ウクライナの反転攻勢とは 占領続くメリトポリの市長に聞く

ウクライナは、ロシア軍に対し大規模な反転攻勢に打って出る構えを見せています。その反撃の軸になると見られる都市が、南部ザポリージャ州の主要都市メリトポリです。

なぜこの都市が重要なのか?
そして、反転攻勢はどのようなものになるのか?

今もロシア軍の占領が続くメリトポリのイワン・フェドロフ市長に話を聞きました。

(聞き手:国際部・野原直路、松本弦)

【メリトポリの戦略的な重要性は?】

Q.メリトポリという都市の戦略的な重要性は何でしょうか?

A.ロシア軍は、ザポリージャ州と、その隣のヘルソン州に配置した部隊への補給拠点や、行政の中心としてメリトポリを活用していて、それがロシアにとってもこの都市を重要なものにしています。

また、メリトポリは、ロシアが一方的に併合した南部クリミアなどと、2本の幹線道路でつながっています。

メリトポリは、クリミアへの入り口なのです。

ウクライナにとって解放すべきもっとも重要な都市の1つだと言えます。

【ロシア軍の動きは?】

Q.現地のロシア軍はどのような動きをしていますか?

A.ロシア軍はザポリージャ州からは撤退していません。

それどころか、新たな兵力を次から次へと送ろうとしています。

この中には、正規の軍の兵士だけでなく、民間軍事会社「ワグネル」の戦闘員もいて、州内の前線に配置されたロシア兵の数は、いまや数万人にのぼっています。

兵士を集め続けているのです。

【ロシア軍は防衛に力を入れている?】

Q.ザポリージャ州ではロシア軍が防衛に力を入れているとされていますが反転攻勢への影響をどう見ていますか?

A.ロシア軍には、防衛線を築くだけの準備期間と、その機会がありました。

防衛線は長大です。

ザポリージャ州の前線から、(南方に位置する)メリトポリまでの間だけで、3重以上もの防衛線があり、ウクライナが防衛線を突破するのは容易なことではありません。

突破に向けては、より多くの軍事支援を受ける必要があります。

【ロシア軍や協力者を狙った爆発の背景は?】

Q.メリトポリでは、ロシア軍やその協力者などを狙って、たびたび爆発が起きていると伝えられています。

こうした攻撃の背景は何でしょうか?

A.メリトポリにおける市民の(パルチザン組織による)抵抗運動は非常に活発です。

現地の抵抗運動は、ウクライナの特殊部隊と緊密に連携をとっています。

毎日のように、住民や抵抗運動の参加者とやりとりをしていて、それは私たちの主な仕事の1つです。

こうしたことが、活発な運動につながっているのです。

【ウクライナの反転攻勢とは?】

Q.ウクライナの反転攻勢はどのようなものになるでしょうか?去年行われた、ハルキウ州やヘルソン州での奪還作戦との違いは?

A.これまでの奪還作戦との大きな違いは、ロシア側に準備する時間があったということです。

1年以上、ロシアは私たちの反転攻勢に備えてきました。

これは大きな問題です。

私たちは十分な兵器を備えなければなりません。

もちろん、反転攻勢の規模も明らかに違ってきます。

クリミアを含めて、すべての領土を奪還しなければなりません。

反転攻勢は、これまでよりも大規模なものになります。

【メリトポリ解放に何が必要?】

Q.メリトポリの解放に向けて、何が必要でしょうか?

A.強力な軍事支援と、国土の再建に向けた支援が必要です。

私たちは、すべてを覆す必要があります。

新たな時代を切り開くこと。

それが、占領者ロシアに対する、私たちからの最大の回答になるでしょう。

街を今まで以上に発展させ、産業も教育も充実させていくことが、街を解放したあとの私たちの務めになります。

【取材後記】

フェドロフ市長は、軍事侵攻が始まった直後の去年3月、ロシア軍によって一時拘束されていたことがあります。

解放されたあとは、ザポリージャ州内の別の場所に移り、メリトポリに残された市民などと連絡を取り合って、現地の状況の把握に努めてきました。

今回は、滞在先の首都キーウから取材に応じてくれましたが、市長がインタビューの中で強調していたのは、反転攻勢や欧米側からのいっそうの兵器供与に対する期待だけでなく、都市を奪還した「あと」の重要性でした。

占領時よりも街を発展させ、結果的に市民がよりよい生活を送ることになればそれがロシアの侵略に対する「最大の回答」になると訴えていました。

その視線は、すでにメリトポリの将来に向けられていたのが印象的でした。

ただ、市長は、注目が集まっている反転攻勢の詳細について、語ることはありませんでした。

そのことが、高い緊張感を持ち、反転攻勢に懸けようとしているウクライナのいまを何よりも示しています。