スペースXの大型宇宙船「スターシップ」 打ち上げ後に爆発

アメリカの宇宙開発企業スペースXが将来、月や火星に飛行することも想定して開発を進めている大型宇宙船が20日、試験飛行のため、無人で打ち上げられましたが、打ち上げからおよそ4分後に、上空で爆発しました。スペースXはデータを分析して原因を調べ、改良につなげることにしています。

スペースXは将来、月や火星に飛行することも想定した大型宇宙船「スターシップ」の開発をアメリカ・テキサス州南部の試験場で進めています。

20日、この宇宙船を無人で打ち上げる試験飛行が行われました。

宇宙船はロケットを含むと全長が120メートルで、エンジンが点火されると、宇宙船を搭載したロケットは大きな音をたてながらゆっくりと発射台から上昇していきました。

NHKが撮影した映像には打ち上げからしばらくしてロケットが回転するような軌道を描いて飛ぶ様子が映っていて、打ち上げからおよそ4分後、宇宙船を切り離す前にロケットは上空で爆発しました。

スペースXはデータを分析して原因を調べ、改良につなげることにしています。
スターシップをロケットに搭載して打ち上げ、地球を一周近く飛行させる試験は今回が初めての試みで、計画では、宇宙船は打ち上げからおよそ3分後にロケットから切り離されたあと、およそ90分後にアメリカのハワイ近くの太平洋上に着水する予定でした。

スターシップをめぐってはNASA=アメリカ航空宇宙局が、有人での月探査計画「アルテミス計画」に向けてスペースXと契約を結んでいるほか、実業家の前澤友作さんがこの宇宙船で月を周回する計画を進めています。

マスクCEO「多くを学んだ」

スペースXのイーロン・マスクCEOは打ち上げのあと、ツイッターで「数か月後の次の試験的な打ち上げに向けて多くを学んだ」と投稿しました。

また、スペースXはツイッターで「スターシップはロケットの分離の前に予定外の急速な分解を経験した。チームはデータをよく調べて、次の試験飛行に向けて取り組んでいく」と投稿しました。

その上で「こうした試験飛行では成功は学んだことからもたらされる。きょうの実験はスターシップの信頼性の向上につながる」としています。

「スターシップ」の特徴とこれまでの経緯

「スターシップ」はアメリカの民間企業「スペースX」が開発を進めている大型宇宙船です。
宇宙船は全長50メートルで、スペースXが開発した大型のロケット「スーパーヘビー」に搭載されて打ち上げられる設計で宇宙船とロケットを合わせた全長は120メートルです。

これは去年打ち上げられた、アメリカの月探査プロジェクト「アルテミス計画」の大型ロケット、SLS=「スペース・ローンチ・システム」をしのぐ大きさで、スペースXは「これまでに開発された打ち上げシステムの中で最もパワーがある」としています。
スターシップは月や火星への飛行も想定していて、最大で100人が搭乗でき、機体の姿勢を制御して、滑走路のない場所に垂直に着陸できることが特徴だとしています。

また、宇宙船とロケットは打ち上げ後、いずれも回収して再利用できるよう設計されているということです。

試作機の試験飛行はこれまでも繰り返し行われていて、このうち2020年12月と2021年2月には、着陸に失敗して機体が爆発したほか、2021年3月の試験飛行では、打ち上げ後、垂直の姿勢で着陸しましたが、およそ10分後に爆発していました。

2021年5月に行われた試験飛行では打ち上げたあと、姿勢の制御を行いながら機体を着陸させることに成功し、失敗を繰り返しながらも少しずつ改良を重ねてきました。
「スターシップ」を上空に打ち上げるだけでなく、地球を一周近く飛行させようという試みは今回が初めてでした。

スペースXは、今回の試験飛行でシミュレーションでは得られないさまざまなデータを取得することにしていて、今後の機体の改良につなげるとしています。

訪れた人たちは

アメリカ西部のシアトルから見に来たという男性は「鳥肌が立ちました。興奮しています。発射台で爆発しなかったことに感謝しています」と興奮気味に話していました。

またドイツから見に来たという男性は「カウントダウンが途中で止まり驚きました。今回の打ち上げは、人類がいまの時点で何ができるかを示していると思います。実際にこの宇宙船に人が乗って宇宙に行くにはもっともっと多くのことを学ばないといけないのかもしれません」と話していました。