“今こそ海外!”旅行需要回復 各国と連携し取り組みへ 観光庁

水際対策の終了などコロナ禍からの正常化が進む中、海外に出国する日本人の数は、訪日外国人と比べて伸び悩んでいます。観光庁は、各国の政府観光局などと連携し海外旅行の需要回復に向けた取り組みを進めることになりました。

日本政府観光局のまとめでは、3月に日本を訪れた外国人旅行者は、コロナ禍前の2019年の同じ月と比べ65%まで回復した一方で、海外に出国した日本人は、36%にとどまっています。

こうした中、観光庁は、「今こそ海外!」を合言葉に、業界団体や、各国の政府観光局と連携し、海外旅行の需要回復に向けた取り組みを進めることになりました。

取り組みでは、各国の政府観光局などが費用を負担して、新たにパスポートの取得や有効期限の更新を行った3210人を対象に1人当たり8000円分の電子ギフト券を提供する事業を行います。

また、コロナ禍で学生などの若者が海外に行く機会が大幅に減ったとして、旅行各社が、若者が利用しやすい価格帯のツアー商品などを充実させるとしています。

日本と各国を結ぶ航空路線は、コロナ禍で利用者の大幅減少など大きな影響を受けました。

観光庁では、日本を訪れる外国人旅行者だけでなく、海外に出国する日本人の数を回復させることで航空路線の維持や再開などにもつなげたいとしています。

記者会見で観光庁の和田浩一長官は、「新型コロナの感染症法上の位置づけが見直されたこのタイミングで、官民が一体となってメッセージを出すことで、機運を盛り上げ、海外旅行を楽しむ人を増やしたい」と述べました。

23の国と地域の担当者も会見に出席

10日の会見には、観光庁や業界団体だけではなく、フランスやオーストラリア、グアムなど、23の国と地域の政府観光局の担当者なども出席しました。

このうち、フランス観光開発機構で日本を担当する、フレデリック・マゼンク代表は「2019年と同じように観光客が戻ってきていますが、その中でまだ戻ってきていないのが日本人です。明日からでも来てほしいという思いです。みんな歓迎をしています」と呼びかけました。

パスポートの申請件数 コロナ禍前の水準近くまで回復

観光業界などからは海外旅行の需要回復への期待の声が聞かれます。
都内のパスポートセンターでも、申請の件数はコロナ禍前の水準近くまで回復しています。

都内にあるパスポートセンターでは、10日も海外旅行などに向けてパスポートの申請に訪れる人が相次ぎ、窓口は混雑しました。

東京都によりますと、コロナ禍でパスポートの申請件数は都内でも減少し、去年4月は2万1000件余りと感染拡大前の2019年4月の35%にとどまりました。

そのあと、経済活動の正常化などを背景に申請件数は増加傾向が続いています。

先月の申請件数は速報値で5万5000件余りと、コロナ禍前の水準近くまで回復しています。

窓口では、コロナ禍で海外に行く機会がなかったことなどからパスポートの有効期限が切れてしまい、再び申請をする人の姿もみられました。

パスポートの申請に訪れた24歳の女性は「パスポートの期限が去年切れてしまい、申請しに来ました。来月、数年ぶりに家族と海外に行く予定なので、楽しみたいです」と話していました。

東京都都民生活部の原田一紀旅券課長は「国によっては残りの有効期限に条件がある場合もあります。旅行の計画を立てたら、前もってパスポートの期限が大丈夫か確認するなど計画的な取得をお願いします」と話していました。

外務省によりますと、2019年12月末時点で、有効期限が切れていないパスポートの数は3027万枚でしたが、去年12月末時点では2175万枚と、28%減少しています。

旅行会社などは、パスポートの有効期限が切れた人が増え、再び取得するためには申請の手続きや費用が必要なため、海外旅行に行くことのハードルの1つになっているとみています。

スーツケースの売り上げ回復

海外旅行などにも利用されるスーツケースを製造・販売する都内の会社では売り上げがコロナ禍前と同じ水準まで回復しています。

東京 渋谷区にあるスーツケースの製造・販売会社では全国に90ある店舗などでの売り上げは先月、去年の同じ月と比べておよそ2.1倍に増加しました。

感染拡大前の2019年の4月と比べても、同じ水準まで回復しているということです。

会社によりますと、海外旅行や海外出張などで利用されることが多い容量が80リットル以上の大型サイズの売り上げはコロナ禍で大幅に落ち込みましたが、去年11月ごろからは回復傾向が続いているといいます。

先月の売り上げは、コロナ禍前の2019年4月をおよそ20%上回りました。

大型のスーツケースを購入しようと訪れた30代の女性は、「この夏に家族3人で旅行をしたいです。海外旅行に行くとしても近場がいいと思いますし、子どもにとってフライトが大変ではないフィリピンなどがいいです」と話していました。

スーツケースの製造・販売会社で広報を担当する森川泉さんは「海外旅行では円安でもあるので近場の韓国や台湾を選ぶ人が多いと感じます。この夏に海外旅行を計画している人や留学に行く人も増えていると思います」と話していました。