東芝が今回の提案を受け入れた大きな目的は、アクティビストと呼ばれる海外の株主の“排除”でした。
東芝の株主のうち、「もの言う株主」と言われるアクティビストは、全体の25%程度を占めているとみられます。
東芝は、このアクティビストからのたび重なる要求が経営の混乱を生み出していたとしてきました。
東芝が目指す株式の非上場化は、「経営陣とは意見が異なる株主をいわば排除する」という姿勢にも映ります。
ただ、一般的に上場企業に対しては、経営姿勢の1つとして株主への還元が求められています。
多くの企業がアクティビストからさまざまな要求を受ける中で、経営陣が時には意見を受け入れ、時には対じしながら、いかに株主との間でコミュニケーションを取っていくかも経営手腕が問われる要素となっています。
TOB=株式の公開買い付けにあたって、アクティビストを含む株主からどこまで賛同を得られるかが焦点となります。
東芝「非上場化」へ 投資ファンドの提案受け入れを正式に発表
東芝は、株式を非上場化して経営の混乱の解消を目指す投資ファンドの提案を受け入れることを正式に発表しました。非上場化は、アクティビストと呼ばれる海外の株主を事実上排除することが目的で、東芝の経営問題は新たな段階を迎えます。
この提案は、投資ファンドの日本産業パートナーズが東芝の株式を買い取り、非上場化するもので、株式を買い取る資金として国内の企業17社が出資するほか、主力銀行も融資を行います。
東芝は、23日に開かれた取締役会でこの提案を受け入れることを決議しました。
株式の買い取りに必要な資金はおよそ1兆9900億円に上る見通しで、ファンド側は早ければことし7月下旬にもTOB=株式の公開買い付けを開始するとしています。
東芝は、2015年に不正会計問題が発覚して以降、相次ぐ社長の辞任や、財務基盤の立て直しを目的にアクティビストと呼ばれる海外の投資ファンドからの出資を受け入れるなどおよそ8年にわたって経営の混乱が続いていました。
東芝が目指す非上場化は、このアクティビストを事実上排除することが目的で、発表の中で東芝は、「当社の本来の企業価値を発揮するには安定的な株主が望ましい」としています。
経営の自由度が上がる一方、経営陣と株主の関係の在り方が改めて問われることになり、今後は、非上場化のための巨額資金に伴う財務の負担や、成長投資の資金の確保が課題となります。
アクティビスト“排除”の是非は
日本産業パートナーズの提案 今後の焦点は
日本産業パートナーズの提案は、いわば“日本連合”という大きな特徴があります。
東芝は、原子力事業や防衛事業など国の重要政策に関わる複数の事業を手がけていることから、外国為替法に基づいて国が外資による買収などを規制する対象となっています。
日本産業パートナーズの提案では、買収資金の調達のために日本国内の17社の企業から出資を募り、“日本連合”の形となっていることでこの規制の対象にはならないとみられています。
ただ、それぞれの企業としては、出資の前提として東芝の今後の成長戦略の実現を求めています。
さらに、巨額の融資に応じる主力銀行側は、経営の監視を厳しく求める一方、業績が一定以上悪化した場合は東芝の事業や資産の売却も求めています。
“日本連合”として多くの国内企業による参加を受け入れただけに、東芝は新たな経営体制のもとで具体的な成長戦略をいかに打ち出せるかが問われています。
東芝は、原子力事業や防衛事業など国の重要政策に関わる複数の事業を手がけていることから、外国為替法に基づいて国が外資による買収などを規制する対象となっています。
日本産業パートナーズの提案では、買収資金の調達のために日本国内の17社の企業から出資を募り、“日本連合”の形となっていることでこの規制の対象にはならないとみられています。
ただ、それぞれの企業としては、出資の前提として東芝の今後の成長戦略の実現を求めています。
さらに、巨額の融資に応じる主力銀行側は、経営の監視を厳しく求める一方、業績が一定以上悪化した場合は東芝の事業や資産の売却も求めています。
“日本連合”として多くの国内企業による参加を受け入れただけに、東芝は新たな経営体制のもとで具体的な成長戦略をいかに打ち出せるかが問われています。
東芝 8年にわたる経営の混乱
東芝の経営の混乱は、8年にわたって続いています。
その契機となったのは、2015年に発覚した不正会計問題です。
歴代の社長らは、「チャレンジ」と称して、売り上げや利益の目標を必ず達成するよう指示。
部下たちは強いプレッシャーに耐えきれず、不正な会計処理につながっていたことが明らかになり、長年にわたる企業風土や組織体質が問題視されました。
不正会計問題を受けて、歴代の社長が相次いで辞任。
経営の立て直しに向け、東芝は“虎の子”の医療事業をキヤノンに売却したほか、白物家電やテレビなど主力事業を手放しました。
さらに、2017年には傘下のアメリカの原子力発電プラントのメーカー、ウェスチングハウスが巨額の損失を出して経営破綻し、東芝はこの年度の決算で日本の製造業で当時最大となる9600億円余りの最終赤字を計上。
債務超過に陥った東芝は、今度は稼ぎ頭だった半導体子会社、東芝メモリの売却に踏み切ろうとします。
しかし、売却が完了する前に、再び債務超過のおそれが出てきます。
上場の廃止の危機が迫る中、急務となった財務基盤の立て直し。
その時、頼ったのがアクティビストと呼ばれる海外の投資ファンドでした。
2017年に60社に上るファンドから総額6000億円の出資を受け、上場廃止の危機を免れたのです。
ところが、そのアクティビストの存在が東芝のその後の経営の混乱につながります。
経営陣とアクティビストの対立が表面化したのが2020年7月の株主総会。
このうち、旧村上ファンドの関係者が設立したシンガポールに拠点を置く投資ファンド「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」が、みずから選んだ社外取締役を増やすよう求める株主提案を行いました。
ファンド側の提案は否決されたもの、経営陣とアクティビストの対立が深まっていきます。
さらに、エフィッシモは、2020年7月の株主総会をめぐって、みずからの提案を妨げるために会社と経済産業省が連携し、一部の株主に不当な影響を与えたと指摘。
2021年3月に開いた臨時株主総会で、エフィッシモが調査のための弁護士の選任を提案しました。
この提案に対し、会社側が反対を呼びかけたにもかかわらず賛成多数で可決され、その後、選任された弁護士はエフィッシモの指摘を認める異例の事態となりました。
こうした中、2021年4月には、イギリスの投資ファンド「CVCキャピタル・パートナーズ」が株式を非上場化する買収の提案を行います。
東芝にとっては、アクティビストの排除につながるこの提案に対して、当時の車谷暢昭社長は、検討する姿勢を示しました。
しかし、社外取締役の間からは、当時の車谷社長がかつてCVCの日本法人のトップを務めていたことで、提案の背景が不透明だという批判が高まります。
結局、この買収提案から1週間後、車谷社長は辞任に追い込まれました。
ここから東芝の経営はさらに迷走します。
その後、アクティビストの間から非上場化の要求が相次ぎます。
これに対して、東芝社内では非上場化には否定的な意見が多く、2021年11月、社会インフラや半導体などの事業を再編し、3つの会社に分割するという異例の方針を打ち出します。
上場を維持したまま企業価値を高めるのが目的でした。
しかし、ここでもアクティビストの反発で3か月後に方針を転換。
次に東芝が示したのは、半導体事業を切り離して上場させたうえで、2分割にする方針でしたが、これにもアクティビストが反発し、結局、2022年3月の臨時株主総会で否決されます。
東芝は、対立が深まるアクティビストの“排除”に動き、2022年4月、会社の非上場化も視野に経営の再編策を外部から募集するという手段を選んだのです。
募集に対して、官民ファンドの産業革新投資機構を含む10の提案が寄せられ、最終的に東芝が選んだのは非上場化を盛り込んだ日本産業パートナーズの提案でした。
その契機となったのは、2015年に発覚した不正会計問題です。
歴代の社長らは、「チャレンジ」と称して、売り上げや利益の目標を必ず達成するよう指示。
部下たちは強いプレッシャーに耐えきれず、不正な会計処理につながっていたことが明らかになり、長年にわたる企業風土や組織体質が問題視されました。
不正会計問題を受けて、歴代の社長が相次いで辞任。
経営の立て直しに向け、東芝は“虎の子”の医療事業をキヤノンに売却したほか、白物家電やテレビなど主力事業を手放しました。
さらに、2017年には傘下のアメリカの原子力発電プラントのメーカー、ウェスチングハウスが巨額の損失を出して経営破綻し、東芝はこの年度の決算で日本の製造業で当時最大となる9600億円余りの最終赤字を計上。
債務超過に陥った東芝は、今度は稼ぎ頭だった半導体子会社、東芝メモリの売却に踏み切ろうとします。
しかし、売却が完了する前に、再び債務超過のおそれが出てきます。
上場の廃止の危機が迫る中、急務となった財務基盤の立て直し。
その時、頼ったのがアクティビストと呼ばれる海外の投資ファンドでした。
2017年に60社に上るファンドから総額6000億円の出資を受け、上場廃止の危機を免れたのです。
ところが、そのアクティビストの存在が東芝のその後の経営の混乱につながります。
経営陣とアクティビストの対立が表面化したのが2020年7月の株主総会。
このうち、旧村上ファンドの関係者が設立したシンガポールに拠点を置く投資ファンド「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」が、みずから選んだ社外取締役を増やすよう求める株主提案を行いました。
ファンド側の提案は否決されたもの、経営陣とアクティビストの対立が深まっていきます。
さらに、エフィッシモは、2020年7月の株主総会をめぐって、みずからの提案を妨げるために会社と経済産業省が連携し、一部の株主に不当な影響を与えたと指摘。
2021年3月に開いた臨時株主総会で、エフィッシモが調査のための弁護士の選任を提案しました。
この提案に対し、会社側が反対を呼びかけたにもかかわらず賛成多数で可決され、その後、選任された弁護士はエフィッシモの指摘を認める異例の事態となりました。
こうした中、2021年4月には、イギリスの投資ファンド「CVCキャピタル・パートナーズ」が株式を非上場化する買収の提案を行います。
東芝にとっては、アクティビストの排除につながるこの提案に対して、当時の車谷暢昭社長は、検討する姿勢を示しました。
しかし、社外取締役の間からは、当時の車谷社長がかつてCVCの日本法人のトップを務めていたことで、提案の背景が不透明だという批判が高まります。
結局、この買収提案から1週間後、車谷社長は辞任に追い込まれました。
ここから東芝の経営はさらに迷走します。
その後、アクティビストの間から非上場化の要求が相次ぎます。
これに対して、東芝社内では非上場化には否定的な意見が多く、2021年11月、社会インフラや半導体などの事業を再編し、3つの会社に分割するという異例の方針を打ち出します。
上場を維持したまま企業価値を高めるのが目的でした。
しかし、ここでもアクティビストの反発で3か月後に方針を転換。
次に東芝が示したのは、半導体事業を切り離して上場させたうえで、2分割にする方針でしたが、これにもアクティビストが反発し、結局、2022年3月の臨時株主総会で否決されます。
東芝は、対立が深まるアクティビストの“排除”に動き、2022年4月、会社の非上場化も視野に経営の再編策を外部から募集するという手段を選んだのです。
募集に対して、官民ファンドの産業革新投資機構を含む10の提案が寄せられ、最終的に東芝が選んだのは非上場化を盛り込んだ日本産業パートナーズの提案でした。