熊野筆やデニムなど G7サミット取材拠点で広島の特産品をPR

G7広島サミットの取材拠点となっている広島市の「国際メディアセンター」には、国内外の報道関係者に広島の特産品をPRするコーナーが設けられています。

広島市中区の県立総合体育館に開設された「国際メディアセンター」では、連日、国内外の報道関係者が取材活動を繰り広げています。

外出もままならない報道関係者らに食事を提供するコーナーでは、広島県産の野菜や肉などを使った料理が提供されています。

また、広島の伝統工芸品や技術を紹介するフロアでは、いずれも全国一の産地で品質の高さでも知られる熊野町の熊野筆や福山市のデニム生地を使った製品、それに広島県が全国有数の産地である、にしきごいが泳ぐ水槽が設置されるなど、およそ20の製品が展示されています。

また、県内で造られている日本酒やビールなども並べられ、サミット初日の19日に、各国首脳に提供されたワインなども展示されています。

日替わりで日本食をPRするコーナーで、広島県の港で水揚げされた「たい」を和食の料理人がお造りにする実演が行われ、海外の報道機関の関係者が興味深そうに写真を撮っていました。

展示を担当した広島サミット県民会議事務局の佐々野和樹さんは「伝統工芸品の展示を見た海外のメディアから作り方を尋ねられるなど、反響が大きい。サミットをきっかけに広島のよさが伝わるとうれしい」と話していました。

「熊野筆」 繊細な書き味や肌触りで高く評価

熊野筆は、全国一の産地である広島県西部の熊野町で作られる筆です。

現在はおよそ70の事業者が、書道や絵画、それに化粧用の筆などを作っています。

近年は、書道用の筆の需要が落ち込む中、化粧筆の生産に力を入れていて、2011年にはサッカー女子の日本代表「なでしこジャパン」のメンバーに国民栄誉賞の記念品として贈られたことで注目を浴びました。

熊野町で筆づくりが始まったのはおよそ180年前の江戸時代の終わりごろで、農地が少なかったこの地域で農閑期に収入を得るため、奈良や和歌山から筆や墨を仕入れて販売し、現地で筆づくりを学んで帰った人たちが作り方を広めたのがきっかけです。

その後、広島藩が工芸を推奨したことから、一大産地に成長したということです。

筆に使われる動物の毛は、シカやウマ、ヤギなどおよそ20種類に上ります。

職人が目や指先の感覚を頼りに、筆の用途に応じて毛の種類や量を考えてバランスよく組み合わせます。

繊細な書き味や肌触りは国内外で高く評価されています。

「福山デニム」 バリエーション豊かな生地を生産

広島県福山市は、市内の企業で国内のデニム生地の生産量の8割以上を占めるデニム生地の街です。

江戸時代に綿の栽培が始まったことから綿織物の産地として発展し、1960年代以降にはデニム生地の生産が主要産業として成長しました。

デニムの生地は縦糸が青く染めた糸、横糸は白い糸で織り、青く染めた糸は中心をあえて染めずに白く残すことで時間の経過とともにデニム特有の色落ちが生まれます。

糸の太さや素材、染める色などを変えることで手触りや質感が異なるさまざまな生地を生み出します。

染めや織りなどデニム生地を作る工程の専門技術を持った職人がこの地域に多く集まっていることが多彩なデニム生地の生産を可能にしています。

取り引き先のニーズに合ったバリエーション豊かな生地を作れることが福山のデニム産業の特徴です。

ただ、こうした強みは必ずしも広く知られていないことが課題となっています。

G7広島サミットでは各国の代表団や報道関係者に配る記念品に福山のデニムで作られたバッグが選ばれていて、世界で知名度が高まることが期待されています。

「広島の日本酒」 約40の酒蔵 個性的な味わいや香り

広島県内にはおよそ40に上る日本酒の酒蔵があり、各地で個性的な味わいや香りを持つ日本酒が造られています。

なかでも、多くの酒蔵が軒を並べる東広島市の「西条酒蔵通り」は新酒ができたことを告げる「蔵開き」をはじめ、さまざまな催しが行われ、観光地としても人気があります。

官民一体でサミット開催を支援

「広島サミット県民会議」は、広島県や広島市、広島県商工会議所連合会などでつくる官民一体の組織で、去年7月に設置されて以降、広島でのサミット開催を支援する活動を続けてきました。

会長は湯崎知事、副会長は広島市の松井市長と、商工会議所連合会の池田会頭が務め、およそ70人が事務局の職員として業務にあたってきました。

県民会議は、5つの基本方針として「開催支援」「おもてなし」「平和の発信」「広島の魅力発信」「ポストサミットを見据えた若者の参画」を掲げています。

このうち、「開催支援」では、各国の政府や警備、報道など多くの関係者に対する宿泊先の割りふりや大量の弁当の配給などといった会議の運営に関わる事務の対応にあたってきました。

「若者の参画」では、地球規模の課題について若者が話し合う「G7広島サミットジュニア会議」を開催し、その成果文書は岸田総理大臣に手渡されました。

県民会議が独自に定めたG7広島サミットのロゴマークは、平和の象徴のハトと、県内23の市と町をイメージした折り紙を配置したデザインで、広島市立基町高校の創造表現コースの5人の生徒が制作しました。