アメリカでは2つの銀行が相次いで破綻し、このうちシリコンバレーバンクはFRBの急速な利上げによって保有する債券の価格が下落し、財務の悪化につながったことが破綻の要因とみられています。
このため市場では金融システムへの影響を見極めるため、利上げをいったん停止するという見方も出ていました。
金融システム不安がくすぶるなかでもインフレを抑えこむ決意を打ち出した形です。
アメリカ政府とFRBはこれまで金融システムの不安を払拭するため、預金の全額保護など異例の措置を相次いで打ち出し、「銀行システムは強固で健全だ」と繰り返し強調していました。
FRB 0.25%利上げを決定 インフレを抑えこむ決意打ち出す
アメリカで銀行破綻が相次ぐ中、中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会は21日から2日間開いた会合で、0.25%の利上げを決めました。金融システム不安がくすぶるなかでも、インフレを抑えこむ決意を打ち出した形です。
FRBは21日からの2日間、金融政策を決める会合を開きました。
声明では相次いだ銀行破綻について「アメリカの銀行システムは健全だ」としたうえで、「最近の動きは家計や企業の信用状況を厳しくし、経済活動や雇用、インフレに影響を与えるだろう」との文言が盛り込まれました。
そのうえで、これらの影響がどの程度になるかは不確実であり、引き続きインフレのリスクに注意深く対応する必要があるとして、政策金利を0.25%引き上げることを決めました。
これによって政策金利は4.75%から5%の幅となります。

パウエル議長「利上げ決定について、メンバーから力強い同意」

会合後の記者会見で、FRBのパウエル議長は相次いで銀行破綻が起きたことについて「この2週間、少数の銀行で深刻な問題が顕在化した。歴史は、個別の銀行問題を放置すれば、健全な銀行に対する信頼が損なわれ、銀行システム全体が脅かされることを証明している。こうした事態を受け、FRBは財務省などと協力して、断固とした行動を取った。これらの行動はすべての預金が安全であることを示す」と述べました。
さらに、記者から利上げの停止についてどの程度検討があったか問われたのに対し、「会合までの数日間、利上げ停止を検討した。しかし、利上げの決定について会合のメンバーから力強い同意があった。それはインフレと雇用情勢に関するデータが予想を上回る強さだったからだ。最近の出来事が起こるまでは、われわれは明らかに今後も利上げを継続する方向で進んでいた」と話しました。
さらに、記者から利上げの停止についてどの程度検討があったか問われたのに対し、「会合までの数日間、利上げ停止を検討した。しかし、利上げの決定について会合のメンバーから力強い同意があった。それはインフレと雇用情勢に関するデータが予想を上回る強さだったからだ。最近の出来事が起こるまでは、われわれは明らかに今後も利上げを継続する方向で進んでいた」と話しました。

そのうえで、「シリコンバレーバンクの経営は大失敗だった。この銀行は非常に急速に事業を拡大させ、流動性リスクと金利リスクにさらした上、そのリスクを回避することをしなかった。この銀行ではかつてないような急速で巨額の取り付けが起きた。私の関心は、ここで何が悪かったのか、問題を明らかにすることだ。2度とこのようなことが起こらないようにするため、どのような政策が適切かを見極め、実行する」と述べました。
また「シリコンバレーバンク」は▽保険で保護されない預金の割合や▽国債などの金利リスクを抱えた有価証券の保有量が異常に高く、アメリカの銀行システム全体の問題ではないと強調しました。
続けて「こうした事態が発生しないようにすることが銀行の審査の本質であり銀行への監督や規制を強化する必要があることは明らかだ」と述べました。
さらに「ここ2週間の出来事が家計や企業にとっていくらかの信用収縮をもたらし、それによって労働市場の需要やインフレを抑制する可能性があると見ている。このような信用収縮は利上げと同じ方向に作用する」と話しました。
記者から利上げはこれで終わりなのかと問われたのに対し、「そんなことはまったくない。必要であれば利上げを行うだろう。ただ、現状では信用状況が厳しくなっており、(利上げを行えば)マクロ経済や需要、労働市場、インフレに影響を与える可能性がある。その影響を注視しつつ、最終的に2%の物価目標までインフレ率を引き下げるために十分な引き締め策を実施する」と述べました。
また「シリコンバレーバンク」は▽保険で保護されない預金の割合や▽国債などの金利リスクを抱えた有価証券の保有量が異常に高く、アメリカの銀行システム全体の問題ではないと強調しました。
続けて「こうした事態が発生しないようにすることが銀行の審査の本質であり銀行への監督や規制を強化する必要があることは明らかだ」と述べました。
さらに「ここ2週間の出来事が家計や企業にとっていくらかの信用収縮をもたらし、それによって労働市場の需要やインフレを抑制する可能性があると見ている。このような信用収縮は利上げと同じ方向に作用する」と話しました。
記者から利上げはこれで終わりなのかと問われたのに対し、「そんなことはまったくない。必要であれば利上げを行うだろう。ただ、現状では信用状況が厳しくなっており、(利上げを行えば)マクロ経済や需要、労働市場、インフレに影響を与える可能性がある。その影響を注視しつつ、最終的に2%の物価目標までインフレ率を引き下げるために十分な引き締め策を実施する」と述べました。
NYダウ 500ドル超の大幅下落

22日のニューヨーク株式市場は、FRBが0.25%の利上げを決め、パウエル議長が会見で年内の利下げを否定する発言をしたことを受けて、金融の引き締めが続き景気が落ち込むことへの懸念から、取り引き終了にかけて売り注文が膨らむ展開となりました。
このため、ダウ平均株価の終値は前日に比べて530ドル49セント安い、3万2030ドル11セントでした。ダウ平均株価の値下がりは3営業日ぶりです。IT関連銘柄の多いナスダックの株価指数も1.6%の大幅な下落でした。
市場関係者は「FRBのパウエル議長の会見での発言を受けて、たとえ今後利上げは止まったとしても金融の引き締めは続くとの見方が広がった。また、金融システムへの懸念も根強く、景気が落ち込むと見て売り注文を出す投資家が多かった」と話しています。
このため、ダウ平均株価の終値は前日に比べて530ドル49セント安い、3万2030ドル11セントでした。ダウ平均株価の値下がりは3営業日ぶりです。IT関連銘柄の多いナスダックの株価指数も1.6%の大幅な下落でした。
市場関係者は「FRBのパウエル議長の会見での発言を受けて、たとえ今後利上げは止まったとしても金融の引き締めは続くとの見方が広がった。また、金融システムへの懸念も根強く、景気が落ち込むと見て売り注文を出す投資家が多かった」と話しています。
円高進む 一時131円台前半

22日のニューヨーク外国為替市場では円高が進み、円相場は一時、1ドル=131円台前半をつけてFRBの決定の発表前と比べて1円以上、値上がりしました。
0.25%の利上げは決まったものの、2023年の年末時点の政策金利の見通しは2022年12月時点の見通しと変わらず、利上げのペースは今後、加速しないのではないかとの見方から、日米の金利差の縮小が意識されてドルを売って円を買う動きが出ました。
0.25%の利上げは決まったものの、2023年の年末時点の政策金利の見通しは2022年12月時点の見通しと変わらず、利上げのペースは今後、加速しないのではないかとの見方から、日米の金利差の縮小が意識されてドルを売って円を買う動きが出ました。
FRB 参加者18人の政策金利の見通しを示す

今回の会合でFRBは、参加者18人による政策金利の見通しを示しました。
参加者がそれぞれ適切だと考える金利が点=ドットで示されることからドット・チャートと呼ばれ、市場ではその中央値がFRBが目指す金利水準だと受け止められています。
それによりますと、2023年末時点の金利水準の中央値は5.1%で、前回・2022年12月に示されていた予測と同じでした。今回、FRBが決めた利上げで政策金利は4.75%から5%の幅となるため、さらに0.25%の利上げが必要との見通しとなりました。
これは、政策金利の1回あたりの引き上げを0.25%とすると、あと1回の利上げが行われる想定です。
一方、2024年末時点の金利水準の中央値は4.3%と、前回の見通しで示された4.1%から引き上げられました。
また、2023年10月から12月のアメリカのGDP=国内総生産の予測は、2022年の同じ時期と比べた実質の伸び率で、2022年12月時点の見通しの0.5%から0.4%に引き下げられました。
参加者がそれぞれ適切だと考える金利が点=ドットで示されることからドット・チャートと呼ばれ、市場ではその中央値がFRBが目指す金利水準だと受け止められています。
それによりますと、2023年末時点の金利水準の中央値は5.1%で、前回・2022年12月に示されていた予測と同じでした。今回、FRBが決めた利上げで政策金利は4.75%から5%の幅となるため、さらに0.25%の利上げが必要との見通しとなりました。
これは、政策金利の1回あたりの引き上げを0.25%とすると、あと1回の利上げが行われる想定です。
一方、2024年末時点の金利水準の中央値は4.3%と、前回の見通しで示された4.1%から引き上げられました。
また、2023年10月から12月のアメリカのGDP=国内総生産の予測は、2022年の同じ時期と比べた実質の伸び率で、2022年12月時点の見通しの0.5%から0.4%に引き下げられました。
FRBの政策の経緯

新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年3月、金融市場の動揺を抑えるため、FRBは政策金利を0.5%、1%と相次いで緊急利下げを実施。ゼロ金利政策を導入しました。
2021年12月以降、消費者物価が7%以上となりインフレが加速したことから、FRBは2022年3月の会合で0.25%の利上げを決めてゼロ金利政策を解除。金融引き締めへと転換します。利上げは3年3か月ぶりでした。
さらに去年5月の会合で22年ぶりとなる0.5%の利上げと、「量的引き締め」と呼ばれる金融資産の圧縮に乗り出すことも決めました。しかし、その後もインフレに収束の兆しは見えず、6月以降、11月の会合まで4回連続で0.75%という大幅な利上げを決めました。
その後発表された消費者物価指数は、上昇率が前の月を下回る傾向が続いたことなどから、去年12月の会合では利上げ幅を縮小し、0.5%の利上げを決めました。
去年3月にゼロ金利政策を解除し利上げを開始して以降、利上げ幅の縮小は初めてでした。さらに1月31日と2月1日に開いた会合では0.25%に利上げ幅を縮小し、パウエル議長は「インフレが収まっていく過程が始まった」と言及しました。
2021年12月以降、消費者物価が7%以上となりインフレが加速したことから、FRBは2022年3月の会合で0.25%の利上げを決めてゼロ金利政策を解除。金融引き締めへと転換します。利上げは3年3か月ぶりでした。
さらに去年5月の会合で22年ぶりとなる0.5%の利上げと、「量的引き締め」と呼ばれる金融資産の圧縮に乗り出すことも決めました。しかし、その後もインフレに収束の兆しは見えず、6月以降、11月の会合まで4回連続で0.75%という大幅な利上げを決めました。
その後発表された消費者物価指数は、上昇率が前の月を下回る傾向が続いたことなどから、去年12月の会合では利上げ幅を縮小し、0.5%の利上げを決めました。
去年3月にゼロ金利政策を解除し利上げを開始して以降、利上げ幅の縮小は初めてでした。さらに1月31日と2月1日に開いた会合では0.25%に利上げ幅を縮小し、パウエル議長は「インフレが収まっていく過程が始まった」と言及しました。

しかし、その後ふたたびインフレの根強さを示す経済指標が相次ぎ、パウエル議長は3月7日の議会証言で今後の経済指標しだいで「利上げのペースを加速させる用意がある」と述べました。
市場ではインフレを抑え込むために0.5%の大幅な利上げに踏み切るという観測が高まりました。ただ3月10日と12日に銀行の破綻が相次いだことを受けて利上げが金融システムに及ぼす影響も検討することになり、大幅な利上げ観測は後退。0.25%の利上げを行うとの予測や利上げを停止するとの見方も出ていました。
市場ではインフレを抑え込むために0.5%の大幅な利上げに踏み切るという観測が高まりました。ただ3月10日と12日に銀行の破綻が相次いだことを受けて利上げが金融システムに及ぼす影響も検討することになり、大幅な利上げ観測は後退。0.25%の利上げを行うとの予測や利上げを停止するとの見方も出ていました。