【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(23日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる23日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ゼレンスキー大統領 ドネツク州の激戦地を訪問

ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、動画を公開し、東部ドネツク州の激戦地の一つ、ブフレダルからマリインカにかけての前線を訪れたと明らかにしました。

この中で、ゼレンスキー大統領は兵士たちを前に、「最も重要なのは勝利だ。これまでに亡くなった市民や兵士たちのことを考えるとすばらしい勝利とはならない。それでもウクライナの独立のために勝利は重要で欠かせない」と訴えました。

ロシア首相 “ロシアと中国の関係は特別だ”

23日から中国を訪問しているロシアのミシュスチン首相は、上海で行われた中ロのビジネスフォーラムに出席し、演説しました。

この中でミシュスチン首相は、「ロシアと中国の関係は特別だ。人々は善隣、相互支援、友好の絆で結ばれている」と述べたうえで、「ことし、プーチン大統領と習主席が掲げた年間の貿易額2000億ドルという目標を達成すると確信している」と強調しました。

そして、欧米側が続けている制裁について、「われわれを敵視する人たちが夢見たようなことは何ひとつ実現していない。ロシアには、あらゆるビジネスチャンスがあり、中国のパートナーの参加を歓迎する」と述べ、中国と経済的な連携を一層深めることで制裁の影響を最小限に抑えたいという考えを示しました。

またロシアの国営テレビは、ミシュスチン首相が中国の大手石油化学会社「シノペック」の研究所を訪問し、最新の技術について説明を受ける様子などを繰り返して放送しています。

国営通信社によりますと、ミシュスチン首相は、「石油化学やそれに関する開発は経済的な自立と安全保障を強化するのに役立つ」と述べたということです。

ロシアとしては欧米側の制裁が続く中、ロシア産原油の輸入量を増やすなどしてロシア経済を下支えしているともいわれる中国側との連携を強調し、欧米側をけん制するねらいがあるとみられます。

ロシア連邦捜査委 “工作員侵入をテロ事件として捜査開始”

ロシアのプーチン政権は、ウクライナと国境を接する西部の州にウクライナ側から工作員が侵入して戦闘が起きたと発表し、ロシアで重大事件を扱う連邦捜査委員会はテロ事件として捜査を開始しました。

ロシア西部のベルゴロド州の州知事は22日、ウクライナの工作員が州内に侵入し、銃撃や無人機による攻撃を受け、戦闘が起きていると発表しました。

州知事は、女性1人が死亡したほか、複数のけが人がいるとしていて、ロシアで重大事件を扱う連邦捜査委員会は23日、テロ事件として捜査を開始しました。

一方、ウクライナ側に立って戦うロシア人などの義勇兵を名乗る2つの組織はSNSで、ロシア領内に入りベルゴロド州で戦闘を行っていると主張し、軍用車両などの映像を公開しています。

英国防省 “攻撃はロシアの反体制組織によるもの”

イギリス国防省は23日、「ベルゴロド州の国境近くの少なくとも3か所で、ロシア治安部隊とパルチザン組織が衝突した可能性が高い。ロシア側はいくつかの村で住民を避難させ、追加の部隊を配備した」と指摘し、攻撃はプーチン政権に反発するロシアの反体制組織によるものだという見方を示しました。

そのうえで「ロシアは国境地域で直接攻撃を受け、深刻な安全上の脅威にさらされている」と指摘するとともに、プーチン政権は「戦争の犠牲者」として、今回の事案を軍事侵攻の正当化に利用するとみられると分析しています。

ロシア首相が上海到着 習主席らと会談へ

ロシア政府は23日午前、SNSでミシュスチン首相が上海に到着し、出迎えられる様子の動画を公開しました。

国営通信社によりますと、ミシュスチン首相が中国を公式訪問するのは今回が初めてで、習近平国家主席や李強首相と会談する予定です。

ウクライナ国防次官「バフムト郊外で敵と支配権争っている」

ロシアが侵攻するウクライナでは東部ドネツク州の激戦地バフムトをめぐり、ロシア側は21日、完全掌握を発表していますが、ウクライナのマリャル国防次官は22日、SNSで「バフムト郊外の北と南で敵と支配権を争っている」としてロシア側が街の大半を掌握する一方、郊外では反撃を続けていると強調しました。

ウクライナ情報機関トップ “大規模反転攻勢 まもなく始まる”

ウクライナ国防省情報総局のブダノフ局長が今月19日、日本のメディアとしては初めてNHKの単独インタビューに応じました。

この中でブダノフ局長は、準備を進めているロシア側に対する大規模な反転攻勢について、「多くの市民がいまもロシアの占領下にあり、もう時間を無駄にすることはできない。最小限の兵器などはすでにそろっている。まもなく始まるということだけは言える」と述べ、反転攻勢を近く始めることができるという認識を示しました。

ただ、ブダノフ局長は、「私たちの領土からロシアを追い出さなければならない。この目標のためにあらゆる力と手段を使うのだ。作戦をうまく継続していくためには兵器も弾薬もかなりの備蓄が必要だ」と述べ、反転攻勢ではロシア側の防御などを受けて激しい戦闘が長期にわたる可能性を示唆しました。

そのうえで、ゼレンスキー大統領がG7広島サミットに対面で参加したことに関連して、「もっと兵器が必要だ。戦闘機がいる。国際社会がウクライナを本当に支援する準備ができていることを望む」と述べ、反転攻勢をどう進めていくかを検討するうえでも、サミットをきっかけに欧米側による兵器の供与がどこまで進むのか注視する考えを示しました。

ブダノフ局長 「ロシアの攻撃の90%を阻止」

ウクライナ国防省情報総局のブダノフ局長は、ウクライナに対するロシア側の攻撃について、「編成中の部隊や兵たんなどを攻撃することで、われわれの反転攻勢に向けた準備を妨げようとしている」と分析しましたが、「いまや軍事目標に対する攻撃の90%が阻止されている」と述べ防空システムなどで迎撃できていると強調しました。

また「ロシア軍では、たとえば潜水艦などの技師として働いていた人が機関銃を渡されて『襲撃してこい』と言われるというのが現実だ。非常に多くのロシア軍兵士が複合的な要素から士気を欠いている。ウクライナで何をしているのか。誰も理解していない」と述べました。

ロシアの民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏とロシア国防省などとの確執が表面化していると指摘されることについてブダノフ局長は、「ワグネルは、権力と影響力が失われつつあることを恐れた。プリゴジン氏にとっては自身の権力や命、会社の生き残りをかけた戦いだ」と述べ、ロシア側の政治的な混乱は続くという見通しを示しました。

一方、ロシアと経済だけでなく軍事的な連携も深める中国について、ブダノフ局長は、「中国はロシアに兵器などを供給していない」と述べ、軍事支援については否定しました。

ただ、「多くの電子機器は供給している」と述べ、中国からロシアに輸出された電子部品などがミサイルの開発に使われているという見方を示しました。

ロシア側報道「侵入したウクライナ側の工作員39人殺害」

ウクライナと国境を接するロシア西部のベルゴロド州の州知事は22日、ウクライナの工作員が州内に侵入したとして、テロ対策を行うための態勢を敷くと発表しました。

また、砲撃を受けて州内の8人がけがをしたとしています。
これについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は22日に、「国防省やFSB=連邦保安庁などがウクライナからの侵入を撃退し、排除しようとしている」と述べ、プーチン大統領に報告したと明らかにしました。

ロシアのメディアは、ロシア側の当局がウクライナ側の工作員39人を殺害したと伝えています。

これについて、ウクライナ大統領府のポドリャク顧問はSNSで、「関心を持って注視しているがウクライナは関係がない」と関与を否定し、侵入はプーチン政権に反対するロシア人の地下組織によるものだとしています。

ゼレンスキー大領統のサミット参加 ウクライナでの声は

ウクライナのゼレンスキー大統領がG7広島サミットに対面で参加したことについて、ウクライナではさらなる軍事支援や復興に向けた支援に期待する声が聞かれました。

このうち、キーウ近郊のイルピン市の職員セルヒー・スクリプニクさんは、大統領の対面でのG7サミット参加について、「とてもすばらしいことだ。われわれが一刻も早く、敵を打ち負かすためのさらなる兵器の支援につながると思う」と話していました。

一方、イルピンは軍事侵攻の当初、ロシア軍の攻撃で3000棟近くの住宅が破壊されたり損傷を受けたりして、がれきの撤去や被害を受けた建物の解体が復興に向けた課題となっています。

このためスクリプニクさんは、「イルピンだけでなく、ウクライナ全体がロシア軍の侵攻によって大きな被害を受けている。サミットを受けて、各国がウクライナの復興を支援してくれると思う」と話し、復興に向けて国際社会の支援がいっそう進むことに期待を寄せていました。

ウクライナへの復興支援をめぐっては、日本政府ががれきの撤去などのために建設用の重機7台を供与していて、この重機は近くイルピンで使われることになっています。

G7サミット後 ロシアと中国の関係者の会談相次ぐ

プーチン大統領の側近、パトルシェフ安全保障会議書記は22日、モスクワを訪れた、中国共産党で警察や司法部門を統括する中央政法委員会のトップ、陳文清書記と会談し、テロ対策などの協力について意見を交わしたということです。
またロシア首相府は、23日からミシュスチン首相が中国を訪問し、習近平国家主席や李強首相と会談するとしています。

先のG7広島サミットでは、欧米側はウクライナへのさらなる軍事支援を表明していて、これに対し、ロシアは中国との連携を強化し、対抗する姿勢を強めています。

ロシア連邦捜査委員会 ICC主任検察官ら本人不在のまま起訴

ロシアで重大事件を扱う連邦捜査委員会は21日、プーチン大統領などに戦争犯罪の疑いで逮捕状を出したのはロシアの法律では犯罪にあたるとして、ICC=国際刑事裁判所のカーン主任検察官とアイタラ裁判官を本人不在のまま起訴したと発表しました。

ICCはことし3月、ロシアがウクライナの占領地域から子どもたちをロシア側に移送したことをめぐり、国際法上の戦争犯罪の疑いでプーチン大統領など2人に逮捕状を出していました。これに対抗してロシアの連邦捜査委員会は「違法な手続きだ」として、ICCのカーン主任検察官や赤根智子裁判官などあわせて4人に対して、刑事手続きを開始したと発表していました。

また連邦捜査委員会は、カーン主任検察官とアイタラ裁判官については指名手配リストに掲載されていると発表し、ほかの2人については捜査が継続されているとしています。

ロシアとしては、国際法上の戦争犯罪について捜査を指揮するカーン主任検察官らを起訴することで、対抗措置を強めるねらいがあるとみられます。