ウクライナにスロバキアがNATO加盟国として初の戦闘機供与

ウクライナの隣国スロバキアは、NATO=北大西洋条約機構の加盟国として初めて、ウクライナに戦闘機を供与しました。ロシアの軍事侵攻に対して徹底抗戦を続けるウクライナへの軍事支援が相次いでいます。

ウクライナ東部ドネツク州の地元当局は24日、激戦地バフムトからおよそ20キロ西にあるコスチャンチニウカで、ロシア軍によるミサイル攻撃があり、避難施設に着弾して、バフムトからの避難民などあわせて3人が死亡したと、SNSで明らかにしました。

バフムトをめぐって、ウクライナ陸軍の現地司令官は23日に「ロシアの主力戦力になっている民間軍事会社ワグネルは力が尽きつつある」とSNSで指摘し、領土奪還に向けた反転攻勢に乗り出すことを強調しました。

こうした中、ウクライナの西の隣国スロバキアは23日、軍事支援の一環で、旧ソビエト製のミグ29戦闘機4機をウクライナに引き渡したことを明らかにしました。

ウクライナ空軍によりますと、戦闘機を実際に供与したのは、NATOの加盟国としてはスロバキアが初めてだということです。

ポーランドもすでに同じ戦闘機を供与する方針を表明しているほか、EU=ヨーロッパ連合は23日、今後1年間で100万発の弾薬を供与する支援策を承認していて、欧米各国の軍事支援が相次いでいます。

一方、ウクライナでクリミア問題を統括する政権高官は24日、SNSで「戦争の終結はクリミア解放から始まる」という文言が、ことし中に政府の戦略に明記される方針を明らかにしました。

ロシアが9年前に一方的に併合したクリミアをめぐっては、プーチン大統領が今月18日に訪問し、ロシア側の支配を誇示しています。

ロシアの安全保障会議のメドベージェフ副議長は、24日に公開した国営メディアとのインタビューで、ウクライナがクリミア奪還に乗り出せば「核抑止力の原則に規定されたものを含む、あらゆる防衛手段を使う根拠になる」と述べ、再び核戦力をちらつかせて威嚇しました。

防衛研究所 高橋杉雄室長 “戦闘機は最強の防空兵器”

スロバキアがウクライナに対し戦闘機の供与を行ったことについて、防衛省防衛研究所の高橋杉雄防衛政策研究室長は、「戦闘機は最強の防空兵器なので一番期待できるのは防空能力の強化だ。ロシアの巡航ミサイルの迎撃に使うことが十分に考えられ、これまで以上に巡航ミサイルの撃墜率を高めることが期待できる」としています。

一方で、今回の供与は数が少なく、直ちに戦況に大きな変化をもたらすものではないとしたうえで「戦闘機の供与はこれまでなかったので、今回その口火を切ったことで、今後、アメリカのF16など、さらなる戦闘機の供与につながればいいとのねらいもあるのではないか」と指摘しています。

また、戦闘機に加え、ヨーロッパ諸国から続々と供与されている戦車や弾薬などが戦況にどのような影響を与えるかについては、高橋室長は「準備が整った兵器を今、バフムトなど東部で行われている消耗戦に穴埋め的に投入してしまえば、戦況は大きく変わらないだろう。例えば戦車であれば、100両近くをまとめて1か所に投入できる状況になるまでがまんすれば戦況が大きく変わる可能性が出てくる」と分析しています。

そのうえで「戦況に大きな変化をもたらすとすれば、4月の末や5月ごろだろう。今後1か月や2か月という長いタイムフレームで考えたときにウクライナ側の反撃能力が強化されると考えられる」としています。

このほか、イギリスがウクライナに劣化ウラン弾の供与を決めたことに対し、ロシアが強く反発していることについては「劣化ウラン弾というのは弾の中心部分の芯に劣化ウランという放射性の落ちたウランを使っているだけで、核爆発は一切起こらない。ロシアの主張は全くのうそで言いがかりだ」と指摘しました。

EU「強力な支援を必要なかぎり継続」

EU=ヨーロッパ連合は、23日に開いたウクライナへの支援について話し合う首脳会議で、今後1年間で100万発の弾薬をウクライナに供与する支援策を承認しました。

迅速な供与のために各国が命中精度が高い、155ミリ口径の砲弾を共同で調達し、ウクライナ側の要望があればミサイルも供与するなどとしています。

そのうえで「EUは断固としてウクライナの側に立ち、政治、経済、軍事、財政、人道支援の分野で強力な支援を必要なかぎり継続する」として、ウクライナへの支援継続を確認しました。