4月 消費者物価指数 前年同月比3.4%上昇 3か月ぶり上昇率拡大

家庭で消費するモノやサービスの値動きをみる先月の消費者物価指数は、天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が、去年の同じ月より3.4%上昇しました。
食料品などの値上がりが主な要因で、上昇率は3か月ぶりに拡大しました。

総務省によりますと、先月の消費者物価指数は、生鮮食品を除いた指数が2020年の平均を100として去年4月の101.4から104.8に上昇し、上昇率は3.4%となりました。

3月の上昇率の3.1%と比べると0.3ポイント上がり、上昇率が拡大したのは、ことし1月以来、3か月ぶりです。

食料品などの値上がりが主な要因で「生鮮食品を除く食料」は9.0%上昇し、1976年5月以来、46年11か月ぶりの水準となりました。

具体的には
▽「卵」が33.7%
▽外食の「ハンバーガー」が18.2%
▽「炭酸飲料」が16.9%
▽「チョコレート」が15.0%
▽「からあげ」が12.7%
▽「あんパン」が10.2%上昇しました。

このほか
▽「洗濯用洗剤」が19.8%
▽「ルームエアコン」が18.8%上がったほか
旅行需要の回復に伴い
▽「宿泊料」は8.1%上昇しました。

一方、政府による負担軽減策でエネルギー価格の上昇が抑えられ
▽「電気代」はマイナス9.3%となったほか
▽「都市ガス代」は5.0%の上昇となりましたが、上昇幅は3月の半分に縮小しています。

また、生鮮食品とエネルギーを除いた指数は去年の同じ月より4.1%上昇していて、第2次オイルショックの影響が続いていた1981年9月以来、41年7か月ぶりの水準となっています。

総務省は「原材料価格や物流コストの上昇などを背景に食料品の値上がりが続いている。外食や宿泊などのサービスも値上がりしていて、今後の動向を注視したい」と話しています。

「菓子類」は去年同月比11.0%上昇

先月の消費者物価指数は、食料品などの値上がりで上昇率が拡大していて、中でも「菓子類」は去年の同じ月より11.0%上昇しました。

このうち、和菓子の関連では
▽「まんじゅう」が19.2%
▽「だいふく餅」が18.5%
▽「ようかん」が7.3%上昇しました。

総務省によりますと、小豆や糖類などの原材料価格やエネルギー価格の上昇が主な要因だということです。

また、消費者物価指数は食料などの「財」と「サービス」の価格の平均的な変動を調査したものですが、このうち「サービス」は、去年の同じ月より1.7%上昇しました。

これは、消費税率引き上げの影響を除くと、1995年3月以来、28年1か月ぶりの水準です。

「サービス」のうち、公衆浴場の入浴料や理髪料、美容室のヘアカラー代やエステ料金などを含む「理美容サービス」は、2.5%上昇しました。

民間のシンクタンク「ニッセイ基礎研究所」の斎藤太郎経済調査部長は「サービス価格は賃金との連動性が高い。現時点ではサービス価格の上昇は外食が主な要因となっているが、今後は賃上げに伴う人件費の増加を価格転嫁する動きが一段と広がることが予想され、サービス価格の上昇ペースは非常に速いものとなる可能性がある」と指摘しています。

老舗和菓子店でも一部の商品を値上げ

あんこの原料となる小豆や砂糖の価格が上がっているとして、都内の老舗和菓子店でも今月から一部の商品を値上げしました。

東京 港区にある大正元年創業の老舗和菓子店では、今月1日から主力商品の最中を250円から270円にするなど、3つの商品を10%ほど値上げしました。

値上げの理由は、あんこの原料となる小豆と砂糖の仕入れ価格が上がっていることです。

店によりますと、小豆と砂糖の今月の仕入れ価格は、去年の同じ月よりおよそ10%高くなっています。

また、小豆を炊く際に使用する都市ガスなどの光熱費も上がっているほか、商品を入れる箱や紙袋の費用も、おととしと比べるとおよそ30%上がっています。

この和菓子店では、原材料価格の上昇などを受けて去年3月にはおよそ30の全商品を値上げしていましたが、営業を続けるために再度の値上げを余儀なくされたということです。

店では、仕入れ先からトラックなどによる輸送の回数を減らすことでコストを抑えようと、1回当たりの注文数を増やすなどの工夫を行っています。

「新生堂」の渡辺仁司社長は「これまでの価格では難しい状況になってきたので、苦渋の決断で値上げをすることにしました。さまざまなコストが上がる状況がいつまで続くのか、先行きが見えないという不安はありますが、サービスの質は維持できるよう努力していきたい」と話していました。

人手不足を要因とした値上げの動きも

企業の間では人手が足りないという声が多く聞かれ、人件費の上昇などを要因とした値上げの動きも出ています。

首都圏で50余りの美容室を運営する会社では、先月1日からカットやカラーなどの料金の値上げを4年ぶりに行い、一律で10%引き上げました。

このうち、横浜市の店舗では値上げの金額やその理由について周知を行っています。

運営会社によりますと、値上げの要因には電気代などの光熱費がコロナ禍前と比較しておよそ1.5倍に上がっていることと、人件費の上昇があります。

この会社では先月、すべての従業員を対象に賃上げを行いました。

50人ほどの正社員は基本給を引き上げる「ベースアップ」で、一律5000円の賃上げを行ったほか、アルバイトなどの有期契約のスタッフおよそ400人については、時給を最大で100円引き上げました。

この会社では、客が自分で髪を乾かすセルフブローを導入しているほか、会計はセルフレジで客に行ってもらうことで必要最低限の人数で店の運営を行うなどして、できるだけ人件費を抑えているといいます。

その一方で、コロナ禍からの経済活動の再開で美容室の利用客は増えていて、先月の利用客数は前の年の同じ月と比べて7%余り増加したということです。

このため、運営する美容室の多くは人手が足りない状況となっていて、回復する需要に対応するためにも新たに従業員を採用することを計画しています。

ただ、人手を確保するためには時給の引き上げなども検討しなければいけないと考えていて、今後、賃上げをした場合には、物価などの状況に応じて美容室の利用料金を再び値上げする可能性もあるといいます。

美容室を運営する会社「C&P」の上原薫さんは「お客様をお待たせすることなく利用していただきたいので、人材の確保の面を考えて賃上げに踏み切りました。生産性をしっかり上げながら乗り切っていきたい」と話していました。

株価最高値更新と消費者物価指数の上昇率拡大 専門家は

日経平均株価がいわゆる「バブル景気」の時期以来の最高値を更新し、一方で先月、4月の消費者物価指数の上昇率が拡大したことについて、大和総研の熊谷亮丸副理事長に聞きました。

Q.日経平均株価の上昇が続き、一方で物価上昇率が再び拡大しています。こうした動きをどう見ていますか。

A.日本は、新型コロナからの経済の正常化が各国に比べて遅れていた分だけいま回復の動きが目立っている。また、春闘で賃金が上昇し、消費などが活性化するというような、経済の好循環に対する期待が市場で高まっている。物価については引き続き高い伸びになっていて、賃金を上回る物価の伸びが続いている状況だ。

Q.今後の株価や物価の動きをどう見ますか。

A.株価については、長めの時間軸で見ると、海外経済が心配な状況だ。アメリカで金融システムへの不安があり、ロシアのウクライナ侵攻もまだ続いている状況で、資源価格などもさらに上がる可能性がある。当面、株価はどちらかというと上値を試すと見ているが、中長期で見ると海外経済の下振れに警戒する必要がある。また、物価は資源価格の高騰が一服してきたこともあり、日銀が考えてるようにおそらく物価の上昇率は2%より小さくなるのではないか。

Q.株価が上昇しても物価高が続けば景気がよくなったと実感しにくい。私たちの生活にはどのような影響があるのか。

A.いま物価は上がっているが、賃金の上昇がそれに追いついておらず、国民の生活が苦しくなっている状況だ。国民の生活実感がよくなるような経済の好循環が生まれるかどうか、向こう半年から1年ぐらいで正念場を迎える。

Q.日本経済の今後のポイントは。

A.まずは賃金の上昇が続くかどうかだ。今は賃金の上昇が物価の上昇に追いついていないため、国民の生活実感が厳しくなっている。日本企業がリスキリングなどを積極的に行って、労働生産性を高め持続的に賃金を上げることができるかどうかがポイントとなる。
もう1つは海外経済。これが下振れすると、日本の成長率はマイナスに陥る可能性もある。アメリカの金融システムの問題や、中国で高騰する不動産が下落しないかといった問題など、もっぱら地雷は海外経済のところに埋まってると思う。