【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(29日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる29日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシア報道官 侵攻は長期化するという認識を示す

ロシア大統領府のペスコフ報道官は29日、ウクライナへの軍事侵攻の見通しについて、記者団から質問されたのに対し「敵対する国や非友好的な国々との対決、われわれの国に対するハイブリッド戦争など、広い意味の戦争でいえば、長引くに違いない。われわれは大統領を中心に結束する必要がある」と述べ、欧米との対立が深まる中、侵攻は長期化するという認識を示しました。

また、ペスコフ報道官は、ウクライナへの軍事侵攻は多くのロシア国民が支持していると主張し「最も重要なことは、ロシアの新しい地域の人々の安全を確保し、ロシアの安全を確保することだ」と述べ、軍事侵攻を続ける姿勢を強調しました。

ウクライナ 住宅・インフラ被害「総額1438億ドル」

首都キーウにある経済大学はウクライナのインフラ被害などの状況をまとめ、今月22日発表しました。

それによりますと、軍事侵攻が始まって1年がたった先月までにウクライナで確認された住宅や道路などのインフラの被害総額は推定で1438億ドル、日本円にして18兆円以上になるということです。

このうち最も被害が大きいのは住宅で、この1年で15万棟以上の住宅やアパートなどが破壊され被害額は536億ドル、日本円にしておよそ7兆円に上るということです。

また、破壊された道路は合わせて2万5000キロメートル以上となったほか、344か所の橋などが破壊され、道路や橋などの被害額は362億ドル、日本円にして4兆円を上回るとしています。

「戦略ミサイル軍部隊が軍事演習開始」ロシア国防省

ロシア国防省は29日、シベリアのノボシビルスクなどの戦略ミサイル軍の部隊が軍事演習を開始したと発表しました。

核兵器の搭載が可能なICBM「ヤルス」の運用を確認する訓練が行われるとしていて、3000人以上の兵士が3つの地域で演習を行う予定だということです。

ヤルスは射程が1万キロを超え、アメリカのミサイル防衛に対抗する目的で開発したとされ、アメリカなどを念頭に核戦力を誇示する思惑があるとみられます。

「米が責任を押しつけている」ロシア外務省次官

アメリカ政府高官が28日、ロシアとの核軍縮条約「新START」について、戦略核兵器についての情報提供を停止することを決めたと明らかにした事に対し、ロシア外務省のリャプコフ次官は29日、国営のロシア通信に対し「アメリカが責任をロシアに押しつけている」などと批判しました。

ロシアが欧米側へのけん制を強める中、米ロ間の核軍縮への影響も懸念されています。

来月開催のロシア・ベラルーシ会合 戦術核兵器の配備も協議か

プーチン大統領は来月6日にベラルーシのルカシェンコ大統領と両国の連携強化に向けた会合を開催する予定です。

これについてロシア大統領府のペスコフ報道官は28日「安全保障の問題も話し合うだろう」と説明し、戦術核兵器の配備に向けても意見が交わされる可能性があります。

ベラルーシ ロシア戦術核の配備 受け入れ表明

ロシアのプーチン大統領は、25日に公開されたインタビューの中で、同盟関係にあるベラルーシに戦術核兵器を配備する方針を明らかにしました。

ベラルーシ外務省も28日、ロシア国営タス通信の質問に答える形で声明を発表し、戦術核兵器は自国の安全保障と防衛力の強化のために必要で、NPT=核拡散防止条約に違反するものではないと主張し、配備の受け入れを表明しました。

アメリカ 戦略核兵器の情報提供を停止 ロシアに対抗

アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官はロシアとの核軍縮条約「新START」について、ロシアが条約を順守していないとして、戦略核兵器についての情報提供を停止することを決めたと明らかにしました。

アメリカとロシアの核軍縮条約「新START」をめぐっては、プーチン大統領が先月、一方的に履行を停止すると発表し、アメリカのバイデン大統領が「大きな過ちだ」と批判しました。
これについてアメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は28日、記者団に対し「ロシアが条約を順守することを拒否したため、われわれも同じようにすることを決定した」と述べて、戦略核兵器についての情報提供を停止することを決めたと明らかにしました。

カービー調整官は条約について、両国だけでなく世界にとって重要なものだとしたうえで「われわれは再び情報を提供することを望んでいるが、そのためにはロシアが同じように考えることが必要だ」と述べてロシアが再び条約を履行することが必要だと強調しました。
アメリカとロシアの間では条約に従ってこれまで年に2回、それぞれが配備している核弾頭の数や位置などについて情報を交換していて、条約の履行が停止されたことを受けて専門家などからは両国の核軍縮への影響を懸念する声も出ています。

“ベラルーシに戦術核”で国連安保理の緊急会合を開催へ

ロシアのプーチン大統領が隣国ベラルーシに戦術核兵器を配備すると明らかにしたことについて、国連の安全保障理事会で対応を協議する緊急会合が今月31日に開催されることになりました。

プーチン大統領の発言に対してウクライナ外務省は「プーチン政権による新たな挑発行為だ」などと非難し、国連安保理の緊急会合の開催を要請していました。

ロシア国防相「特定の弾薬の製造を7~8倍に増やす」

ロシアのショイグ国防相は、ロシア中部の2つの州の兵器工場を訪れ、弾薬などを製造する様子を視察しました。

ショイグ国防相は「特定の弾薬の製造を年末までに7倍から8倍にまで増やす」と述べたうえで、兵器の増産に取り組むよう指示したということで、欧米の支援に対抗し、軍事侵攻を続ける姿勢を鮮明にしています。

ゼレンスキー大統領 ロシア国境に近いスムイ州を訪問

ウクライナ各地を相次いで視察しているゼレンスキー大統領は、北東部スムイ州を訪問しました。

ロシアとの国境に近いスムイ州の街は、ロシア軍の侵攻を受けた後、ウクライナ側が1年前に奪還した地域です。
ゼレンスキー大統領は「われわれの国のために戦ったすべての人々に敬意を表したい。どんな独裁者であっても、ウクライナのロシアとの国境は力で消し去ることはできない」と述べ、兵士たちを激励しました。

露報道官 戦車供与に踏み切ったドイツなどに反発

ロシア軍の侵攻に対抗するため欧米側はウクライナへの軍事支援を加速していて、27日にはドイツやイギリスの主力戦車がウクライナに到着したほか、ポルトガル国防省も「レオパルト2」3両がウクライナに引き渡されたと明らかにしました。

これに対し、ロシア大統領府のペスコフ報道官は「紛争への関与を直接的、間接的に強めている」と述べ、戦車の供与に踏み切ったドイツなどに対し、反発しています。

米国務長官 中国の停戦呼びかけに強い警戒感

アメリカのブリンケン国務長官はヨーロッパの国や日本などとともに、ウクライナへの支援について話し合う閣僚級の会合を開きました。

この中でブリンケン長官は、中国が先月発表したロシアとウクライナに対話と停戦を呼びかける文書を念頭に「ロシア軍が休息し、再び攻撃できるようになる可能性がある」と述べ、ロシア軍の部隊の撤退を含まない停戦の呼びかけに強い警戒感を示しました。
また、ウクライナのクレバ外相は「ロシアによる侵略の停止とウクライナの領土保全の回復は、和平の必須条件だ」と述べるとともに、ロシア軍の撤退の重要性を強調しました。
一方、林外務大臣はビデオメッセージを送り「ロシアによる侵略を一刻も早く終わらせるため、日本はG7=主要7か国の議長国としてG7の結束を維持し、ロシアへの厳しい制裁とウクライナへの確固たる支援を推し進めていく」と述べました。

IOC ロシア・ベラルーシ選手復帰条件勧告『中立』の個人に限る

IOCは28日、スイスで理事会を開き、ウクライナへの軍事侵攻を理由に国際大会から除外されているロシアとその同盟関係にあるベラルーシの選手の復帰の是非などについて話し合いました。

その結果、両国の復帰を認める条件について、国や地域を代表しない『中立』の立場と認められる個人の選手に限るとした上で、団体競技での出場や、軍の関係者や、軍事侵攻を積極的に支持している選手は出場を認めないなどとする勧告を国際競技連盟に行ったと発表しました。

一方、来年のパリオリンピックへの両国の出場については「適切な時期に決定を下す」としています。

IOCのバッハ会長は会見で「軍事侵攻は改めて強く非難するが、ロシアとベラルーシの出場を一律に禁止することは人権侵害に当たり継続することはできない」と述べました。

両国の国際大会への復帰をめぐっては反対の声があがっていて、ウクライナのオリンピック委員会は、軍事侵攻が終わる前に復帰した場合、パリ大会をボイコットする可能性を検討するとしているほか、アメリカや日本など34か国は共同声明に署名し、IOCが復帰の条件とする『中立』の定義を明確にするよう求めています。