ロシア軍」についてことし3月、テロ組織に指定しています。

「自由ロシア軍」をめぐっては去年4月、ロシアの大手金融機関「ガスプロムバンク」の副社長だった男性が、ロシア軍の侵攻に抗議してウクライナのために戦うと表明したことが話題となりましたが、独立系メディアなどは、この男性は「自由ロシア軍」に加わったと伝えています。

一方、「ロシア義勇軍」は去年8月に極右のロシア人たちによって設立され、軍事侵攻では、ウクライナ側に立って戦闘を続けているということです。

ことし3月には、ウクライナと国境を接する西部のブリャンスク州でロシア側はウクライナから武装集団が侵入したと発表していて、この時「ロシア義勇軍」がSNSで関与を主張しています。

そして、今月22日以降もSNS上で「戦闘員が再び祖国を訪れるだろう。戦闘の炎が燃え上がる」などと投稿したうえで、ロシア領内に侵入するとした様子のほか、ロシア側から捕獲したとする軍用車両などの映像を公開しています。