立民 財務相の不信任決議案 衆院に提出

防衛費増額の財源確保に向け「防衛力強化資金」を創設するなどとした法案をめぐり、立憲民主党は「問題がある欠陥法案と言わざるを得ず、鈴木財務大臣は強引に成立させようとしている」として、16日の衆議院財務金融委員会での採決を阻止するため、財務大臣の不信任決議案を衆議院に提出しました。

政府・与党が今の国会の重要法案の1つと位置づける防衛費増額の財源確保に向け「防衛力強化資金」を創設するなどとした法案は、先月、衆議院本会議で審議入りし、16日の財務金融委員会で採決が行われる予定でした。

これに先立って、立憲民主党は、16日の委員会での採決を阻止するため、鈴木財務大臣の不信任決議案を衆議院に提出しました。

決議案では、防衛費増額が東日本大震災の復興財源にも関わっていることも踏まえ「日本の安全保障の土台となるべき法案であるにもかかわらず、数多くの問題がある欠陥法案と言わざるを得ず、鈴木財務大臣は強引に成立させようとしている」と指摘しています。

鈴木財務大臣の不信任決議案が提出されたことから、16日の委員会は開かれないことになりました。

安住国会対策委員長は、記者団に対し「わが国の財政状況の『身の丈』を超えるような防衛費の増額に対して、福祉や困った人に渡すべきお金なども全部かき集めて財源を確保することは容認できない。廃案とすべき法案で、あらゆる手段を講じて採決を延ばしていく」と述べました。

衆議院財務金融委員会をめぐっては、立憲民主党と共産党が議事運営が強引すぎるとして塚田委員長の解任決議案を提出しましたが、先週、衆議院本会議で否決されています。

立民 “法案は増税が前提” 反対の姿勢

防衛費増額の財源確保に向けて、政府は、歳出改革や決算剰余金など、税金以外の収入を活用するとしていて、この収入を複数年度にわたって活用できるようにするため、一般会計に新たに「防衛力強化資金」を創設することが法案の柱です。

このほか、財源を確保するため、法案とは別に、政府は法人税とたばこ税を増税するとしています。

また、東日本大震災からの復興予算に充てる「復興特別所得税」は、税率を1%引き下げたうえで課税期間を延長します。

そして、所得税の納税額に1%の新たな付加税を課す方針です。

これについて、立憲民主党は「『復興特別所得税』の転用にあたり、国民との約束違反のそしりを免れない」と批判しています。

さらに、法案についても、歳出改革による財源の捻出も担保されていないうえ、決算剰余金の算出根拠も妥当性が説明できておらず、財源確保とは名ばかりで持続可能性にも欠け、問題があると指摘しています。

そして、法案は増税が前提になっているとして反対の姿勢です。

立民 岡田幹事長「いいかげんな法案 責任は重い」

立憲民主党の岡田幹事長は、記者会見で「5年間で43兆円の防衛費という非常に大きな話を、極めて説明不十分なまま進めようとしていて、議論を尽くさないといけない。いいかげんな法案を出してきた財務大臣の責任は重い」と述べました。

維新 国民「不信任には値しない」決議案に反対の方針で一致

立憲民主党が、鈴木財務大臣に対する不信任決議案を衆議院に提出したことを受けて、日本維新の会と国民民主党の国会対策委員長らが会談し、対応を協議しました。

会談では「法案には反対だが、財務大臣は不信任には値しない」として決議案に反対する方針で一致しました。

このあと、日本維新の会と国民民主党の国会対策委員長らは、自民・公明両党の国会対策委員長と会談し、決議案に反対することを伝えました。

維新 遠藤国対委員長「意味がわからない」

日本維新の会の遠藤国会対策委員長は、記者団に対し「意味がわからない。国民にプラスになる法案にするための野党的なふるまいが必要で、今までのやり方と同じであれば、全く効果が変わらない。少しでも国民に納得してもらえる国会運営を目指していくのが令和の時代にふさわしいやり方だ」と述べました。

国民 玉木代表 “少し古い国会のあり方ではないか”

国民民主党の玉木代表は、記者会見で「審議を遅らせる観点での国会の日程闘争は、少し古い国会のあり方ではないか。今の状況で打てる手が限られているとは理解しているが、国民の理解と共感を得られるかを冷静に分析する時代になっている」と述べました。

不信任決議案 18日本会議で採決へ

自民党の御法川国会対策委員長代理と、立憲民主党の笠国会対策筆頭副委員長が国会内で会談し、鈴木財務大臣に対する不信任決議案について、18日午後に開かれる衆議院本会議で採決を行うことを確認しました。

決議案は、自民・公明両党などの反対多数で否決される見通しです。

鈴木財務相 “審議が遅れることは残念”

鈴木財務大臣は、立憲民主党からみずからの不信任決議案が提出されたことについて、財務省内で記者団の取材に応じ「法案の審議にあたっては、私なりに誠実に、真摯(しんし)に答弁をしてきたつもりだ。日本を取り巻く厳しく、複雑な安全保障環境のもとで、防衛力の抜本的な強化は必要なことであり、私の不信任決議案の提出によって審議が遅れることは残念に思う。国会の運びに従って、しっかりと職務を遂行していきたい」と述べました。

松野官房長官 “法案について丁寧な説明に努める”

松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で「本議案への対応は国会が決めるものだと考えている。政府としては、法案の趣旨と内容について理解いただけるよう、引き続き丁寧な説明に努めつつ、速やかな成立を目指していきたい」と述べました。

自民 高木国対委員長 “大変遺憾 粛々と否決”

自民党の高木国会対策委員長は、記者団に対し「本日の委員会での採決は立憲民主党を含む合意で与野党が円満の中、決められたものであり、唐突に不信任決議案が出されたことは大変遺憾だ。次回の本会議で粛々と不信任決議案を否決し、速やかな採決を目指したい」と述べました。

自民 越智隆雄氏 “不信任決議案は言語道断”

衆議院財務金融委員会で与党側の筆頭理事を務める自民党の越智隆雄氏は、記者団に対し「立憲民主党も、きょう法案の採決を行うことに賛成して委員会がセットされていたのにもかかわらず、不信任決議案が出されたことに驚がくし、言語道断だ。これまで1か月にわたり丁寧に審議してきたつもりであり、法案を衆議院を通過させて参議院に送ることに全力を注いでいきたい」と述べました。

自民 世耕参院幹事長「非常に理解しがたい“日程闘争”」

自民党の世耕参議院幹事長は、記者会見で「非常に理解しがたい状況で、日程闘争としか言えず、財務大臣は不信任にあたる理由は全くない。野党各党も、そういう思いで不信任決議案の提出に賛同してないのではないか。国会もそろそろ日程闘争のような古いスタイルではなく、しっかり議論してタイミングが来たら採決をする姿勢をとることが重要だ」と述べました。

自民 梶山幹事長代行 “不信任決議案は粛々と否決したい”

自民党の梶山幹事長代行は、記者会見で「鈴木財務大臣は法案について国会で丁寧かつ誠実に説明し、職責を果たしている。不信任決議案は与党として粛々と否決したい」と述べました。