友梨さん 私はずっと待っています

顔の前で両手でピースをする女の子。
大阪府熊取町の吉川友梨さんです。

20年前、下校途中に行方がわからなくなり、警察が誘拐事件として捜査をしていますが、今も見つかっていません。

この写真で右側に写っているのが友梨さんです。今回、左側に写っている友人がNHKのインタビューに応じ、無事を信じて待ち続ける今の思いを語りました。

「なんとかして生きていることを教えてください」

友人は、友梨さんが行方不明になる直前まで一緒に下校していました。

(大阪放送局 記者 堀内新 佐藤崇大)

吉川友梨さん事件とは

事件が起きたのは20年前の2003年5月20日午後3時ごろ。

大阪府熊取町で小学4年生だった吉川友梨さん(当時9歳)が、下校途中に突然、行方不明になりました。

最後に目撃されたのは、一緒に下校してた友人と別れて数分後、自宅から400メートルほどの場所でした。
大阪府警は、何者かに連れ去られたとみて、誘拐事件として捜査。

当時、友梨さんは、白色のブラウスに紺色のスカートの小学校の制服を着ていて、ハムスターのキャラクターがかかれた黄色のリュックサックを背負っていました。

現場付近に止まっていた白い車に、男と友梨さんとみられる女の子が一緒に乗っているのが目撃されています。
このほかにも付近で目撃された不審な車両として、黒色のセダン、白色のクラウン、白色のワンボックスなどの情報が寄せられています。

これまでにのべ10万6000人の捜査員を動員して捜査を続けていますが、解決には至っていません。

ふだんのように下校していたのに…

今回、取材に応じたのは、現在は、東京で会社員として働くみさとさん(29)です。

事件を風化させたくないと、事件から20年になるのを前に、初めてテレビの取材に応じました。

みさとさんが友梨さんと仲良くなったきっかけは、事件のおよそ1年前に友梨さんが通う学校に転校して同じクラスになったことでした。

一緒に遊ぶことも多く、当日もふだんのように下校していました。

友梨さんが自宅の方向に向かって帰って行くのを見送ったのを最後に、行方がわからなくなりました。

「夕方になって、お母さんに電話があって友梨さんが帰宅していないことを知りました。その辺にいるのではないかと思っていましたが、夜になって大人たちの様子を見てただ事じゃないことに気がつきました。状況がつかめなくてどうしたらいいのかわかりませんでした」
左:みさとさん 右:友梨さん
みさとさんの手元には3年生の秋に撮影された地元のだんじり祭りの写真があります。

みさとさんと友梨さんがはっぴを着て笑顔で写っていて、写真を見るたびに当時の様子を思い出しています。

2人はお互いの家を行き来するなどしていました。

みさとさんは、友梨さんが自宅でピアノを弾いている姿が印象的だったといいます。

「一緒に遊ぶときは、友梨さんが弾くピアノやエレクトーンをそばで聞いていました。とても上手かったですし、学校では見せない一面をみた気がしてその姿はいまもよく覚えています」

みんなで無事を願った成人式

友梨さんが見つからないまま迎えた9年前の成人式。

新成人全員が友梨さんの無事を願って合唱しました。

友梨さんが行方不明になった当時から小学校で歌われていた歌で、みさとさんは曲を聞いたとたん、友人の助けになれないことや一緒に祝うことができない現実に涙が止まらなくなったといいます。
その後も事件の報道をみたり、行方がわからなくなった日が近づいたりするたびに、友梨さんのことを思い出しますが、記憶が薄れつつあることに、焦りを感じています。

「覚えていることがあれば、何でも話そうと思っていましたが、あの日のことは本当に日常の一部だったためあまり覚えておらず、本当に悔しく感じています。私が何も伝えなければ、忘れられてしまいそうで怖いです」

「私はずっと待っています」

あの頃のことを忘れたくない。

今月5日、みさとさんは一緒に下校していた3人で現場の通学路を訪れました。

友梨さんと一緒に遊びながら帰宅した当時の記憶がよみがえります。

みさとさんは友梨さんの無事を祈って、帰りを待ち続けています。
「やっぱりさみしいです。どんな大人になっているのだろうと考えてしまいます。友梨には、なんとかして生きていることを教えてくださいと伝えたいです。私はずっと待っています」

些細なことでも情報提供を

大阪府警は、事件が起きた日と同じ火曜日の5月16日、事件が起きたのとほぼ同じ時間帯の午後3時ごろに現場近くで情報提供を呼びかけました。

これまでの20年間に府警に寄せられた情報は5300件に上っています。

未解決となっていた事件の中には、外部からの情報がきっかけで解決に結びついたケースもあり、大阪府警は情報提供の重要性を訴えています。

大阪府警 捜査1課
「1日でも早く解決するため少しでも多くの方から情報提供のご協力を頂きたいと考えています。一つの情報によって捜査は大きく進展することもあります。事件に関して思い出したり、何か心当たりがあれば些細なことでも、不確かなことでも結構ですので、捜査本部にご連絡をお願いします」

情報は泉佐野警察署の捜査本部、072-464-1234で受け付けています。
メールアドレスは、yuri@police.pref.osaka.jpです。