大谷翔平 9号スリーランもサイクルヒットならず 投げては5勝目

大リーグ、エンジェルスの大谷翔平選手が、オリオールズ戦に投打の二刀流で先発出場し、あとツーベースが出ればサイクルヒットと打ちまくり、投げては7回5失点と苦しみながらも5勝目をあげました。

大谷選手は15日、相手の本拠地ボルティモアで行われたオリオールズ戦に先発ピッチャー兼3番・指名打者で出場しました。

ボルティモアは「野球の神様」と言われるベーブ・ルースの生誕地で、中5日でマウンドに上がった大谷選手は2回、変化球が甘く入って、7番バッターにツーランホームランを打たれました。

続く3回にもツーラン、5回にはソロホームランと、大リーグでの自己ワーストに並ぶ3本のホームランを打たれて7回5失点とピッチングは苦しみました。
5回 スリーベースヒットを打つ大谷選手
一方、バッターとしては、第1打席でフォアボールのあと、3回の第2打席でライト前にヒットを打って得点につなげ、4回、味方が4対4に追いついて、なお1アウト一塁二塁のチャンスで迎えた第3打席は、初球のカーブをとらえ、あと少しで場外ホームランという勝ち越しの9号スリーランを打ちました。

さらに5回の第4打席で右中間を破るスリーベースヒットを打ち、あとツーベースが出れば、2019年6月以来4年ぶりのサイクルヒットでしたが、7回の第5打席はセカンドゴロ、9回、2アウト一塁で回った第6打席はレフト前ヒットで、ツーベースとはならず、惜しくも快挙達成はなりませんでした。

大谷選手は先月27日にも投打の二刀流で出場した試合で、ホームランだけを残してサイクルヒットに王手をかけていて、達成すれば先発投手では大リーグ史上初でしたが、2回目のチャンスも逃しました。

それでも今シーズン初めての1試合ヒット4本をマークし、5打数4安打3打点、ファボール1つで打率は3割3厘まで上がりました。

エンジェルスは9対5で打ち勝って、大谷選手が勝ち投手となり、今シーズンの成績は5勝1敗となりました。

球数は98球、打たれたヒットは4本で、そのうち3本がホームランでした。

フォアボールは2つ、三振は5つ奪い、防御率は3.23となりました。

先発投手の1試合5出塁は59年ぶり

この試合、大谷選手は6打席で5回出塁しましたが、球団によりますと先発ピッチャーが1試合に5回出塁するのはヤンキースのストットルマイヤーさんが1964年9月に記録して以来、大リーグで59年ぶりだということです。

当時はまだアメリカンリーグにも指名打者制がなく、この試合に9番・ピッチャーで先発出場したストットルマイヤーさんは、投げては9回をヒット2本に抑えて完封勝利をあげ、打っては5打数5安打の活躍で1試合に5回出塁しました。

投球の軸「スイーパー」対応され始める

大谷選手は去年8月から先月まで79イニング連続でホームランを打たれていませんでしたが、この試合ではホームラン3本を打たれ、ここ4試合の登板で合わせて8本のホームランを許しました。

この日の2本を含め、打たれた8本のうち5本は昨シーズンから投球の軸にしてきた「スイーパー」と呼ばれる横に大きく曲がるスライダーで、相手バッターにとって脅威となっていたボールが、ここに来て対応され始めています。

「スイーパー」とは変化球のスライダーの1種で、特に横方向に大きく曲がるものを指します。

エンジェルスのワイズ投手コーチは去年、NHKの取材に「翔平のスライダーはホームベースの幅の43センチよりも大きく曲がる。ほうきで掃くように曲がるという意味で、われわれは『スイープ』と呼んでいる」と話していましたが、大リーグの公式記録でも今シーズンから正式に「スイーパー」が採用され、縦方向に落ちることもあるスライダーとは別の球種として分類されるようになりました。

大谷選手は今シーズン、この試合の前まで投球全体の約半分、47%をこのスイーパーが占めていて、曲がり幅や球速を調整して数種類を投げ分けています。

WBC=ワールド・ベースボール・クラシックの決勝でアメリカのトラウト選手から空振り三振を奪って優勝を決めたボールもこのスイーパーでした。

開幕当初はこのスイーパーを中心とした組み立てで相手打線を寄せつけず、開幕から5試合を終えた時点での防御率は驚異の0.64、ヒットを打たれる確率を表す被打率は大リーグトップの0割9分2厘をマークしていました。

しかし、4勝目をあげた先月27日のアスレティックス戦でホームラン2本を打たれると、この日まで4試合連続でホームランを打たれて4試合で17失点し、打たれた8本のホームランのうち5本がスイーパーでした。

大谷選手はスイーパーについて先月「データでまだ出ていない、『こういうスイーパーが打てないんじゃないかな』というものは持っているので、そういう仮定のもとで投げている」と話していましたが、14日の試合でもオリオールズ打線は甘く入ったスイーパーを迷いなく振りぬいてホームランにしていて、相手バッターをきりきり舞いさせていたボールがここに来て対応され始めています。

試合後、スイーパーが打たれ始めたことを聞かれた大谷選手は「気付いた点は何個かあり、いろいろと勉強になった。そこを修正しながら、ほかのところも変えていければ、十分にまた抑えられるのではないかと思う」と話しました。

実際、この日も投げた98球のうちカットボールをもっとも多い27球投げ、スイーパーを26球、ストレートを25球と、スイーパーの割合を減らして3球種をほぼ同じ割合で投げ、変化の兆しは見せていました。

160キロを超えるストレートはもちろん、すべての球種の質が高い大谷選手が、次回の登板でどんな変化を見せてくるのか、球種の選択にも注目です。

スリーランの飛距離は138.9m 特大の1打

大谷選手の9号スリーランは打球速度が184.4キロ、飛距離は今シーズン最も長い138.9メートルで、オリオールズの本拠地球場のライトスタンド後方にある鉄製の柵に当たる特大の1打でした。

大谷選手がピッチャーで登板している試合でホームランを打ったのは今シーズン初めてです。

大谷選手はこの試合でピッチャーとして3回までにホームラン2本を打たれて4点を失っていて、みずから打った勝ち越し打にも笑顔はなく、厳しい表情でダイヤモンドを1周していました。

サイクルヒット達成に王手

大谷選手3回の第2打席にヒット、4回の第3打席にスリーランホームラン、5回の第4打席にスリーベースヒットを打ってサイクルヒット達成に王手をかけました。

記録達成がかかった7回の第5打席は、1アウト一塁二塁の場面でセカンドゴロに倒れました。

投げては7回5失点も5勝目の権利持ち降板

大谷選手、投げては3本のホームランを打たれましたが、9対5とリードした7回まで投げ5勝目の権利を持ってマウンドを降りました。

大谷 “サイクルヒットは頭にはあった”

4年ぶりの快挙達成を惜しくも逃した大谷選手は、試合後のグラウンドでのインタビューで、サイクルヒットまであとツーベースだけとなってからの打席について聞かれると「頭にはありました。9回、最後の打席はなんとかボールにコンタクトして一塁二塁になればいいかなと思っていた」と話しました。

5失点と苦しみながらも7回まで投げて5勝目をあげたピッチングについては「バッテリーを組んだウォラック選手が4回のいいところで同点ホームランを打ってくれて、流れが相手に傾きそうなところをたぐり寄せてくれた。その流れに乗って7回を投げられたのでそこがよかったところかなと思います」とチームメートに感謝していました。