【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(10日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。
戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる10日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

英国防省「軍事パレード参加の大半 正規軍兵士ではない」

ロシアの首都モスクワでは9日、第2次世界大戦の戦勝記念日にあわせてプーチン大統領が演説し、軍事パレードが行われました。

このうち演説について、アメリカのシンクタンク、戦争研究所は「ウクライナでのロシア軍の後退をどのように逆転させるのかについて、具体的なビジョンを示さなかった」と9日、指摘しました。

またイギリス国防省は10日、軍事パレードに参加した8000人余りの大半は正規軍の所属ではなく、準軍事組織の兵士や訓練中の士官候補生などだったとの分析を発表しました。

そしてパレードに参加した戦車が旧式のT34戦車、1両だけだったことについて、ウクライナでの戦闘よりもパレードを優先しているという批判を避けるためだとした上で、ロシア軍が直面する物質的な課題が浮き彫りになったという見方を示しました。

ゼレンスキー大統領 「ロシアはバフムト掌握できず」

ウクライナのゼレンスキー大統領は、9日の会見で、東部の激戦地バフムトについて「ロシア軍はバフムトを掌握できなかった。ロシアにとっては5月9日までに終わらせたかった最も重要な軍事作戦だった」と述べ、戦勝記念日にあわせて軍事的な成果を示そうとしたロシアの思惑は失敗したと指摘しました。

バフムトをめぐっては、ロシアの正規軍とともに戦闘に加わっている民間軍事会社ワグネルが弾薬の不足を理由にバフムトから撤退する意向を示し、ロシア側の足並みの乱れが指摘されています。

これについてワグネルの代表プリゴジン氏は9日、要求していた弾薬の一部をロシア国防省から受け取ったとした上で「われわれはバフムトを離れず、あと数日は戦うだろう」と主張し、引き続きバフムトの戦況が焦点のひとつとなります。

ウクライナのゼレンスキー大統領は7日、「われわれは5月と6月の新たな出来事に備えて、活発に準備を進めている」と述べていて、今後の東部や南部での反転攻勢を示唆しました。

AFP通信のカメラマン 攻撃に巻き込まれ死亡

フランスの通信社、AFP通信は、ウクライナ東部の激戦地、バフムトの近郊でウクライナ軍を取材していたカメラマンが攻撃に巻き込まれ、死亡したと発表しました。

亡くなったのは、フランス人のアルマン・ソルダンさん(32)で、ソルダンさんは、9日、激戦地のバフムトから西に数キロ離れた地域でAFP通信のクルーとともに、取材にあたっていたということです。

取材チームがウクライナ軍の近くにいた際、ロケット砲による攻撃があり、ソルダンさんの近くに砲弾が落ちたということです。

ソルダンさんは去年2月、ロシアによる軍事侵攻の開始直後から現地に入り、東部や南部の前線を取材してきたということです。

AFP通信がSNSに投稿した写真には、ヘルメットや防弾チョッキを身につけ、片手にビデオカメラを持って、にこやかな表情を見せるソルダンさんが写っています。

AFP通信のフリース会長は「彼を失い、みんなが打ちのめされている。ウクライナでジャーナリストが毎日危険に直面していることを痛感する」と、追悼のコメントを発表しました。

フランスのマクロン大統領はSNSへの投稿で「彼の家族と同僚の痛みを分かちあいたい」などとしてソルダンさんの死を悼みました。

アメリカ 追加の軍事支援へ 1600億円相当

アメリカのバイデン政権はウクライナを継続的に支援するため、新たにおよそ12億ドル、日本円にしておよそ1600億円相当の軍事支援を行うと発表しました。

具体的には、りゅう弾砲用の追加の砲弾や防空システム、それに敵の無人機を迎撃するための弾薬などを供与する方針で、メーカー側と契約手続きを開始するとしています。

アメリカ国防総省は、声明で今回の軍事支援はウクライナがロシアによる侵攻を長期的に抑え込むための戦力の構築も目的としているとしていて「アメリカの継続的な関与を強調するものだ」としています。

ゼレンスキー大統領は9日公開した動画で、欧米からの支援に謝意を示した上で「78年前に敗れた侵略者のように今の侵略者が敗れるのは時間の問題だ」と述べて今後、反転攻勢に乗り出す構えを改めて示しました。

ゼレンスキー大統領 EUと結束を強調 “ヨーロッパの日”

ウクライナは、ロシアが5月9日を第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利した戦勝記念日としているのに対し、ことしからEUと同じくヨーロッパの団結を記念する「ヨーロッパの日」と定め、ベルギーにあるEU本部にも9日、ウクライナの国旗が掲げられました。

その9日、ゼレンスキー大統領はキーウを訪れたEUのフォンデアライエン委員長と会談を行い、その後、そろって記者会見を行いました。

このなかでゼレンスキー大統領は「わたしたちのヨーロッパと自由を守るため、脅威に対抗できるよう行動してきたすべての仲間に感謝したい」と述べ、EUの支援に謝意を示しました。

これに対し、フォンデアライエン委員長は「5月9日をウクライナの『ヨーロッパの日』にするという決断を心から歓迎したい。ウクライナは、わたしたちヨーロッパ人が大切にする自由や民主主義、思想と言論の自由を守る最前線にある」と応じ、両者は軍事侵攻を続けるロシアに結束して対抗していくことをアピールしました。

ロシア 軍事パレード 「T34戦車」にウクライナが皮肉

ロシアの首都モスクワで開かれた戦勝記念日の軍事パレードでは、兵士たちの行進のあとに兵器が披露されましたが、戦車で登場したのは第2次世界大戦のころに使われていた旧式の「T34戦車」1両のみでした。

これについて、ウクライナ国防省は9日、公式ツイッターに、1両のT34戦車が写った写真とともに「ロシアの現代的な兵器であれば、モスクワでのパレードよりもウクライナの軍事戦利品の展示会場のほうが、はるかに簡単に見つけることができます」と皮肉を交えて投稿しました。

去年の軍事パレードではT34のほかにも多くの戦車が披露されていましたが、ことしは戦闘機などの飛行も見送られ、規模の縮小が際立ちました。

軍事パレード 市民の受け止めは?

首都モスクワでは9日、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利した象徴とされる黒とオレンジ色の「ゲオルギー・リボン」を身につけた人が多く見られ、戦勝記念日を祝う姿がありました。

テレビで軍事パレードを見たという60代の年金生活者の女性は「航空機が飛ばなくて残念だった。ことしは例年と雰囲気が少し違い、『不滅の連隊』の行進もなくとても残念で物足りない」と話していました。

一方で「事情があって、国内に軍用車両などが少ないのだろう。われわれの仲間を守るためほかの場所で必要なのだろう」と話していました。

また工場で働く40代の男性も「軍用車両の数が少なかった。特別軍事作戦の状況に関係しているのだと思う。車両はあっても兵士が忙しいのだろう」と述べ理解を示していました。

息子と軍事パレードを見に来た50代の会社員の男性は「いまの世界情勢によって、ことしのパレードには警戒感や不安感が表れている」として、ウクライナへの侵攻が続く中、例年とは違う戦勝記念日だったと話していました。