【詳細】日韓首脳会談終わる 北朝鮮情勢踏まえ安保協力強化へ

就任後初めて韓国を訪れている岸田総理大臣は、ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領と会談し、日韓関係改善の動きが軌道に乗ったという認識で一致しました。また、北朝鮮の核・ミサイル開発の活発化を踏まえ、安全保障協力を強化していくことなどを確認しました。

午後4時前から始まった首脳会談は、少人数会合のあと出席者を拡大して合わせて2時間近く行われました。

会談で両首脳は、12年ぶりに再開した首脳間の相互往来「シャトル外交」が短期間で本格化し、対話が順調に進んでいることを歓迎するとともに、日韓関係の改善の動きは軌道に乗ったという認識で一致しました。

また、サプライチェーンの強化を含めた経済安全保障の協力が動き始めたことも評価し、一層取り組みを促進していく方針を申し合わせました。

そして、北朝鮮による核・ミサイル開発が活発化していることを踏まえ、日韓両国やアメリカも加えた日米韓3か国の安全保障協力を進め、抑止力と対処力を強化していくことを確認しました。

一方、両首脳は、日韓両国間の懸案をめぐっても意見を交わし、それぞれの立場を伝えました。

岸田総理大臣は、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題に関連し、1998年の日韓共同宣言を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいるとした日本政府の立場は、今後も揺るがないという考えを伝えました。

このほか両首脳は、東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画をめぐり、今月23日にも韓国が専門家による視察団を現地に派遣することで合意しました。

さらに今月のG7広島サミットの際に日米韓3か国による首脳会談を行い、北朝鮮情勢について議論することで一致しました。

また、サミットにあわせて日韓両首脳で被爆地広島にある平和公園の韓国人原爆犠牲者慰霊碑を訪問することも確認しました。

【時系列 詳細】

18:00すぎ 共同記者会見

午後4時前から始まった岸田総理大臣とユン大統領との首脳会談は、冒頭は少人数で、その後は出席者を拡大して2時間近くにわたって行われ、そのあと両首脳はそろって記者会見を行いました。

“歴史認識に関する日本政府の立場 今後も揺るがない”

岸田総理大臣は「3月にユン大統領が訪日された際、1998年10月に発表された日韓共同宣言を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいると明確に申し上げた。この政府の立場は今後も揺るがない」と述べました。

そのうえで、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題でことし3月に韓国政府が解決策を発表したことについて「ユン大統領の決断により、3月6日に発表された措置に関する韓国政府による取り組みが進む中で、多くの方々が過去のつらい記憶を忘れずとも、未来のために心を開いてくださったことに胸を打たれた。当時、厳しい環境のもとで多数の方々が大変、苦しい、悲しい思いをされたことに心が痛む思いだ」と述べました。

また「私自身の思いを率直に語らせていただいた次第だ」と説明しました。

そのうえで「困難な時期を乗り越えてきた先人たちの努力を引き継ぎ、まさに未来に向けて、ユン大統領をはじめ韓国側と協力し、両国国民の利益になる協力関係を構築していきたい」と述べました。

福島第一原発の処理水 視察団を現地派遣で合意

東京電力福島第一原発にたまる処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画をめぐり、「日本は高い透明性を持って、科学的根拠に基づく誠実な説明を行っていく考えだが、韓国国内で引き続き懸念の声があることはよく認識をしている」と述べました。そして、韓国が専門家による視察団を今月、現地に派遣することで両首脳が合意したことを明らかにしました。

“G7広島サミットの際に日米韓3か国による首脳会談”

また、G7広島サミットの際に日米韓3か国による首脳会談を行い、北朝鮮情勢について議論することを明らかにしました。

そして「被爆地広島で平和記念公園を訪問し、韓国人原爆犠牲者慰霊碑にも一緒に祈りをささげることでユン大統領と一致した」と述べました。

“日韓米の安保協力で抑止力と対処力を強化”

岸田総理大臣は「北朝鮮の挑発行為が続き、力による一方的な現状変更の試みもみられる中、日米同盟、韓米同盟、日韓そして日韓米の安全保障協力により抑止力と対処力を強化することの重要性について改めて一致した」と述べました。

“米韓での拡核戦力大抑止の議論 地域の平和と安定に資する”

そして「核戦力をめぐって情報共有を図る協議体の創設を含め、米韓の間で拡大抑止の強化に関する議論が行われていることや、ハイレベルの協議を通じた日米間での拡大抑止強化に向けた取り組みが相まって、地域の平和と安定に資すると考えている。 引き続き、日米、日韓、日韓米で緊密に連携していきたい」と述べました。

“日韓の将来を担う青年たちの交流 全面再開”

また「日韓の将来を担う青年たちの交流について、この機会に韓国との間で、対日理解促進交流プログラムによる対面交流の全面再開と、交流人数の昨年度比倍増を決定し、ユン大統領に伝えた」と述べました。

“韓国を輸出手続きを簡略化できる『グループA』に追加へ”

また岸田総理大臣は「輸出管理当局間の対話も精力的に行われ、その結果、日本政府として韓国を『グループA』に追加することに向けて手続きを進めている」と述べ、輸出手続きを簡略化できる優遇措置の対象国として、韓国を復帰させるための手続きを進めていることを説明しました。

“スーダンの邦人退避に協力いただき感謝”

そして「先般のスーダンにおける邦人退避に際し、人命がかかる困難な状況の中で、韓国から多大な協力をいただいたことに改めて感謝申し上げる」と述べました。

“早期の訪韓は日本側の意欲の表れ”

岸田総理大臣は「日韓関係の強化が必要だという考えは私もユン大統領に劣らないと考えており、早期の訪韓に踏み切った。3月に私とユン大統領が示した方向性に沿って2か月足らずの間に日韓の対話と協力がここ数年の低迷期を脱し、経済、安全保障を含む多岐にわたる分野で動き、具体的な成果をあげている。これらは日本側の意欲の表れでもある」と強調しました。

そのうえで「今後も両国政府の各レベルで、また民間の協力も後押しし、日韓両国がともにひ益するような協力を進め具体的な結果を出していきたい」と述べました。

韓国ユン大統領 処理水 韓国の専門家で視察団

韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領は、岸田総理大臣との首脳会談のあとの共同記者会見で、韓国で関心が高い、東京電力福島第一原子力発電所の処理水を放出する計画に関連して、韓国の専門家でつくる視察団を現地に派遣することで合意したと明らかにしました。

韓国人原爆犠牲者の慰霊碑 両首脳で訪問へ

また、G7広島サミットに合わせて広島を訪問することに関連して「両首脳は、平和公園にある韓国人原爆犠牲者の慰霊碑を一緒に訪れることにした」と述べました。

日米韓の首脳会談など緊密な意思疎通が非常に重要

そして「北の核・ミサイル開発が朝鮮半島と日本のみならず全世界の平和に重大な脅威だという認識で一致した」と述べたうえで「日米韓3か国の協力が重要な状況で、G7広島サミットを機に3か国の首脳会談など首脳どうしの緊密な意思疎通と協議が非常に重要だということで一致した」と強調しました。

「徴用」めぐる問題 “政府の方針は変わらない”

さらにユン大統領は、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で、韓国政府が発表した解決策について、政府の方針は変わらないかという質問に対して「変わらないと申し上げる」とした上で、韓国政府として原告側と十分に意思疎通を図って解決策を忠実に履行していく考えを示しました。

16:00前 首脳会談が始まる

首脳会談は7日午後4時前から始まり、同席者を限定した少人数会合と人数を増やした全体会合を合わせて2時間近く行われました。
冒頭、岸田総理大臣は「シャトル外交を本格化できることを大変うれしく思っている。3月の会談から2か月足らずの間に、さまざまな対話がダイナミックに動きだしており、2国間関係の進展について意見を交わしたい。また、G7広島サミットも見据え、北朝鮮を含むインド太平洋地域の最新情勢やグローバルな課題における連携についても議論したい」と述べました。

会談では、日韓関係の改善の流れを加速させるため、緊密な意思疎通を続けていくことなどを確認したものとみられます。

また、北朝鮮の核・ミサイル問題を受けた安全保障面での連携強化を確認したほか、半導体分野などでの経済安全保障協力や、日韓両国間の輸出管理のあり方などをめぐって意見が交わされたものとみられます。

さらに、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で、韓国側が示した解決策の実行状況についても情報の共有が図られたものとみられます。

両首脳は共同記者会見で首脳会談の成果を明らかにすることにしています。

韓国 ユン大統領「関係はスピード感をもって前に進んでいる」

韓国のユン・ソンニョル大統領は、岸田総理大臣との首脳会談の冒頭で、5日に石川県で震度6強を観測した地震について「国民を代表して哀悼の意とお見舞いを申し上げる。被災地の迅速な復旧と日常の回復をお祈りする」と述べました。

そのうえで「3月の訪日は、韓国大統領の2国間訪問として12年ぶりだったが、岸田総理大臣も日本の総理大臣として12年ぶりに韓国を2国間訪問された。シャトル外交の再開に12年かかったが、新たに出発した韓日関係がスピード感をもって前に進んでいることを確認できるものだ」と指摘しました。

そして「東京での首脳会談から2か月もたたないうちに、韓日関係の本格的な改善がはっきりとあらわれている。私は、過去に両国関係がよかった時代を超えて、よりよい時代をつくらなければならないという責任を感じている」と述べました。

また、ユン大統領は「今の厳しい国際情勢とグローバルな複合危機の中、韓日間の協力と協調は、両国の共通利益はもちろん、世界平和と繁栄のためにも必要だ。国際社会の平和と繁栄の土台となってきた自由民主主義が脅かされている状況で、普遍的価値を共有する韓日両国は、より緊密に連携して国際社会で協力していかなければならない」と述べました。

さらに「過去の歴史が完全に整理されなければ、未来の協力に向けて一歩も踏み出せないという認識から脱しなければならないと思う。岸田総理大臣の韓国訪問が両国の未来の協力に向けて有意義な一歩になることを期待する」と強調しました。

日韓首脳会談や今後の日韓関係について ソウル市民は

7日の日韓首脳会談や今後の日韓関係について、ソウル市内で聞きました。

20代の男性は「両国はよい関係ではなかったが、今後は友好的な関係をつくっていってほしい」と話していました。

また、40代の男性は「首脳どうしが会談し、実務者も多く会うことで、両国が発展するような結果が出ると期待している。腹を割って話せる間柄になってほしい」と話すなど、期待する声が多く聞かれました。

一方、50代の男性は「首脳会談には特に期待していない。双方が譲らなければいけないのに、日本は得ようとしてばかりで失望している」と話すなど否定的な意見もありました。

韓国大統領府の近くで抗議集会

日韓首脳会談が行われる韓国大統領府の近くでは、複数の市民団体が抗議集会を開き、主催者側によりますとおよそ100人が参加しました。

集会では、岸田総理大臣との会談に臨むユン・ソンニョル大統領に対し、東京電力福島第一原子力発電所の処理水を放出する計画に反対するよう求めたほか、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で日本は謝罪すべきだなどとシュプレヒコールをあげました。
一方すぐ隣では、岸田総理大臣の訪問を歓迎するとともに、日韓両国が未来志向の関係を築くことを支持する集会も開かれ、日本との関係をめぐって韓国国内の意見が鋭く対立している現状をうかがわせていました。

12:30ごろ 岸田首相 ソウルの国立墓地で献花

韓国を訪れている岸田総理大臣は、ユン・ソンニョル大統領との首脳会談に先立ち、歴代の韓国大統領や戦没者らがまつられているソウルの国立墓地を訪れ、慰霊碑の前で献花を行い、黙とうをささげました。

就任後初めて韓国を訪れている岸田総理大臣は、7日正午前、政府専用機でソウル近郊の軍用空港に到着しました。

そして、韓国の歴代大統領や朝鮮戦争の戦没者らがまつられているソウルの国立墓地を最初に訪れました。

岸田総理大臣は、同行している裕子夫人らとともに慰霊碑の前で献花や焼香を行ったあと、黙とうをささげました。

このあと、岸田総理大臣は、ユン・ソンニョル大統領との首脳会談に臨む予定です。

今回の訪問は、3月に再開で合意した首脳間の相互往来「シャトル外交」の一環で、日本の総理大臣が2国間の会談のために韓国を訪れるのは12年ぶりです。

首脳会談では、日韓関係の改善の流れを加速させるため、緊密な意思疎通を続けていくことや、北朝鮮の核・ミサイル問題を踏まえた安全保障面での連携強化などが確認される見通しです。

ソウル市内は厳重な警備態勢

岸田総理大臣の韓国訪問に伴って、ソウル市内は、警察や軍による厳重な警備態勢が敷かれています。

このうち、首脳会談が開かれる大統領府の前では、岸田総理大臣の訪問を歓迎する市民グループと、訪問に反対する市民グループが、それぞれシュプレヒコールをあげる中、警察官たちが警戒にあたっていました。

また、岸田総理大臣が宿泊するホテルの前には警察車両が並び、多くの警察官が配置されていました。

韓国の通信社、連合ニュースは、歴史問題などをめぐる日本への批判が韓国国内で根強いことに加え、日本での安倍元総理大臣の銃撃事件や岸田総理大臣の演説先で発生した爆発事件を受けて、警護が強化されたとみられると伝えています。

「徴用」めぐる問題 新たに1人が韓国政府の解決策を受領意向

太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で、韓国の最高裁判所で判決が確定した原告などのうち新たに1人が韓国政府の解決策を受け入れ、政府傘下の財団からの支払いを受け取る意思を示していることが関係者への取材でわかりました。

受け取りの意思を示しているのは生存する当事者3人のうちの1人で、財団では近く理事会を開いて支払いを正式に決定する見通しです。

財団による支払いについては、原告など15人のうちこれまでに少なくとも10人の遺族が受け取っていますが、生存する当事者が受け取る意向を示したのはこれが初めてだということです。

12:00前 岸田首相 ソウル近郊の軍用空港に到着

7日午前、政府専用機で羽田空港を出発した岸田総理大臣は、正午前、ソウル近郊の軍用空港に到着しました。

岸田総理大臣は、国立墓地を訪れて献花を行い、そのあとユン大統領との首脳会談に臨みます。

岸田総理大臣は会談で、日韓関係の改善の流れを加速させるため、緊密な意思疎通を続けていくことを確認したい考えです。

また北朝鮮の核・ミサイル問題を受けた安全保障面での連携強化を確認するほか、半導体分野などでの経済安全保障協力や、日韓両国間の輸出管理のあり方などをめぐって意見が交わされる見通しです。

今回の訪問は、ことし3月に日本で行われた日韓首脳会談で、首脳間の相互訪問「シャトル外交」の再開で合意したことを受けたもので、日本の総理大臣が2国間の会談のために韓国を訪れるのは12年ぶりです。

09:30すぎ 政府専用機で羽田空港を出発

岸田総理大臣は、午前9時半すぎ、現地に向けて政府専用機で羽田空港を出発しました。

08:54 岸田首相「信頼関係に基づいて率直な意見交換を」

これに先立って、岸田総理大臣は記者団に対し「3月の日韓首脳会談で、シャトル外交の再開を確認し、早速きょう、私も韓国を訪問する。信頼関係に基づいて率直な意見交換を行いたい」と述べました。

そのうえで「3月以降、財務、防衛をはじめ、さまざまなレベルで対話がスタートしており、こうした流れを一層、発展させるとともに、ユン大統領にはG7広島サミットに出席してもらうことを予定しているため、国際情勢や地域情勢なども意見交換できればと考えている」と述べました。

さらに、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題などへの対応については「さまざまな課題が日韓の間にはあるので、率直に意見交換したい」と述べました。