日韓首脳会談 専門家はどう見た?今後の注目は?

日韓首脳会談の結果について、日韓関係に詳しい慶應義塾大学の西野純也教授に話を聞きました。

“評価が二分される可能性も”

Q. 日韓首脳会談のあとに行われた共同記者会見をどう見たか。

A. 太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題に関連して、岸田総理大臣が自身の考えとして、当時、苦しい、悲しい思いをされた方々に思いをはせた発言は非常に重要なポイントだったと思う。韓国国内では、今回の岸田総理大臣の訪問で前向きな、踏み込んだ発言はおそらくないだろうと予想されていたので、予想よりも踏み込んだ発言が行われたことは韓国社会で評価されるに値する内容だったと思う。

また、G7広島サミットの際にユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領とともに平和公園の韓国人原爆犠牲者慰霊碑を訪れることも、韓国の方々の思いを十分くみ取った決定ではないかと思う。

さらに、東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を放出する計画をめぐり、韓国から視察団を受け入れると決定したことも、ユン大統領の日韓関係改善の努力に応えるため非常に意味のある内容だった。

ただ、韓国社会はいま分極化しているので、今回の岸田総理大臣の韓国訪問や発言について評価が二分される可能性は十分にあると思う。
慶應義塾大学 西野純也教授

“日本側の意思を強く感じる”

Q. ユン大統領を支えるのは少数与党であり、来年春に総選挙を控えています。今後の日本側の対応についてどのように考えますか?

A. 韓国の政治情勢について、日本側がどうこうできることはないので、日本側としてはユン大統領が日韓関係改善のために国内的にリスクを背負う中で多大な努力をしている状況を踏まえて、それに報いる形で積極的に関係改善に取り組んでいくことに尽きるのではないか。
3月のユン大統領の訪日からの動きを見ると、ユン大統領の努力に報いようとする日本の姿勢は十分に感じられるし、今回の記者会見でも日本側の意思を強く感じることができた。今後も日韓関係改善のため速いスピードで努力していくことが必要で、そのためにも両国の国内に関係改善がともに利益になることを示していくことが重要だ。

G7では…

Q. 今月19日から始まるG7広島サミットにユン大統領が招待されているが、日韓関係の改善に向けて今後どのようなことに注目すべきか。

A. G7サミットの際に両国首脳が平和公園の韓国人原爆犠牲者慰霊碑を訪問する姿が日韓の両国民にどのように映るのかが重要であり、さらに国際社会に対しても、日韓が協力していく姿をアピールすることは大切だ。

また、日米韓3か国の首脳会談も開かれるので、今後の3か国の協力を確認して、さらに前に進んでいくことも重要だ。

(聞き手 国際部記者 近藤由香利)