想いよ 届け!アルプスの声援が復活~高校野球 センバツ

4年ぶりに声援が認められたセンバツ高校野球。応援団が集うアルプス席を取材すると「この時を待っていた」と言わんばかりの熱気が伝わってきます。温めてきたエール、大迫力の演奏、どこかふるさとを感じさせる独特の応援。グラウンドの選手たちと一緒になって、勝利を目指しています。

“想いよ、届け!”

(センバツ取材班 山内司・小舟祐輔・山中智里)

《この日のために…》

【東邦(愛知)】

「めっ声 出していこうぜ!」4年ぶりの優勝を狙う東邦高校のアルプス席では、野球部員の威勢のいいかけ声が響き渡っていました。
「めっ声」とは、東邦で代々受け継がれてきた「めっちゃ声を出す」という意味のことばです。

チームでは「めっ声 東邦」という新しい応援歌をつくりましたが、新型コロナウイルスの影響で完成から4年間、披露することができていませんでした。

ようやく訪れた披露の機会。

大きなエールが選手たちに送られていました。

【鳥取城北(鳥取)】

鳥取城北のアルプス席には、どこかパワフルさを感じさせるチアリーダーがいました。

13人のチアリーダーのうち、5人はなんと女子相撲部員なのです。
鳥取城北は相撲の強豪校で、横綱・照ノ富士や注目の新十両・落合など大相撲の力士を輩出してきました。女子の相撲部も去年7月に全日本女子相撲大会の一般団体で優勝しています。

ただ、大会では声を出しての応援ができず、もどかしい思いをしていました。そうしたなか、センバツ大会で、声を出しての応援も可能になったことを受けて、チアリーディング部の一員になることを買って出たのです。

「精一杯応援する」と臨んだキャプテンの中島雫さん。

振り付けの中には、相撲の“突っ張り”のような動きを組み込み、スタンドを盛り上げていました。

チームがフォアボールをしっかり選んで“押し出し”で得点したのは、相撲ならではの応援が力になったから?。

《ダイナミックな演奏も戻ってきた》

【智弁和歌山(和歌山)】

吹奏楽部も50人の人数制限がなくなり、智弁和歌山のアルプス席には79人の吹奏楽部の部員全員が集結しました。

そして、チームに勝利をもたらすとされているオリジナルの応援曲「ジョックロック」で、選手たちを後押ししました。
高校野球ファンにも人気のある「ジョックロック」。

1点を追う場面で演奏が始まると、チームがたちまち同点に追いつきました。

吹奏楽部部長の小谷俊介さんは「全員で楽器を吹く機会がコロナ禍になってからあまりなかったので、甲子園で79人という人数で演奏できてとてもうれしかったです。ジョックロックは点数が入って欲しいときにかける曲なので、ボルテージもすごく上がって、みんなで気合い入れて吹けたかなと思います」と話していました。

【大阪桐蔭(大阪)】

大阪桐蔭の吹奏楽部は、全国コンクールで金賞をとるなど、実力は折り紙付き。アルプス席には、100人を超える吹奏楽部員が集まりました。

去年は人数制限のため、クラリネットの担当部員をはじめ、およそ半数が応援に参加することができず「ことしこそは全員で選手の力になる応援を」とおよそ30曲を準備してきました。
クラリネットを担当する前川美結さんは「去年は悔しかったです。今回初めて甲子園という舞台で、みんなで演奏することができて、とても楽しくて気持ちがいいです」とうれしそうに話していました。

また、部長の江口禾柑さんは「人数制限がなくなり、より大音量で、そして声でも想いを届けられるようになりました」と話していました。

《ふるさとを感じさせる応援も復活》

【高知(高知)】

高知のアルプス席を盛り上げたのは、伝統の「よさこい踊り」です。
応援団やダンス部の生徒が「必勝」と書かれた楽器の「鳴子(なるこ)」を両手に、躍動感あふれる踊りを披露しました。

「高知の城下へきてみいや」などと声高らかに歌いながら、グラウンドの選手たちにエールを送りました。

【沖縄尚学(沖縄)】

沖縄の学校の応援と言えば「ハイサイおじさん」。

そのメロディーに合わせて響くのが独特の指笛です。
沖縄尚学のアルプス席からは吹奏楽部の演奏する音楽に合わせて「ピューピュー」というリズミカルな笛の音色が聞こえてきました。

応援に駆けつけた50代の女性は「やっとここに戻ってくることができました。沖縄尚学が初優勝した1999年の大会から毎回来ています。ここ数年は、声援が送れず、こんなにさみしいことはなかったという思いでした。沖縄の“ソウル”が選手たちに届けばいい」と話していました。

地元ならではの応援が選手を勇気づけ、沖縄尚学は仲田侑仁選手が大会第1号となる満塁ホームランを打って初戦を突破しました。

グラウンドと1つになって喜びを表した指笛の合奏。
仲田選手は「声援や指笛はしっかりと聞こえていました。応援のおかげで満塁ホームランを打てたと思っています」と話し、アルプスの想いをしっかりと受け止めていました。
本来の姿が戻ってきた、ことしのセンバツ。

大会が進むにつれて、熱気を増しそうなアルプス席の応援からも目が離せません。