岸田首相 サミット閉幕会見 ウクライナとの連帯など成果を強調

G7広島サミットの閉幕にあたり議長を務めた岸田総理大臣は平和公園で記者会見を行いました。ウクライナのゼレンスキー大統領の対面での参加を得て、連帯を示せたことは意義深いなどと成果を強調しました。そして、今後も法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けた取り組みを主導していく決意を示しました。

岸田総理大臣は今回のサミットについて、「G7首脳と胸襟を開いて議論し『核兵器のない世界』に向けて取り組んでいく決意を改めて共有し、G7として初めてとなる核軍縮に焦点を当てた『広島ビジョン』を発出できた。被爆地を訪れ、被爆者の声を聞き、被爆の実相や平和を願う人々の想いに直接触れたG7首脳が、このような声明を出すことに歴史的な意義を感じる」と述べました。

そのうえで「夢想と理想は違う。理想には手が届く。われわれの子供たち、孫たち、子孫たちが、核兵器のない地球に暮らす理想に向かって、ここ広島から、きょうから、1人1人が広島の市民として、一歩一歩、現実的な歩みを進めていこう」と呼びかけましたそして、「力による現状変更のための核兵器による威嚇、ましてやその使用はあってはならない。核兵器を使わない、核兵器で脅さない。人類の生存に関わるこの根源的な命題を、今こそ問わなければならない」と述べました。

ウクライナ情勢をめぐっては「主権や領土一体性の尊重といった、先人が築き上げ、長年にわたり擁護してきた原則が挑戦を受ける真っ只中でサミットは開催された。ゼレンスキー大統領を招き、G7とウクライナの揺るぎない連帯を示すとともにG7として、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性を確認し、これを守り抜く決意を新たにするとのメッセージを、世界に向けて力強く示せたことは意義深い」と述べました。

その上で「G7として、1日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和をもたらすべく努力していく」と述べ、ロシアへの制裁や制裁回避を防ぐ取り組みを強化することで一致したと明らかにしました。
一方で、岸田総理大臣は、「世界は今、ウクライナ侵略に加えて気候変動やパンデミックなど、複合的な危機に直面し『グローバル・サウス』や脆弱な立場の人々が甚大な影響を受けている。こうした国や人の声に耳を傾け喫緊の幅広い課題に協力する姿勢を示さないことには、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くとの訴えも空虚なものとなりかねない」と述べました。

その上で「こうした国々とG7を橋渡しすべく対応しなければならないさまざまな課題について真剣な議論を行った」と今回のサミットの意義を説明しました。

また、喫緊の課題である食料危機に、G7と招待国が連帯して取り組む行動声明をまとめたほか、気候変動問題について各国の事情に応じた多様な道筋で脱炭素社会を目指す認識を共有できたという認識を示しました。

さらに新型コロナが収束する中で、次の感染症危機に備えるための連帯も確認したとした上で、国際保健分野で日本として、官民合わせて75億ドル規模の貢献を行う意向を明らかにしました。

その上で「世界の諸課題の解決に向けた貢献は、常に、G7の中核的な使命であり続けてきた。今こそ、G7としてさまざまな課題に直面する国際的なパートナーの声を聞き連携しつつ、課題にきめ細かく対応していく決意だ」と述べました。

一方、世界経済をめぐっては、ロシアのウクライナ侵攻が長期化する中、インフレ圧力などの問題が深刻だとして、サミットの議論を踏まえ、国際社会全体の経済的強じん性と経済安全保障の強化の取り組みを推進していく考えを示しました。

さらに、中国への対応をめぐっては「率直な対話を行い懸念を直接伝える重要性やグローバルな課題などについて協働する必要性で一致するとともに、国際社会で責任ある一員として行動すべきことや、対話を通じて建設的かつ安定的な関係を構築する用意があることなどについて認識を共有した」と述べました。

最後に「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜き、議長年の務めをしっかりと果たしていく。『グルーバル・サウス』を含めた国際的なパートナーと連携する機会も続く。ここ広島での充実した議論を引き継ぎ、さまざまな課題をともに解決するべく、これらの国々との連携強化を主導していく」と決意を示しました。

一方、会見で、岸田総理大臣は、予定されていた質問に答えて、会場を離れようとした際、記者から「核軍縮ビジョンについて教えてください。総理、逃げるんですか」と呼び止められました。

このため岸田総理大臣は演台に戻り、核保有国に、透明性の向上を促すことなどを明記した核廃絶への日本の行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」の内容を詳しく説明しました。

その上で「G7の歴史上初めて独立文書としてまとめられた成果文書の中で『ヒロシマ・アクション・プラン』を高く評価し、その考え方に基づいてG7で努力していくということを確認した。こうした考え方に基づいて努力を続けていきたい」と述べました。

「メッセージをより力強く国際社会に発信できた」

岸田総理大臣は、記者会見で「ロシアによるウクライナ侵略に対し、国民の先頭に立って立ち向かうゼレンスキー大統領にも議論に参加してもらい、メッセージをより力強く国際社会に発信することができたことは非常に有意義だった」と述べました。

また招待国の首脳らを交えたセッションについて、「各国からきたんのない意見が出され、実質的な意見交換が行われた。予定の時間を大幅に越え、希望する発言者すべてから発言をいただき議論を深めた」と振り返りました。

さらに「ロシアによる核の威嚇が行われる中、ゼレンスキー大統領を迎え、議論を行ったことは力による現状変更のための核兵器による威嚇、ましてやその使用はあってはならないというメッセージを緊迫感を持って発信することになった」と述べました。

「ロシア制裁 第三国を通じたう回、回避を防ぐことが重要」

岸田総理大臣は、記者会見で「ロシアに対する制裁をいっそう効果的にするためには、第三国を通じた制裁のう回、回避を防ぐことが重要だ。G7を超えた多くの国に協力を求めていく必要があり、今回、第三国への働きかけを継続していくことを確認した」と述べました。

その上で、ロシアに協力的な中国企業などへの対応について「日本としても、どのような措置をとることが最も効果的なのかという観点に立って対応を考えていかなければならない」と述べました。

「北朝鮮の完全な非核化を目指していく」

岸田総理大臣は、記者会見で、サミットでの討議について「私から北朝鮮が前例のない頻度と新たな態様で弾道ミサイルの発射などを行っており、深刻に懸念する旨を述べ、G7として北朝鮮によるたび重なる弾道ミサイル発射を強く非難した。G7を含む国際社会と協力しながら関連する国連安保理決議の完全な履行を進め、北朝鮮の完全な非核化を目指していく」と述べました。

「いま解散・総選挙については考えていない」

岸田総理大臣は記者会見で、野党が内閣不信任決議案を提出した場合には、衆議院解散の大義になると考えるかと問われ「いま重要な政策課題に結果を出すことに最優先で取り組んでいる。そうした取り組みを続けているところであり、いま解散・総選挙については考えていない。この考えは従来と変わっていない」と述べました。