物価高をどうしのぐ?いつまで続く? 専門家のQ&Aも詳しく

「4月は再び値上げラッシュになる」
物価高が依然として続くいま、厳しい見通しが。

そんな中、新生活を迎える学生は“おさがり”で出費を抑え、買い物客の間では新たな“シェア”サービスが広がっています。

この物価高をどうしのぐか、いつまで続くのか。専門家のQ&Aとともに詳しくお伝えします。

新入生を出迎えるのは…おさがり家電!?

埼玉県の日本工業大学では、4月に向けて家電や家具が集められていました。

学生たちがボランティアで、卒業生からいらなくなった家電や家具を集めて新入生に譲ろうという取り組みです。
集まったのは冷蔵庫や洗濯機などおよそ140点。ボランティアの学生が、ぞうきんや綿棒でひとつひとつきれいにしていました。

ことしは物価高の影響で新たな生活を始めるための費用もこれまでよりも多くなるとみられ、新入生のニーズも例年以上に高いとみています。
卒業生
「自分も1年生の時に扇風機を無料でもらえてとても助かったので、卒業するときは今度は自分が譲ろうと思っていました」
委員会リーダー 赤澤颯さん
「毎年、新入生だけではなく保護者も含めて、とてもありたがい取り組みだという声を聞きます。新入生に喜んでもらい、経済的な負担も少しでも減らすことができればと思っています」

【4月 新生活は値上げラッシュに】

新入生の負担を減らそうという大学の取り組み。しかし、その新入生が入学する4月は、再び値上げラッシュになるというのです。

「帝国データバンク」の調査によりますと、4月はウインナー製品のほか、牛乳やバター、ヨーグルト製品などで値上げが相次ぎ、その品目は4892に上ります。
品目の数は「値上げラッシュ」となった去年10月や先月に次ぐ多さとなり、再び値上げラッシュになるとしています。

また、ことしすでに値上げされたり値上げが予定されたりしている食品や飲料は、再値上げや価格を変えずに内容量を減らす「実質値上げ」を含めて累計で1万5813品目となり、値上げのペースは去年より加速しています。

信用調査会社では、コスト増加分を価格に十分転嫁できていない企業が多く当面は値上げの動きは続くため、家計の負担はさらに増えると分析しています。

【物価 賃金は】

消費者物価指数 上昇率鈍化も依然として高水準

家庭で消費するモノやサービスの値動きをみるの消費者物価指数です。天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が、先月・2月は去年の同じ月より3.1%上昇しました。

政府による負担軽減策で電気代の上昇が抑えられたことなどで上昇率は1年1か月ぶりに鈍化しました。

しかし、食料品の相次ぐ値上げで「生鮮食品を除く食料」は7.8%上昇していて上昇率は1976年7月以来46年7か月ぶりの高い水準が続いています。

実質賃金はマイナス続く

一方の実質賃金です。ことし1月は速報値で去年の同じ月と比べて4.1%減少し、10か月連続でマイナスとなりました。

下げ幅は、消費税率が5%から8%に引き上げられた直後の2014年5月以来8年8か月ぶりの大きさです。

ことしの春闘は物価の上昇に見合う賃上げが大きな焦点となり、大手企業を中心に労働組合の要求どおりの満額回答が相次ぎ、賃上げに向けた機運は例年以上に高くなっています。

ただ、民間シンクタンク各社は賃金の伸びが物価の上昇を上回るのは難しく、当面は実質賃金がマイナスの状況が続くと分析しています。

【新たな節約サービス “シェア買い”】

先行きの見えない厳しい物価高を背景に、新たなサービスが誕生しています。

知り合いなどに食料品や生活用品の共同購入を呼びかけ安い価格で購入できる「シェア買い」と呼ばれるサービスの利用が増えています。

都内で開かれた、節約をテーマにしたイベントが都内で開かれ主婦などおよそ40人が参加しました。

「シェア買い」と呼ばれるサービスを提供する企業のブースには参加者がかわるがわる訪れ、節約につながる仕組みについて説明を受けていました。

“シェア買い” その仕組みは

「シェア買い」とはアプリに出品されている食料品や生活用品の共同購入を知り合いなどにSNSで呼びかけ設定された人数が集まれば定価よりも安い価格で購入できるというサービスです。

商品の情報が共同購入の呼びかけで広がるため、アプリに商品を出品する企業が宣伝費用をかけなくなる分、安く提供できる仕組みだということです。

定価よりも10%ほど安く購入できるケースが多いということです。

会社によりますと物価高で節約意識が高まっていることを背景にサービスの利用が増えていて、先月までのアプリのダウンロード数は138万人と、この1年で2倍以上になったということです。
「カウシェ」 前本航太COO
「生活必需品を少しでも安く購入したいという人が増えている。物価高が続く中、少しでも節約につながるサービスを今後も提供したい」

【専門家に聞く】

今後の見通しについてみずほリサーチ&テクノロジーズの主席エコノミスト酒井才介さんに聞きました。

Q.消費者物価指数の上昇率は今回鈍化したが、どうみる?

A.今回は政府による物価高対策によって1ポイント程度、伸び率が下押しされた。

この影響を除けば1月分とほぼ同じ上昇率になるため、実勢で見た物価上昇の動きは弱まっていない。

いまも食料品を中心に価格転嫁の動きが続いている。

Q.今後の上昇率はどう推移していくか?

A.ことし1月分をピークに鈍化していくが、食料品では3月以降も値上げの動きがすでに明らかになっていて、ことし前半までは上昇率が3%前後で推移していくのではないかとみている。

今後も日用品を中心に価格上昇が続くため、当面は家計の負担感の解消は見込みがたいということになる。

Q.いま求められていることは?

A.物価高によって消費者は節約志向を強め、個人消費の回復ペースが緩やかになることによって経済活動全体の回復ペースも下押しされてしまうことが懸念される。

個人消費を後押しする賃上げの一層の促進が必要になってくる。

ことしの春闘では事前の予想を上回る高い賃上げ率が見込まれているが、来年以降もこの機運を継続できるかが重要だ。

いまは物価、賃金、消費がともに上がっていく、経済の好循環につなげることができるのか試されている重要な局面だ。