G7広島サミット 核軍縮焦点 単独声明「広島ビジョン」まとめる

G7広島サミットの初日の討議について、岸田総理大臣は、核軍縮に関する声明をまとめたことを明らかにし、核軍縮・不拡散に向けた大きな推進力を得たと強調しました。ロシアによる核の威嚇を非難するとともに、中国の核戦力の増強への懸念を示し、核保有国に透明性の向上を求めることを明記しています。

G7広島サミットの初日の一連の日程を終えた岸田総理大臣は、19日夜、記者団の取材に応じました。

この中で19日の討議について「議長として世界経済、ウクライナ、インド太平洋、核軍縮・不拡散を含む外交安全保障などについて議論を主導し、G7の揺るぎない結束を確認するとともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くということにおいて、一致することができた」と述べました。

また、初めてG7首脳らでそろって原爆資料館を訪問したことについて「ともに被爆の実相に触れ、粛然と胸に刻む時を共有した。核兵器のない世界への決意を世界に示す観点からも歴史的なことだった」と振り返りました。

そして討議の結果、首脳宣言とは別に、核軍縮に焦点をあてた単独の声明「広島ビジョン」をまとめたことを明らかにしました。

声明には、ロシアによる核の威嚇を非難するとともに、中国の核戦力の増強への懸念を示し、核保有国に透明性の向上を求めることを明記しています。

そして、岸田総理大臣は「G7首脳の決意や具体的な合意、今後の優先事項や方向性を力強く示す歴史的意義がある」と述べ、核軍縮・不拡散に向けた大きな推進力を得たと強調しました。

一方、討議では中国をめぐっても意見を交わしたとした上で「中国にはわれわれ共通の懸念を伝え、国際社会の責任ある一員としての行動を求めつつ、グローバルな課題や共通の関心分野については協同し、対話を通じて建設的かつ安定的な関係を構築することの重要性を強調し各国からも同様の認識が示された」と述べました。

また、台湾情勢について、「台湾海峡の平和と安定の重要性と両岸問題の平和的解決を促すことで一致した」と述べました。

「広島ビジョン」核拡散防止条約の体制堅持など明記

サミットで、G7各国の首脳らは19日夜、夕食をとりながら、核軍縮・不拡散などを含む外交・安全保障をテーマにしたセッションに臨み、首脳宣言とは別に、核軍縮に焦点をあてた単独の声明「広島ビジョン」を発表しました。

「広島ビジョン」では、冒頭でG7首脳らは、原爆投下の結果として広島と長崎の人々が経験した、かつてない破滅と、極めて甚大で非人道的な苦難を想起させる広島に集い、「核兵器のない世界」の実現に向けた決意を再確認するとしています。

そして、原爆投下以降、核兵器が使用されていないことの重要性を強調した上で、ウクライナ侵攻を続けるロシアによる無責任な核の威嚇、ましてや、いかなる使用も危険で受け入れられないと非難しています。

また、中国による透明性や有意義な対話を欠いた核戦力の増強への懸念を示すとともに、透明性を確保していくことが重要だと指摘し、核戦力の客観的データを公表していない核保有国にデータの公表を求めています。

さらに、北朝鮮の核・ミサイル開発については、国連安保理の決議に従い「完全で検証可能かつ不可逆的な廃棄」という目標への決意を改めて表明するとしています。

そして、世界全体で核兵器を減らし続けていかなければならず、NPT=核拡散防止条約は国際的な核不拡散体制の礎石であり、堅持されなければならないとした上で、岸田総理大臣が表明した核廃絶に向けた日本の行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」を歓迎すべき貢献だとしています。

さらに、FMCT=兵器用核物質生産禁止条約を求める国連総会の決議採択から30年目にあたるとして、政治的関心を再び集めることを求めるとしています。

このほか、CTBT=包括的核実験禁止条約の早期発効もまた喫緊の課題だと指摘します。

そして「われわれが望む世界の実現に向け、道はいかに狭かろうとも世界的な取り組みが必要だ」と強調し、世界各国のリーダーや若者に広島・長崎への訪問を呼びかけています。