地震で倒壊する鳥居が相次ぐ 法に直接規定なく安全性は?

今月5日の地震で震度6強の揺れを観測した石川県珠洲市では、少なくとも7つの神社で鳥居が倒壊したことが分かりました。鳥居の安全性については、建築基準法に直接的な規定がなく専門家は全国一律の基準の必要性を指摘しています。

一連の地震で最大震度6強を観測した石川県珠洲市では、神社の鳥居が倒壊する被害が相次ぎ、NHKの取材で、須須神社や羽黒神社など少なくとも7つの神社で倒壊が確認されたことが分かりました。

いずれのケースでもけがをした人はいません。

このうち、珠洲市三崎町にある須須神社では、石でできた高さおよそ9メートルの鳥居が倒壊しました。

神社によりますと、この鳥居がつくられたのは50年前で、今月5日の揺れのあとに確認したところ、柱が根元付近から倒壊し、バラバラに壊れていたということです。

けがをした人はいませんでした。

権禰宜の多田千鶴さんは、「まさか、倒壊するとは思ってもいませんでした。安全が第一にあってこそ、穏やかな気持ちで祈ることができると思います」と話していました。
国土交通省によりますと、鳥居の安全性については建築基準法に直接的な規定がなく、耐震性を含め、安全性をどう確保するかは自治体に委ねられているということです。
石川県では、高さが15メートルを超える鳥居については建築基準法上の「工作物」にあたるとして建築確認による安全性の確認が義務づけられていますが、今回倒壊した7か所の鳥居はいずれも15メートル以下で、建築確認の対象ではありませんでした。

石材店の社長「倒れない鳥居をつくるのは簡単ではない」

これまでにおよそ20の鳥居をつくってきたという石川県小松市の石材店の社長、松上浩幸さんは、倒れない鳥居をつくるのは簡単ではないと話します。

松上さんは、「鳥居は、上のほうに重心があり、高いところほど地震の揺れが大きくなるので特に高いものは倒れないようにするのは本当に難しい。地震の際はどうしても危険になってしまいます」と話しています。

そのうえで、「つくる方もそれぞれで安全性は考えていますが、一律の基準が設けられ、みんながそれに沿ってつくるのが望ましいと思います」と話していました。

専門家「鳥居も全国一律の基準設けること検討するべき」

建築基準法上の「工作物」の中には、建築確認を義務づける基準が明確に定められているものもあり、たとえば▽広告塔や記念塔は高さが4メートルを超えるもの、▽煙突は高さが6メートルを超えるもの、▽鉄柱や木の柱は高さが15メートルを超えるものは、建築確認を受ける必要があります。

国土交通省によりますと、鳥居については具体的な記載がないことから鉄柱や木の柱と同じ15メートル、または、広告塔や記念塔と同じ4メートルを適用している自治体が多いということです。
文化財の防災に詳しい立命館大学の大窪健之教授は、「鳥居は不特定多数の人が訪れる場所にあり、倒壊すれば人に被害を及ぼす可能性もある。また、人の命を守るという観点だけでなく、大切な文化財を保護することも重要だ」と述べたうえで、「今回の地震をきっかけに国は、鳥居についても安全性を確保するための全国一律の基準を設けることを検討するべきだ。高さ4メートル以下の鳥居は比較的少ないので、広告塔などと同様に位置づければ、最低限の安全性は確認できる」と指摘しています。