ストリートピアノ 半年で撤去 マナー違反相次ぎ 兵庫 加古川

兵庫県加古川市の駅に設置された誰でも自由に演奏できる「ストリートピアノ」について、加古川市は演奏のルールやマナーを守らない利用者が相次いでいるとして、わずか半年で撤去することを決めました。

加古川市は去年11月、音楽に親しんでもらおうと、閉園した市内の幼稚園で使用されていたピアノをJR加古川駅の改札の前に設置しました。

しかし、市によりますと、一部の利用者が大きな音量や大声で歌いながら演奏していたほか、1人10分程度、夜9時までとしていた利用時間を超えて演奏するなどルールやマナーを守らない人が相次いでいたということです。

また、電車の運行状況を知らせる構内アナウンスが流れた際に演奏を続ける人もいて、駅の利用者などから苦情が寄せられていたということです。

これまで市の職員が直接注意するなどの対応を取ってきましたが改善が見られなかったため、30日を最後にピアノを撤去することを決めました。

加古川市スポーツ・文化課の担当者は「公共の場所ということで一定のルールを設けたが、守られないケースが見られ、周囲の理解が得られないと判断した。苦情もあった一方で、ピアノの設置について喜ぶ声も寄せられていたため、苦渋の決断だった」と話しています。

市は今後、ピアノを置く場所を変えたり、期間を限定したりする方法を検討しているということです。

賛否の声「寂しい」「不快な顔で通り過ぎる人も」

JR加古川駅に設置されている「ストリートピアノ」が撤去されることについて、ピアノの利用者や駅を歩く人からはさまざまな声が聞かれました。

駅でピアノを弾いていた60代の男性は「自宅のピアノは電子ピアノなので、ここで弾かせてもらっていますが、ほとんどの人はルールを守って演奏していると思うので、私は残すべきだと思います」と話していました。

友人と一緒に利用したことがあるという20代の女性は「撤去されることは全く知らなかったです。ピアノを弾くことも聞くことも好きで、幅広い年代の人が弾いているのを見て、ほっこりしていました。都会だけでなく、加古川にもピアノが来てくれたんだとうれしく思っていたので、少し寂しく思います」と話していました。

また、仕事で駅を利用するという70代の男性は「ピアノを置くこと自体はよいことだと思うが、利用者だけが楽しめればよいということでもない。公共の場なので、決められたルールは守るべきだ。迷惑をかける人がいることでピアノが撤去されるのは残念です」と話していました。

一方、別の70代の男性は「1時間ほどがなり立てるような声で歌いながら、同じ曲を弾き続ける人を見たことがあり、みんな不快な顔をしながら、通り過ぎていました。ピアノがなくなるのは寂しいですが、同様のケースが続くとさすがに撤去せざるをえないのではないかと思います」と話していました。

全国で設置も 苦情寄せられるケース相次ぐ

「ストリートピアノ」は誰でも気軽に音楽に触れられ、演奏者と通りがかりの人との間に交流が生まれやすいとして全国の自治体や商業施設などで設置する動きが広がっています。

一方、ピアノの利用をめぐって苦情が寄せられるケースも相次いでいます。
兵庫県西宮市の商業施設では2020年に、ピアノを設置しましたが「音がうるさい」とか、「落ち着いて買い物ができない」などの苦情がこれまでに寄せられていたということです。

一時は撤去することも検討しましたが、午前10時から午後8時までだった利用時間を正午から午後5時に短縮したところ、苦情が大幅に減ったということです。
また、札幌市にある生活協同組合の店舗では、去年6月、施設の出入り口付近の待合スペースにピアノを設置したところ、客からの苦情が多く寄せられたということです。

このため、客にアンケート用紙を配布し、ピアノの設置についての賛否を募った結果、およそ300件の回答のうち、8割余りが設置に賛成する意見だったことから、ピアノは撤去せずそのまま残す判断をしたということです。