石川で震度6強 雨降り続く 土砂災害・地震に警戒【7日詳細】

5日に最大で震度6強の揺れを観測した石川県能登地方では雨が降り続き、降り始めからの雨量が平年の5月1か月分に達する大雨となっています。8日の朝にかけて土砂災害に警戒してください。また、7日も断続的に地震が発生していて、引き続き地震への備えが必要です。

気象庁によりますと、5日昼すぎ、石川県能登地方を震源とするマグニチュード6.5の地震が発生し、震度6強の揺れを珠洲市で、震度5強を能登町で観測しました。また、夜遅くにはマグニチュード5.9の地震が発生し、震度5強を珠洲市で観測しました。

能登地方では6日から雨が降り続き、6日の降り始めから午後8時までの雨量は、輪島市で117ミリと平年の5月1か月分に達しているほか、珠洲市で84.5ミリとなっていて、各地に大雨警報が出されています。

能登地方ではこのあとも断続的に雨が強まる見込みで、気象庁は、揺れの強かった地域では地盤が緩んでいるおそれがあるとして、8日の朝にかけて土砂災害に警戒するよう呼びかけています。

また、地震活動も活発な状態が続き、石川県能登地方で震度1以上の揺れを観測した地震は5日だけで58回に達し、2020年以降の一連の活動で最も多くなりました。また、7日は午後8時までに8回発生しています。

気象庁は、揺れの強かった地域では1週間程度、最大震度6強程度の揺れを伴う地震が発生するおそれがあるとして、注意を呼びかけています。

さらに政府の地震調査委員会は6日の臨時の会合で、5日の地震を2020年ごろから活発化した一連の活動の1つだと評価したうえで、地震活動や地殻変動の状況から能登地方での地震活動は当分続くと考えられるとして強い揺れへの長期的な備えが必要だと指摘しました。

地震調査委員会の委員長で東京大学の平田直名誉教授は「今回の地震で損傷した家屋などを一刻も早く補修する必要はあるが、この2、3日は非常に強い揺れが起きる可能性が高い。むしろ近寄らずに安全なところにいて欲しい。そのあと、次の揺れに備えた耐震化などの対策を進めてほしい」と呼びかけました。

一連の地震で、石川県内では珠洲市で1人が死亡、珠洲市と能登町で合わせて33人がけがをし、珠洲市を中心に多くの住宅にも被害が出ています。

珠洲市では地震の被害を受けた建物に倒壊のおそれが無いかを判定する「応急危険度判定」が進められていて、最も危険度が高い「危険」と判定された建物が少なくとも51棟あったことが県のまとめで分かりました。
珠洲市は、市内全域の土砂災害警戒区域にある9つの地区の合わせて740世帯1630人に避難指示を出していて、7日午後5時現在、市内14か所に避難所が開設され、このうち5か所に16人が避難しているということです。

珠洲 市役所に支援物資が次々と

石川県珠洲市の市役所には支援物資が次々と届いています。このうち日本赤十字社からは毛布などが届いたほか、地元のJAからは2リットルの飲料水1800本が届きました。

支援物資を受け取った泉谷満寿裕市長は、「断水は解消されても濁った水が出ることもあり飲料水の提供は助かります。避難が長引くことも考えられるので支援はありがたい」と話していました。

飲料水を提供した「JAすずし」は、ほかにも壊れた屋根瓦の応急措置などに使うブルーシート2000枚を用意し、今後、必要とする人に提供していくということです。

「JAすずし」の中島正明専務理事は「水に困っている市民がたくさんいるので、助けになればと思い提供させていただいた。これからも支援を続けたい」と話していました。

小雨が降るなか 住民やボランティアが復旧作業

5日、震度6強の揺れを観測した石川県珠洲市では小雨が降るなか、住民やボランティアが壊れた建物を直すなど復旧作業を進めています。

このうち珠洲市正院町の呉服店では、壊れた玄関の扉を直すために近くの住民や大工が集まりました。

地震の衝撃で木製の扉は倒れ、扉の枠もゆがんではまらなくなってしまったということで、扉をかんなで削るなどして調整し、枠に取り付けていました。

店の中も家財道具などが散らかった状態だということで、母親とともに店を営む出場康仁さんは「扉が入り口にはまって少しだけ安心しました。やることは山ほどありますが、目の前のことを1つずつこなしていくことしか考えられません」と話していました。

また愛知県のNPOの災害ボランティア3人が正院町を訪れ、倒壊した住宅の家財道具を片づける手伝いを始めました。

このNPOでは住民にニーズを聞き取った上で、今週後半から本格的に活動を始めるということです。

代表の赤池博美さんは「避難所ではなく家で生活をされている方はたくさんいるので、業者が来るまでの間安心して住めるよう手伝いをしたい」と話していました。

珠洲 水が出ない状態だった高校で復旧作業

地震のあと水が出ない状態となった石川県珠洲市の県立高校では、連休明けの8日に向けて復旧作業に追われました。

珠洲市の県立飯田高校では地震のあと一部で水が出ない状況が続き、使えないトイレもあるということです。

このため業者に依頼し、重機で地面を掘り起こして水が漏れている配管がないかを探すなど復旧に向けた作業に追われました。

また駐車場に亀裂が入ったり校舎をつなぐ渡り廊下の壁が大きく破損したりしたほか、図書室の本棚も倒れるなどの被害も出ていて、教員たちが片づけを進めていました。

学校では生徒が使用する範囲では水道水やトイレの利用のめどがついたなどとして、8日は通常どうり授業を行うとしています。

飯田高校の角秀明校長は「地震の被害を見た時はあぜんとしました。部活やテスト勉強もある中での地震で、生徒には精神的な動揺もあると思いますが、地震に負けないように頑張ってほしいですし自分たちはそれを支えていきたいです」と話していました。

珠洲 小中学校や高校で被害確認も 8日から授業行う方針

珠洲市内にある小中学校や高校では地震で窓ガラスが割れるなど被害が確認されましたが、いずれの学校も修理を進めていて大型連休明けの8日から通常どおり授業を行う方針です。

石川県教育委員会や珠洲市教育委員会によりますと、珠洲市内にある小学校7校と中学校2校、小中一貫校1校、それに県立高校1校のあわせて11校で地震による被害が確認されました。

このうち、県立飯田高校では、地震による影響で断水や窓ガラスが割れるなどの被害があったほか、飯田小学校ではグラウンドに数センチのひび割れが、蛸島小学校では銅像の土台にひび割れが確認されたということです。

各学校では片付けや修理などを進めていて大型連休明けの8日から通常どおり授業を行う方針だということです。

“修理したばかりの家に被害” 先行きへの不安の声

5日、震度6強の揺れを観測した珠洲市では去年の地震で被害を受け、修理したばかりの家が再び被害を受けてしまったという住民もいて、先行きへの不安の声が聞かれました。

珠洲市上戸町にある谷内田直さん(71)の住宅は去年6月の震度6弱の地震で階段を支える土台がずれる被害がありました。

修理の依頼をしてから半年以上待ってようやく工事が始まり、先月末に完成したばかりだったということです。

ところが、5日の震度6強の地震で、家の土台がずれたり壁に亀裂が入ったりするなど、再び被害を受けました。

また、前回の地震では倒れなかった台所の食器棚も上半分が床に落ち、ガラスの破片や食器が床一面に散乱したということです。

谷内田さんは、今後も地震が発生することが考えられるため今回の被害について修理するかどうかを決めかねているということです。

谷内田さんは「天災なのでどうすることもできないが、前回よりも被害は大きい。数日前に直したばかりのところも被害を受け残念です」と話していました。

7日13:00 石川 珠洲 断水はすべて復旧

珠洲市で発生した地震で一時は100世帯以上が断水しましたが、7日午後1時に市内の断水はすべて復旧しました。

珠洲市によりますと、最も多いときで6日の夕方、128世帯で断水が確認されていましたが復旧作業が進められた結果、7日午前3時半の時点で岩坂町の2世帯を残して解消していました。

7日も作業が進められ、午後1時にすべての世帯で断水が復旧しました。

珠洲市では水道水に濁りが残っているとして、7日午前10時から若山町の2か所で給水所を設けていましたが、濁りも解消したため午後2時で給水所を閉鎖したということです。

石川 珠洲 田植えをしたばかりの水田 苗が抜ける被害

5日、震度6強の揺れを観測した石川県珠洲市では、田植えをしたばかりの水田の苗が揺れによって泥から抜けてしまう被害があり、農家が頭を悩ませています。

珠洲市正院町川尻で米作りを行っている谷内前吉昭さん(69)は5日、田植えをしている最中に地震が発生しました。

揺れによって植えた直後の苗、およそ1ヘクタール分が泥から抜けてしまい、水田には大量の苗が浮いたままになっています。
田植えをやり直すためには、水を抜いて水田を耕し直したり、新たに20万円分の苗を仕入れたりする必要があるということです。

谷内前さんによりますと、この地域だけでもおよそ5ヘクタールの水田で苗が抜けて水に浮いているということです。

谷内前さんは「市内全体で同じような被害が広がっていれば、相当な数の苗が必要になるので新たな苗が手に入るか不安です」と話していました。

救助された77歳の女性「生きているのは奇跡」

石川県珠洲市で、地震の揺れで倒壊した自宅の中で救助を待ち、かろうじて無事に助け出された77歳の女性がNHKの取材に応じ、「いつ助けが来るかと不安だった。生きているのは奇跡としか言いようがない」と当時の状況を語りました。

珠洲市の正院地区にある西村信子さん(77)の2階建ての住宅は、5日の震度6強の地震で1階部分が2階部分に押しつぶされるようにして崩れました。

西村さんは夫婦で夜遅くまで飲食店を経営していて、地震が起きた5日の午後は、1人で道路側に面した1階の寝室で寝ていました。

夫の一雄さんは(80)飲食店にいたということです。

午後3時前、激しい揺れや、頭上から聞こえる「バリバリバリ」といった音で目を覚まし、地震だと思ったものの、しばらくは恐怖で布団をかぶったままだったということです。

揺れが収まって立ち上がろうとしたところ、天井に頭がぶつかったことから「自宅が崩れて天井が落ちてきた」と気がつき、部屋の隅のテーブルの下で救助を待ったということです。

西村さんは「真っ暗で時間の感覚がなく、いつ助けが来るのか、とても不安でした。余震が来たらもう終わりだと思っていました」と話していました。

どれだけ時間がたったか詳しくはわからないものの、名前を呼びかける近所の人や救急隊員の声が聞こえたことから、呼びかけに応じ、光が見える方向にはうように進んだところ、救助されたということです。

消防によりますと、「住宅が倒壊し、中に人が残されている」という119番通報があったのが、地震発生からおよそ1時間後の午後3時47分。

その後、現場に到着し、西村さんの反応を確認したうえで倒壊した住宅の2階部分に入ったところ、西村さんが音を出して居場所を知らせたということです。

2階の床の板を電動のこぎりを使って剥がすなどして、助け出したのは通報からさらに1時間余り、地震発生から2時間余りたった午後4時52分だったということです。

西村さんは病院に搬送されましたが、ケガはありませんでした。
西村さんは「今、こうしていられるのは奇跡としか言いようがないと思いますし、偶然が重なり『生かされた』という思いです。助けに来てくれた人にもありがたいという気持ちです」と話していました。

西村さんが7日改めて現場を確認すると、2階に押しつぶされた寝室はほぼ見えなくなっていて、周囲には瓦などが散乱していました。

西村さんは、「いまだに、どこから脱出できたのか分かりません。家も長年住んでいましたが、こうなってしまっては取り壊すしかないと思います。命と引き換えだったのかもしれません」と話していました。

地震のあと現場に駆けつけ救助の様子を見守った一雄さんは「あの状況でけがなく助かったというのは信じられません。運がよかった、奇跡的に命をもらったと思います」と話していました。

石川 珠洲 宿泊施設の少なくとも約3割が営業できず

珠洲市では地震の影響で宿泊施設の少なくとも、およそ3割が営業できなくなっていて、それぞれの施設が営業再開に向けて復旧作業を急いでいます。

珠洲市から委託を受けた市内のNPO法人が、市内42の宿泊施設を対象に調査したところ、6日時点で22の施設から回答があり、少なくとも全体の3割の14軒が営業できていないことがわかったということです。

このうち、蛸島町の民宿は、客室の壁にひびが入ったり、食器棚が傾いたりしたほか、大量の食器が割れるといった被害が出たことから、休業を余儀なくされています。

常連客からの要望もあり、できるだけ早く営業を再開したいとして、7日も片付けを進めたり、調理器具などが使えるか確認したりしていました。

民宿を経営する室谷千代和さんは「完全に復旧させるのは難しい状況ですが、お客の声に応えられるよう準備を進めたいです」と話していました。

政府の調査委「地震活動は当分続く 長期的な備えが必要」

政府の地震調査委員会は、6日の臨時の会合で、5日の地震を2020年ごろから活発化した一連の活動の1つだと評価したうえで、地震活動や地殻変動の状況から能登地方での地震活動は当分続くと考えられるとして強い揺れへの長期的な備えが必要だと指摘しました。

地震調査委員会の委員長で東京大学の平田直 名誉教授は「今回の地震で損傷した家屋などを一刻も早く補修する必要はあるが、この2、3日は非常に強い揺れが起きる可能性が高い。むしろ近寄らずに安全なところにいてほしい。そのあと、次の揺れに備えた耐震化などの対策を進めてほしい」と呼びかけました。

岸田首相「地元とも連携し状況を注視」

岸田総理大臣は、総理大臣公邸で記者団に対し「天候などもいろいろ心配されている中でもあるので、政府としては引き続き警戒感を持って状況を注視していかなければならない。地元とも緊密に連携をとりながら、状況を注視していく」と述べました。