韓国政府 日韓関係改善を加速へ 国内では岸田首相の発言に注目

韓国政府は、7日行われる日韓首脳会談で北朝鮮への対応で、安全保障面での連携を強化することなどを確認し、関係改善を加速させたい考えです。一方、韓国国内では岸田総理大臣が歴史認識についてどのような発言をするかに注目が集まっています。

韓国大統領府は岸田総理大臣の韓国訪問は首脳間の「シャトル外交」を本格化させるものだと位置づけています。

韓国としては、北朝鮮による核・ミサイル開発への対応など安全保障面での連携を強化するほか、半導体をはじめとする先端技術の分野での協力拡大を確認し、日韓の関係改善を加速させたい考えです。

一方、韓国国内では、ことし3月のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の訪日について、最大野党の「共に民主党」が「歴史問題で日本から進展した態度を引き出せなかった」とか「屈辱外交だ」などと連日のように非難しています。

このため韓国では、岸田総理大臣が韓国滞在中に歴史認識についてどのような発言をするかに注目が集まっています。

また、複数の韓国メディアは、東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画をめぐり、韓国国内で懸念が出ていることを受け、首脳会談で議論される見通しだと伝えています。
韓国と日本の関係に詳しいアサン(峨山)政策研究院のチェ・ウンミ(崔恩美)研究委員は「前回の首脳会談は開催自体に意味があったが、今度はそういうわけにいかない。岸田総理大臣がどんな手土産を持ってくるか、また滞在中にどこに行き何を食べるかに至るまですべてが注目されるだろう」と指摘しています。

その上で、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で韓国政府が日本側に「誠意ある呼応」を求めていることに関連して、「植民地支配の時代に苦しんだ人々の痛みに共感し当時は大変だったということをわかってほしいと、韓国の国民は考えている。岸田総理大臣が心からの共感や慰めを伝えることが必要だ」と話しています。
韓国のユン・ソンニョル大統領は、ことし3月の日韓首脳会談の5日後に開かれた閣議で、日本に関する発言をおよそ20分間にわたって行い、閣議の冒頭発言としては異例の長さだったとして、注目を集めました。

この中では、歴史問題に関連して「いま日本との過去を乗り越えなければならない。関係正常化と発展の妨げとなるものを韓国が先に取り除けば、日本も応じてくるだろう」と述べ、日本との関係改善を着実に進める意向を強調しました。

その上で「日本はすでに数十回、過去の歴史について反省と謝罪を表明している」とも述べました。

ユン大統領は、先月、アメリカの有力紙のインタビューでも、「日本が100年前の歴史のためにひざまずいて謝罪しなければならないという考えは受け入れられない」と述べ、未来志向で日本との関係構築を進めていく姿勢を示しています。

こうしたユン大統領の対日姿勢について、韓国の国会で過半数を占める最大野党「共に民主党」は「屈辱外交だ」などと批判し、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で韓国政府が打ち出した解決策の撤回を求めるなど、反発を強めています。
3月の首脳会談の際、岸田総理大臣は、歴史問題をめぐって、「日本政府は、1998年10月に発表した日韓共同宣言を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいることを確認した」と述べました。

これについて、韓国国内では、「歴史問題に関する日本側の誠意ある呼応措置が足りなかった」とか、「ユン大統領は、日本側から進展した立場を引き出せなかった」などとする声が出ていて、今回の首脳会談での岸田総理大臣の対応に関心が集まっていました。
ことし3月に行われた日韓首脳会談から1週間ほどの間に、韓国政府は、日本政府が韓国向けの輸出管理を厳しくする措置を取ったことに対抗して行った、WTO=世界貿易機関への提訴を取り下げたほか、韓国側がいつでも破棄できるとしていた、軍事情報包括保護協定=GSOMIAの正常化を決め日本側に伝えるなど、関係改善のための対応をやつぎばやに打ち出しました。

先月に入ってからは、輸出手続きを簡略化できる優遇措置の対象国に日本を再指定することを決めています。
また、主要閣僚のクォン・ヨンセ(権寧世)統一相が3月に日本を訪れ、北朝鮮による拉致問題や核・ミサイル問題への対応で閣僚と協議するなど、政治レベルでの交流の再開も進められています。

ユン・ソンニョル大統領としては北朝鮮による軍事挑発が相次ぐ中で、4月下旬にアメリカを訪問して、バイデン大統領と会談した内容も踏まえ、日本やアメリカとの連携をさらに強化していく意思を、今回の首脳会談で改めて示すものとみられます。

一方、5年前の韓国軍による自衛隊機へのレーダー照射問題については、3月、韓国の国会でイ・ジョンソプ(李鐘燮)国防相が、「われわれの立場は、レーダーを照射しなかったというものだ」などと、従来の主張を繰り返しています。