政府 少子化対策強化 新たに年間3兆円程度の財源確保を検討

少子化対策を今後3年で集中的に強化するため政府は、医療・介護など社会保障費の歳出改革と、社会保険料への上乗せなどで、新たに年間3兆円程度の財源確保を検討しています。そして、2030年代初めに予算の倍増を実現したい考えで、与党などと調整を進めています。

少子化対策を今後3年で集中的に強化するための財源について、岸田総理大臣は、消費税などの増税ではなく、社会全体で支え合う枠組みを設ける意向を示しています。

政府は財源の議論を本格化させていて、医療・介護といった社会保障費の歳出改革の徹底や社会保険料への上乗せなどで、新たに年間3兆円程度を確保することを検討しています。

このうち、社会保険料への上乗せは、現役世代と75歳以上の後期高齢者も含む幅広い世代に加え、企業も保険料を負担している医療保険の仕組みを使い、新たな支援金として負担してもらう案を軸に調整を進めています。

上乗せは2026年度以降を想定し、それまでの財源不足は、当面、国債の発行で埋め合わせることが検討されています。

一方、確保する3兆円程度のうち、最大となるおよそ1兆2000億円は児童手当の拡充に充てる方針で、所得制限を撤廃し、対象年齢を高校卒業まで延長することに加え、いわゆる多子加算として、現在は3歳から小学生までの第3子以降に支給されている月額1万5000円を、3万円に倍増できないか協議が行われています。

そして政府は、こうした今後3年の集中的な取り組みを経たうえで、2030年代初めには、岸田総理大臣が掲げる子ども・子育て予算の倍増を目指す考えで、倍増のベースは、現在、5兆円近くあるこども家庭庁の予算とする方向です。

また、少子化対策に使っていることを明確にするため、子ども・子育て予算を一元的に管理する特別会計を創設する方針で、与党などと調整を進めています。

“増税は行わず社会保険料への上乗せ”とした背景は

なぜ、岸田総理大臣は増税は行わない考えを示したのか。

少子化対策の財源について、専門家や経済界の中には、社会全体で幅広く負担すべきだとして増税の必要性を指摘する声もありました。

ただ、政府・与党内では、すでに防衛力強化のために増税方針を示していることもあり、さらなる税負担を国民に求めるのは難しいなどと否定的な意見が大勢を占めている状況で、岸田総理大臣としては、こうした意見への配慮もあったものとみられます。

一方、個人と企業が労使折半で拠出するケースが多い社会保険料への上乗せで、財源の一部を確保する案について、政府関係者の1人は「少子化が進めば、社会保険制度や企業活動も維持が難しくなるわけで、理解が得られやすいのではないか」と話しています。

しかし、社会保険料の仕組みの活用に対して、経済界や労働界からは、せっかくの賃上げの機運に水を差すなどと、異論も出ていて、最終案のとりまとめに向けて、議論が続けられる見通しです。

立民 岡田幹事長「財源は税で確保すべき」

立憲民主党の岡田幹事長は、記者会見で「少子化対策の財源は、社会保険料への上乗せではなく税で確保すべきだ。医療や介護に必要なお金は、当然、高齢者の人数が増えれば増えていくわけで、社会保障の分野での歳出改革をしていくのはありえないことだ」と述べました。