新しい金融不安の形?世界同時並行下落を分析【経済コラム】

3月10日にアメリカで起きた突然の銀行破綻をきっかけに世界に広がった金融不安。日本でも銀行株が軒並み下落し、一日で株価が10%以上急落した銀行もありました。金融システムが比較的健全だとされていた日本でなぜ銀行株がここまで売り込まれたのか。その背景を取材しました。(経済部記者 斉藤光峻)

世界に広がった金融不安

3月10日、12日と相次いだアメリカの銀行破綻。これをきっかけに広がった金融不安は15日にはヨーロッパにも飛び火し、スイスの大手金融グループ、クレディ・スイスの経営問題が市場の不安を増幅させました。

この間、世界の金融市場は大きく動揺し、東京株式市場では日経平均株価が3月13日に一時、500円以上下落。14日には700円以上、16日には500円以上、値下がりする場面もありました。

日米欧の銀行株の下落水準は

株価の下落を主導したのは銀行など金融関連の銘柄です。欧米では銀行株が急落し、日本でも規模の大小を問わず、銀行株が軒並み大きく値下がりしました。

それでは銀行株の値下がりはどの程度だったのか。主な銀行銘柄で構成されるアメリカ(KBWナスダック銀行株指数)、ヨーロッパ(ストックス欧州600銀行株指数)、日本(トピックス銀行業指数)の株価指数を見てみます。

アメリカの銀行破綻の前の3月9日の株価指数を100とすると、3月28日時点では、アメリカは15.9%、ヨーロッパは14.5%、そして日本は15.4%それぞれ下落したことになります。
この間のグラフをみると、日本の銀行株の下落率は、震源地にある欧米の銀行の株価の下落率と同じような水準で推移していることがわかります。

日本の銀行株が大きく値を下げた理由は

欧米の金融不安が広がる中、政府・日銀の関係者は、日本の金融システムは安定しており、金融機関に及ぼす影響は限定的だという見方を示しています。

それでは、金融不安の震源地である欧米から遠く離れ、影響も限定的だとされる日本でなぜ銀行株がここまで大きく売り込まれたのか。その理由について市場関係者が口をそろえたのが、金利が上昇から低下に転じたことです。

去年12月、日銀は大規模な金融緩和策を修正し、長期金利の変動幅の上限を0.5%程度に引き上げました。これを受けて長期金利が上昇。金利の上昇が銀行の収益を押し上げるという見方から銀行株は値上がりを続けます。

海外の投資家や国内の機関投資家の中には、日銀がさらに金融緩和策を修正し、金利が上昇するとの思惑から、「日本国債売り、銀行株買い」のスタンスを強めていたところもありました。

ところがアメリカの銀行が突然、経営破綻し、金融不安が広がったことで長期金利が急低下。投資家の姿勢は、「日本国債買い、銀行株売り」に転じることになりました。つまり株高が続いた反動の大きさが、急激な株価の低下につながったという見方です。

もう1つは、世界の銀行株が同時並行的に下落するという今回の姿こそ、新しい金融不安の形ではないかという見方です。
丸紅経済研究所 今村卓 所長
「今回の金融不安は、銀行の取り付け騒ぎがきっかけとなったが、これだけをみると過去の銀行破綻と比べて新しいことが起きたわけではない。ただ、SNSなどであっという間に情報が拡散し、スマホでの金融取引も当たり前になった今の時代、金融機関が経営破綻に陥るまでの速さ、金融不安が世界に広がるスピードはこれまでとは全く異なっている。金融不安の増幅の度合い、世界に波及する”波”の大きさもこれまで以上に大きくなる可能性もある。今回は日本への直接的な影響は限られたが、金融不安の波がさらに大きくなれば、日本に影響が及ぶおそれもあることも想定しておくべきではないか」

銀行株の急落から何を読み解く

クレディ・スイスは、スイスの金融当局の関与のもと、同じスイスの金融最大手、UBSによる買収という形で救済されることが決まりました。

これと歩調を合わせて日米欧の6つの中央銀行が協調して、市場へのドル資金の供給を拡充すると発表。こうした異例の対応によって市場の動揺はひとまず収まった形となっています。

“景気敏感株”とも呼ばれる銀行株。

その突然の急落から何を読み解けばよいのか。世界経済や金融機関の動向をにらみながら、引き続き銀行株の動きに注目していきたいと思います。

注目予定

来週は3日に日銀の短観=企業短期経済観測調査が公表されます。民間の予測では、大企業・製造業の景気判断が5期連続で悪化するという見方が多くなっていますが、海外経済の減速や仕入れコストの増加などの懸念材料が企業の景況感にどう影響するのか注目されます。

また来週はアメリカの雇用関連の経済指標の発表が相次ぎ、7日には雇用統計が発表されます。物価高の要因となっている人手不足の問題が統計ではどのような形であらわれるのか注目です。