“再生医療を患者に”保険活用など課題を考えるシンポジウム

体のさまざまな組織や細胞を作り出して病気を治療する「再生医療」を、早期に患者に届けるうえでの課題について話し合うシンポジウムが京都市で開かれ、普及のためには、民間の医療保険を活用した新たな診療の仕組みが必要だといった議論が交わされました。

このシンポジウムは、京都市で開かれている「日本再生医療学会」の一環として企画されました。

この中で、iPS細胞から作った網膜の組織を重い目の病気の患者に移植する世界初の臨床研究を主導した高橋政代医師は、再生医療は患者にあわせて細胞を作り、移植する必要があることなどから「一般の薬と違い、細胞を製造するだけでは治療にならず、普及へ大きな溝がある」と現状を述べました。

そのうえで、高齢化で保険財政がひっ迫する中、公的な医療保険だけで高度な再生医療を患者に届けるのは難しいとして「高額な治療費を補償する民間保険を活用することが必要だ」と述べました。
これに対し、軟骨細胞を移植してひざを治療する臨床研究を進める東海大学の佐藤正人教授は「がんの治療では公的な保険が効かない薬の自己負担分を補償する民間保険がある。再生医療の分野にも広げるべきだが、効果が確認されていない再生医療が横行している現実もあるので、何らかの線引きが必要だ」と指摘しました。

シンポジウムのあと高橋医師は「有力な治療法があるのに患者に届けられないと悩む医師や研究者は数多くいる。患者に早く治療を届ける仕組み作りを進めたい」と話していました。