原発の運転期間“延長”法案 参議院で審議入り

脱炭素社会の実現などに向けて原子力発電を最大限活用するため実質的に原発の運転期間の上限を超えて運転できるようにする法案が、10日の参議院本会議で審議入りしました。

電気事業法や原子炉等規制法などの一部を改正する法案は、現在の法律で最長60年とされている原発の運転期間について、審査などで停止した期間を除いて、実質的に上限を超えて運転できるようにするほか、運転開始から30年以降は10年を超えない期間ごとに機器や設備の劣化状況を確認して管理計画を策定し、原子力規制委員会の認可を受ける必要があるとしています。
10日の参議院本会議では、法案の趣旨説明のあと質疑が行われ、自民党の石井正弘氏は、「ロシアによるウクライナ侵略で、国際的なエネルギー市場は混乱したが、カーボンニュートラルと経済力の強化を同時に達成できれば国際的な競争で有利になる」と指摘しました。

これに対して岸田総理大臣は、「徹底した省エネの推進や再エネの最大限の導入、原子力の活用など脱炭素電源への転換を進めていく」と強調しました。
また、立憲民主党の田島麻衣子氏は、法制度の見直しにあたって、経済産業省の担当者が原子力規制庁の担当者と面談していたことについて、「推進側と規制側が事前に話をすり合わせるような会合を許してしまうなら、今後もそうした行動が繰り返されるのは明らかだ」とただしました。

これに対して岸田総理大臣は、「指摘のあったやり取りで規制と利用の分離に問題が生じたとは考えていない」と述べました。

規制委 60年以降の運転に「追加点検」の実施求める

原子力規制委員会は、60年を超えて運転する原発の安全性を確認する制度を検討してきましたが、10日の会合で、60年以降も運転しようとする際には、原則として、運転開始から40年目までに行われる「特別点検」と同じ項目で、「追加点検」の実施を事業者に求めることを決めました。

具体的には、原子炉や格納容器、コンクリート構造物などに劣化や損傷がないか調べるほか、国内外の最新の知見なども踏まえて、個別の原発の特徴に応じた点検も実施するとしています。

「追加点検」は、60年以降も、10年を超えない期間ごとに認可を受けなければならない管理計画の審査に合わせて行う必要があるということです。

また、建設から時間がたって設計が時代後れになってしまう事態に対応するため、最新の原発と比較して足りていない対策があれば追加で対策を求めることも新たに決めました。