【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(29日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる29日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

クリミアの軍港都市で火災

ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミアの軍港都市セバストポリのロシア側の幹部は29日、SNSに燃料の貯蔵施設が燃えていると投稿し、「無人機による攻撃によって引き起こされた」と主張しました。

現地の映像だとする動画では広い範囲で火が燃えていて、黒い煙が高くまであがっている様子が映し出されています。

これまでのところけが人などはないということです。

がれきの下敷きか 住民の救出活動続く

ロシア軍は28日、ウクライナの首都キーウなど各地を巡航ミサイルや無人機で攻撃し、中部ウマニでは子ども5人を含む23人が死亡したほか、東部ドニプロでは2歳の女の子と母親が死亡するなど、これまでに少なくとも25人が犠牲になっています。

被害を受けた現場では多くの住民ががれきの下敷きになったとみられ、地元当局などはいまも救出活動が続いているとしています。

また南部ヘルソン州でもロシア軍の砲撃で1人が死亡したと地元メディアが伝えているほか、東部ドネツク州の知事もSNSでロシア軍の攻撃で1人が死亡したとしています。

イギリス国防省は29日、ロシア軍の巡航ミサイルを使った大規模な攻撃は先月上旬以来だとした上で、冬の間はエネルギーのインフラ施設などを標的にしていたものの今回の攻撃では「ウクライナの予備部隊や軍事物資の供給の動きを妨害しようとした可能性がある」と指摘しました。

そのうえで、「ロシアは市民が巻き添えになって死亡することを防ぐよりも軍事面を優先している」と批判しました。

ウクライナが近く大規模な反転攻勢に乗り出す構えを示す中、ロシア側は民間人の犠牲もいとわず攻撃を強めている可能性もあるとみられます。

兵役義務の招集令状 オンライン通知可能に ロシア

ロシアのプーチン大統領は今月14日、兵役義務の招集令状について、書面による手渡しからオンラインによる通知も可能とする改正法案に署名し成立させました。

招集令状は、政府のポータルサイトに登録した個人のアカウントに通知される仕組みで、本人が通知を開いていなくても届いた時点で効力が発生するということです。

招集令状が届くと、ロシアからの出国が禁止されるほか、通知から20日以内に招集に応じなければ、自動車の運転や不動産の登録、それに銀行などからの融資を受けることができなくなるなど、生活する上でさまざまな制約を受けるということです。

ロシアの国営通信社は今月20日、プーチン大統領の出身地サンクトペテルブルクで試験運用が始まったと伝え、携帯電話のショートメッセージで招集令状を送る方法も検討されているとしています。

プーチン政権は去年9月、予備役の動員に踏み切り、ロシア国内では招集令状の受け取りを拒んだり、国外に脱出したりする市民も相次いでいて、今回の法改正は政権側が招集逃れを抑え込もうとしているという見方がでています。

NGO「人々はパニックに陥っている」

ロシア兵などの人権保護に取り組むNGO「徴集兵の学校」の代表で、現在はロシア国外で活動を続けるアレクセイ・タバロフ氏はNHKのオンラインインタビューに対し、招集令状がオンラインで通知されることが可能になったことについて、「令状を受け渡す原則が厳格化された。人々はパニックに陥っている」と述べました。

その理由について、タバロフ氏は「人々にとってロシアから出国禁止になることが恐ろしく、『鉄のカーテンが下りてもう終わりだ。どこにも行けなくなる』と考えているからだ。また、国民は、すぐに招集され、ウクライナへ派遣されると考えていて、軍から逃れることも隠れることもできなくなるという雰囲気が作られた」と指摘しました。

また、タバロフ氏は「国民は動員に否定的だったため、政権は、動員から契約による兵士募集という、異なるパッケージで包み込んだ。しかし、これは動員のようなものだ」と述べました。

その上で政権側は、高額な報酬を掲げてロシアの地方で兵士を募集するほか、徴集された若者に対し、軍が圧力を強めてウクライナの戦地に行くよう新たな契約を結ばせる可能性があると懸念を示しました。

一方、来月9日の第2次世界大戦の戦勝記念日にあわせて各地で行われてきた「不滅の連隊」と呼ばれる市民の行進がことしは見送られることについて、タバロフ氏は「プーチン政権は、ウクライナの戦争で犠牲になった兵士の遺影を持った人々が路上に出てくることを懸念している。反戦運動につながる制御できない激しい怒りを呼び起こす可能性もある」と述べ、政権側が戦争をめぐる国内世論に神経をとがらせているという見方を示しました。

タバロフ氏が代表をつとめるNGO「徴集兵の学校」は今月、プーチン政権から「外国のスパイ」を意味する「外国の代理人」に指定され、圧力が強まっています。

第2次世界大戦の戦勝記念日に向けた準備進む ロシア

ロシアでは、来月9日に迫った第2次世界大戦の戦勝記念日に向けた準備が各地で進んでいます。

このうち首都モスクワでは26日、プーチン大統領も出席して軍事パレードが行われる赤の広場で観覧席の設置作業や「5月9日 勝利」などと書かれた看板の飾りつけが行われていました。
また、周辺ではナチス・ドイツに対する勝利を表すものとして政権側が広めてきた、オレンジと黒の2色で彩られたリボンをボランティアの学生たちが道行く人々に配る様子も見られました。

大学2年生の女性はリボンを渡すたびに、2つの色は「火と火薬」を表し、勝利の象徴となっていると説明していて、「リボンを受け取る人たちが、私と同じように国への誇りを感じてくれることを願う」と話していました。

第2次世界大戦の期間中、旧ソビエトでは世界で最も多い、少なくとも2600万人の兵士と市民が死亡したとされ、ロシアで戦勝記念日は多くの人々にとって祖先が苦難の末に勝利した栄光と誇りの日と位置づけられています。

おじが第2次世界大戦で戦死したという60代の女性は「記念日が近づくにつれて高揚感を感じる。われわれは祖国とともにあり、結束し、無敵だという思いが募る」と話していました。

一方、若者の中には戦勝記念日など関係ないと冷めた見方をする人もいて、10代の男性は「夏が近づき、学年が終わると思うと楽しみだ」と話していました。

また、ウクライナへの軍事侵攻について、10代の女性は「21世紀の現代に生きる私たちのような若者には戦争への準備ができていない。多くの人たちも気持ちが追いつかず現状に心を痛めているのではないか。おじやいとこが戦地へ赴いたが、今どうしているか分からない」と戸惑っていました。

極東 サハリン州でも「ゲオルギー・リボン」配布

ロシア極東のサハリン州でも、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利した象徴とされる、黒とオレンジ色でデザインされた「ゲオルギー・リボン」の配布が27日から始まりました。

27日は、中心都市ユジノサハリンスクのバス停前で、ボランティアたちが通りかかった人たちにリボンを手渡していました。

この日、1日で合わせて250本配ったということです。

リボンを受け取った60代の女性は、ウクライナへの軍事侵攻が続きサハリン州内からも兵士たちが前線へ送られていることに触れ、「リボンは、彼らの士気を高めると思う。勝利は過去も現在もわれわれのものだ」と話していました。

また、リボンを配った16歳の学生は「リボンは、私たちが戦場にいる兵士たちを支持していることを意味している。そして、兵士たちのことを忘れずにいることも示している」と話していました。

長期化する軍事侵攻でウクライナの兵士や家族に精神的不調も

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が長期化する中、ウクライナでは、前線で戦った兵士やその家族が精神的な不調を訴えるケースは後を絶ちません。

ウクライナ西部リビウで市が運営する「リビウセンター」は、2014年に東部ドンバス地域で始まった戦闘などを受けて、精神的なケアを必要とする兵士やその家族のケアを行おうと、2016年に開設されました。

去年、ロシアによる軍事侵攻が始まってからは、センターを訪問する人は増え続け、現在、一日あたり平均で20人ほどが訪れているということです。

NHKが取材で訪れた3月末にも、東部の激戦地バフムトで戦っていた際に肩に銃撃を受けて地元のリビウに戻ってきた元兵士の男性が1時間ほどカウンセリングを受けていました。

元兵士は、一緒に戦っていた友人が銃撃戦の中で自分をかばって戦死したことがフラッシュバックし、精神的に落ち込んだり、眠れなかったりする日々を過ごしているといいます。

カウンセリングには、3月から週2回ほど通って心の悩みをカウンセラーに打ち明けているといい、元兵士は「ここに来ると落ち着いて、眠れない症状なども改善する。体調がよくなるまで通いたい」と話していました。

一方、カウンセラーによりますと、継続的なケアが必要でも戦闘が続いていることから、ある程度症状が改善されたら戦地に戻ることを望む人も多く、症状が複雑化したり長期化したりしやすくなっているということです。

カウンセラーは「多くの兵士は、集中力の低下や記憶障害、睡眠障害、コントロールできない緊張など、PTSDの症状が出ている。中には自分がいま戦場ではなく、平和な場所にいると気づけていない人もいる。長い時間のかかる治療だ」と話していました。
また、リビウセンターのスビトラーナ・トゥカチュク所長(50)は「心理的なサポートの重要性は増している。カウンセラーを2人から4人に増やしたが、予約や相談は数週間先まで埋まっていて、状況は深刻だ」と話していました。

センターでは、さらにカウンセラーを増やしたいとしていますが、カウンセラーの中には、戦地に赴いたり国外に避難したりしている人も多く、増員するめどはたっていないということです。

ケア受けられず日常生活に戻った兵士も

支援態勢が不十分だったことで、兵士の中には心のケアを受けられないまま日常生活に戻らざるを得なかった人もいます。

ウクライナの首都キーウの近郊に住むアンドリー・ネポセドフさん(50)は、東部のドネツク州やルハンシク州などの激戦地で戦っていましたが、戦闘中に肩を負傷し前線を離れることになりました。

ネポセドフさんによりますと、運ばれた病院では肩の治療は受けられたものの、心のケアについては、およそ100人の兵士が1つの部屋に集められて、病院の職員が「悩みを抱えている人はいませんか」と呼びかけただけで、支援を受けることはできなかったということです。

ネポセドフさんは「精神的なつらさは、誰もがみんなの前で言えるわけではない。そこでは誰も、なにも言わなかったし、自分も問題がないと思うしかなかった」と話していました。

しかし、ネポセドフさんは、前線を離れてから不眠に悩まされたり、小さな物音に敏感に反応してしまったり、ふと怒りがわいてきたりするなどの症状を抱えているといいます。

自宅の周辺には、心のケアを受けられるような施設もないということで、ネポセドフさんは妻や、飼っている犬や猫と時間を過ごしたり、植物を育てたりすることで日常生活を取り戻していこうとしていました。

EU ウクライナ産の農産物 域内5か国と輸入禁止措置撤回で合意

ポーランドなどがアフリカなどへ運ばれるはずのウクライナ産の農産物が国内で流通し、農家が打撃を受けているとしてウクライナからの輸入を相次いで禁止した問題で、EU=ヨーロッパ連合は農家を支援する代わりに、これらの国が個別の輸入禁止措置を撤回することで合意したと発表しました。

EUは、ロシアによる軍事侵攻で黒海の港から輸出できなくなったウクライナ産の農産物について、域内の港から輸出できるよう支援してきました。

しかし、ポーランドやハンガリーなど一部の加盟国は、アフリカなどへ運ばれるはずの農産物が国内で流通し、自国の農家が打撃を受けているとして、相次いでウクライナ産の農産物の輸入を禁止しました。
EU ヨーロッパ委員会 ドムブロフスキス上級副委員長
これをうけて各国と協議を行ってきたEUの執行機関、ヨーロッパ委員会のドムブロフスキス上級副委員長は28日、ツイッターに投稿し、ウクライナとの国境に近い5か国と、EUが農家の損失を補償するために1億ユーロ、およそ150億円を支援する代わりに各国は個別の輸入禁止措置を撤回し、ウクライナの農産物が引き続き、域内を通過して輸出できるようにすることなどで原則、合意したことを明らかにしました。
EUのフォンデアライエン委員長も「ウクライナの輸出と域内の農家の生活、双方を守るものだ」と歓迎のツイートを投稿し、EUとしては、ウクライナ支援をめぐる足並みの乱れをなんとか抑えた形です。

ゼレンスキー大統領 さらなる兵器支援を訴え

ウクライナのゼレンスキー大統領は、28日に公開した動画で子どもを含めた市民が犠牲になったことへの哀悼の意を示した上で、「このようなテロを行うのは絶対的な悪のみだ」としてロシア側を強く非難しました。

そして「テロを阻止し、人々を救うことができるのは兵器だけであることの証明だ」と述べ、兵器の必要性を強調し、改めて各国に対しさらなる支援を訴えました。

ロシア軍攻撃が集合住宅を攻撃 市民25人死亡

ロシア軍は28日、ウクライナの首都キーウなど各地を巡航ミサイルや無人機で攻撃し、このうち中部のウマニでは、集合住宅が被害を受けました。
多くの住民ががれきの下敷きになったとみられ、ウクライナ政府によりますと、これまでに子ども4人を含む23人が死亡したということです。また、東部のドニプロでは、2歳の女の子と母親のあわせて2人が死亡しました。

ゼレンスキー大統領 プーチン政権を強く非難

ゼレンスキー大統領は28日、キーウを訪れたスロバキアとチェコの大統領との共同記者会見で「ロシアはこの戦争で敗北しなければならず、その指導者は侵略と大量虐殺の罪で罰せられなければならない」と述べ、プーチン政権を強く非難しました。

ウクライナ レズニコフ国防相 近く大規模な反転攻勢に

レズニコフ国防相は記者会見で「われわれの準備はできている。天候や指揮官の決断しだいで、すぐにでも実行に移す」と述べ、近く大規模な反転攻勢に乗り出す構えを強調しました。

プーチン大統領 改めて対決姿勢

ロシアのプーチン大統領は28日、第2の都市サンクトペテルブルクで議会の代表らを前に演説し、動員で招集されるなどした兵士とその家族への支援策を強化する必要があるとして、兵員不足も指摘される中、待遇改善に力を入れる姿勢を示しました。
その上で、ウクライナへの軍事支援を強める欧米諸国を念頭に「かつてのパートナーたちはみずからの意見を押しつけようとしている。われわれは彼らのルールに従うつもりはない」と述べ、改めて対決姿勢を鮮明にしました。

バンクシーの作品残し破壊された住宅建て替え ウクライナ

ロシア軍による激しい攻撃にさらされたウクライナの首都キーウ近郊では、鋭い社会風刺画で知られる覆面アーティストのバンクシーが手がけた作品を残す形で、被害を受けた公営住宅の建て替え工事が始まっています。

ウクライナの首都キーウ近郊にあるイルピンでは、ロシアによる軍事侵攻が始まった当初、砲撃などの激しい攻撃にさらされ、39棟の集合住宅が破壊されて住めなくなりました。

イルピン市は、被害を受けた公営住宅の建て替え工事を始めていて、28日もショベルカーを使った解体作業が行われていました。

このうち1棟の壁には、首にコルセットを巻きながらも、新体操選手のように華麗にリボンを操る人の姿が描かれています。

この絵は、鋭い社会風刺画で知られる覆面アーティスト、バンクシーが手がけたもので、イルピン市はこの作品を残すため、透明なカバーで絵を覆った上で慎重に作業を進めていました。

被害を受けた公営住宅に住んでいたという女性は「とにかく早く平和になってほしい。バンクシーの作品は、世界が私たちの味方だと示してくれている」と話していました。

また、マルクシン市長は「敵を倒して市民を守ることが先決だが、住民が住み慣れた場所に戻るための準備もしなければならない。バンクシーの作品は町にとってシンボルのようなもので、大切に残していきたい」と話していました。

岸田首相 アフリカなど歴訪へ ウクライナ情勢背景に連携図る

岸田総理大臣は、29日からアフリカ4か国などを訪れます。ウクライナ情勢などを背景に各国が直面する食料問題などで協力していく考えを伝え「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国との連携を図りたい考えです。

来月のG7広島サミットを前に、岸田総理大臣は、29日から7日間の日程で、エジプト、ガーナ、ケニア、モザンビークのアフリカ4か国を訪問するほか、帰路にはシンガポールにも立ち寄り、各国首脳との会談に臨みます。

岸田総理大臣のアフリカ訪問は、総理大臣就任後初めてです。

今回訪問するアフリカ各国を含めた新興国や途上国は「グローバル・サウス」とも呼ばれ、ウクライナ情勢で中間的な立場をとったり、気候変動などの地球規模の課題で先進国と距離を置いたりする国も多く、国際社会への影響力が大きくなっています。

岸田総理大臣は、こうした国々を重視していて、一連の会談で、各国が直面する食料やエネルギー問題などで、協力を続けていく考えを伝えることにしています。

そして、ウクライナ侵攻を続けるロシアや覇権主義的な行動を強める中国などを念頭に、法の支配に基づく国際秩序の維持・強化に向けた連携を呼びかける方針です。

一方、林外務大臣も29日から来月7日までの日程でペルーやチリなど中南米5か国を訪問し、ウクライナ対応などで連携を確認するとともに、鉱物資源などの分野の協力をめぐっても意見を交わしたい考えです。