スイスの金融最大手の「UBS」は、「クレディ・スイス」を買収することで合意し、買収総額は30億スイスフラン、日本円にして4200億円余りになる見通しです。
この買収に伴って、スイス金融市場監督機構は19日、「クレディ・スイス」が発行していた「AT1債」と呼ばれる社債が無価値になると発表しました。
160億スイスフラン、日本円にしておよそ2兆2000億円に相当します。
AT1債は、2008年のリーマンショックで銀行救済に多額の公的資金が使われた反省から銀行が自己資本の不足に備えて導入を進めたものです。
資本不足に陥った場合には自己資本に組み入れることができます。
今回、金融当局はこの社債を無価値にして「クレディ・スイス」の自己資本を増やすとしています。
これを受けて金融市場では、この社債の損失が広がることに警戒感が強まりました。
市場関係者は「アジアで同じタイプの社債を発行する金融機関の株式を売る動きが強まった」と話しており、市場は不安定な状況が続いています。
「クレディ・スイス」が発行 2兆円余相当の特定社債が無価値に
経営不安にさらされていたスイスの大手金融グループ「クレディ・スイス」が、「UBS」に買収されるのに伴い、スイスの金融当局は「クレディ・スイス」が発行していた2兆円余りに相当する特定の社債が無価値になると発表しました。金融市場では損失が広がることに警戒感が強まっています。

ヨーロッパ各国の株価指数は値下がり
20日のヨーロッパの株式市場は、クレディ・スイスの一部の債券が無価値になると発表されたことへの不安感から銀行株に売り注文が出て、各国の株価指数は値下がりしています。
ロンドンやパリ、フランクフルトなど、主要市場の株価指数は、日本時間の午後6時半現在で、0.5%程度の下落となっています。
このうち、クレディ・スイスの買収を決めたスイスの金融最大手の「UBS」の株価は一時10%以上と大幅に下落しました。
ヨーロッパの株式市場では、クレディ・スイスが救済の形で買収されたことや、日米欧の中央銀行が協調してドル資金の供給拡充を打ち出したことから、いったんは株価が値上がりしました。
しかし、クレディ・スイスの一部の債券が無価値になると発表されたことを受けて、売り注文が増える展開となっています。
ロンドンやパリ、フランクフルトなど、主要市場の株価指数は、日本時間の午後6時半現在で、0.5%程度の下落となっています。
このうち、クレディ・スイスの買収を決めたスイスの金融最大手の「UBS」の株価は一時10%以上と大幅に下落しました。
ヨーロッパの株式市場では、クレディ・スイスが救済の形で買収されたことや、日米欧の中央銀行が協調してドル資金の供給拡充を打ち出したことから、いったんは株価が値上がりしました。
しかし、クレディ・スイスの一部の債券が無価値になると発表されたことを受けて、売り注文が増える展開となっています。
アジアやオセアニアでも株価下落

20日のアジアとオセアニアの株式市場では、取り引き開始前にスイスの大手金融グループ「クレディ・スイス」の買収合意などが発表されたものの、投資家の懸念を取り除くまでにはいたらず、株価は下落しました。
各地の代表的な株価指数の20日の終値は先週末と比べて
▼香港で2.6%の大幅な下落となったほか、
▼オーストラリア・シドニーで1.3%、
▼シンガポールでも1.3%、
▼韓国では0.6%、それぞれ下落しました。
市場関係者は「世界の金融当局が投資家の不安を取り除こうと相次いで対応を示しているが、クレディ・スイスが発行した一部の社債が無価値になると発表されたこともあり、リスクを避けようとする動きが続いた」と話しています。
各地の代表的な株価指数の20日の終値は先週末と比べて
▼香港で2.6%の大幅な下落となったほか、
▼オーストラリア・シドニーで1.3%、
▼シンガポールでも1.3%、
▼韓国では0.6%、それぞれ下落しました。
市場関係者は「世界の金融当局が投資家の不安を取り除こうと相次いで対応を示しているが、クレディ・スイスが発行した一部の社債が無価値になると発表されたこともあり、リスクを避けようとする動きが続いた」と話しています。
買収発表から一夜明け スイスの人たちは
クレディ・スイスの買収に関する発表から一夜明け、チューリヒにあるクレディ・スイス本店の前では、通勤途中の人などが、人けのないオフィスをのぞき込んだり、写真を撮ったりする様子が見られました。
このうち、チューリヒ在住の女性は「国を代表する大銀行がこんな危機に陥るなんて、私たちスイス人にとって本当にショックです。今回、同じスイスの銀行が救ってくれて本当に安心しました」と胸に手を当てながら話していました。
また、以前から銀行経営に不満があったという男性は「私のような年金暮らしの者への支援をおろそかにして、銀行を助けるために税金を湯水のごとく使うなんて許せません。全く不公平です」と憤っていました。
一方、ドイツから銀行の様子を聞きに来たという部品メーカーの経営者は「銀行にとって一番大事な『信頼』が大きく損なわれてしまった。今回の銀行の統合で、不安がなくなったかというと疑問です。このまま金融市場が落ち着くのか正直不安な思いです」と話していました。
このうち、チューリヒ在住の女性は「国を代表する大銀行がこんな危機に陥るなんて、私たちスイス人にとって本当にショックです。今回、同じスイスの銀行が救ってくれて本当に安心しました」と胸に手を当てながら話していました。
また、以前から銀行経営に不満があったという男性は「私のような年金暮らしの者への支援をおろそかにして、銀行を助けるために税金を湯水のごとく使うなんて許せません。全く不公平です」と憤っていました。
一方、ドイツから銀行の様子を聞きに来たという部品メーカーの経営者は「銀行にとって一番大事な『信頼』が大きく損なわれてしまった。今回の銀行の統合で、不安がなくなったかというと疑問です。このまま金融市場が落ち着くのか正直不安な思いです」と話していました。
専門家Q&A 買収めぐる動きの背景や日本経済への影響は

クレディ・スイスの買収をめぐる動きの背景や日本経済への影響について、ヨーロッパ経済が専門のニッセイ基礎研究所、伊藤さゆり研究理事に聞きました。
Q.なぜこうした事態に至ったのか。
A.先週の段階では、スイスの中央銀行がクレディ・スイスの資金繰りを支援することを発表して、いったんはマーケットも落ち着いたように見えたが、この週末にかけて資金の流出が止まらなかった。
それだけアメリカの銀行の相次ぐ破綻などをきっかけに、市場の不安心理が高まっていた。
こうした資金の流動性の危機は非常に進行のスピードが速いのが特徴で、銀行の経営が追い込まれていった。
Q.なぜスイスの金融当局は、この週末に対応を急いだのか。
A.クレディ・スイスは、スイス国内だけでなくグローバルな金融スシテムにとっても影響力を持つ金融機関だ。
無秩序に経営破綻となれば、世界の金融システムが一時停止し、世界で取り引きが停止するような大きなインパクトを持つ可能性もあった。
スイスの金融当局もグローバルな金融危機の引き金は引きたくないという思いで、最小限に打撃を抑えるためには秩序だった再編が必要だった。
対策が取られないまま金融市場で今週の取り引きが始まっていればかなりの混乱が予想されていたので、短期間でまとめなければいけないということで、金融当局も支援して異例の措置が取られた。
Q.今回の買収に伴ってクレディ・スイスが発行した「AT1債」と呼ばれる社債の価値がゼロになると発表されたが、この影響は?
A.一般的に経営問題を抱えた金融機関が破綻などをした場合は、株式を持つ株主が、債券を持つ投資家よりも先に損失を負担することになる。
しかし、今回は、株主は必ずしも負担がゼロとはならない一方、AT1債を持つ投資家はその価値がゼロとなり、全額負担という形となった。
これまでAT1債は、大手の金融機関が発行しているかぎりにおいては、現実に損失が発生することはあまり意識されてこなかったが、今回の措置で改めてリスクを伴う債券だということが強く意識された。
その結果として、きょうのアジア市場でもこの債券をめぐって動揺が生じた。
今回は、短期間で買収をまとめなければいけないという異例の措置としてクレディ・スイスを買収しやすくするようないくつかの条件設定が行われたので、やむをえなかった面はあると思うが、AT1債のリスクをめぐる市場の動揺が金融システムに波及しないかという点が、今回の買収の副作用として心配される。
Q.日米欧の6つの中央銀行が協調して市場へのドルの供給を拡充すると発表したねらいは。
A.国際金融システムではドルを中心に取り引きが行われており、リーマンショックの際には、各国の金融機関でドルが不足して混乱を招いた経験がある。
現在も金融機関の間で不安心理がまん延している状況で非常に慎重になっているので、不安を和らげる必要ががあった。
各国の中央銀行が連携する形で金融機関が必要とするだけのドルを十分に供給すると約束することで、ドル不足による危機は防ぎますという強いメッセージとなっている。
Q.金融市場の混乱は収束するのか。
A.市場の不安心理は完全には払拭(ふっしょく)できていない。マーケットでは、今回のクレディ・スイスやアメリカで破綻した銀行と同様の経営問題を抱えた金融機関がほかにもないのか、リスクの再評価が行われている状況で、今後も同様のことが起きる可能性は否定できない。
欧米の金融当局は、インフレを抑制するために金融引き締めを行う一方で、金融システムの安定を維持するために市場での流動性は潤沢に供給するという難しい対応を迫られており、しばらくは綱渡りの状況が続くと見られる。
Q.日本経済への影響は?
A.日本の金融機関ではアメリカのように特定の分野に預金を依存するような特殊なビジネスモデルは見られない。
また急激な利上げが進んだ欧米と比べて、日本でははるかに低水準に金利が抑えられるなど、欧米の金融機関とは取り巻く環境が違うので、欧米の金融機関のように資金流出が起きるリスクは低いとみられる。
ただ欧米での金融システムの混乱を通じて、想定以上に世界経済が減速して日本経済に影響がでるおそれもあり注視が必要だ。
Q.なぜこうした事態に至ったのか。
A.先週の段階では、スイスの中央銀行がクレディ・スイスの資金繰りを支援することを発表して、いったんはマーケットも落ち着いたように見えたが、この週末にかけて資金の流出が止まらなかった。
それだけアメリカの銀行の相次ぐ破綻などをきっかけに、市場の不安心理が高まっていた。
こうした資金の流動性の危機は非常に進行のスピードが速いのが特徴で、銀行の経営が追い込まれていった。
Q.なぜスイスの金融当局は、この週末に対応を急いだのか。
A.クレディ・スイスは、スイス国内だけでなくグローバルな金融スシテムにとっても影響力を持つ金融機関だ。
無秩序に経営破綻となれば、世界の金融システムが一時停止し、世界で取り引きが停止するような大きなインパクトを持つ可能性もあった。
スイスの金融当局もグローバルな金融危機の引き金は引きたくないという思いで、最小限に打撃を抑えるためには秩序だった再編が必要だった。
対策が取られないまま金融市場で今週の取り引きが始まっていればかなりの混乱が予想されていたので、短期間でまとめなければいけないということで、金融当局も支援して異例の措置が取られた。
Q.今回の買収に伴ってクレディ・スイスが発行した「AT1債」と呼ばれる社債の価値がゼロになると発表されたが、この影響は?
A.一般的に経営問題を抱えた金融機関が破綻などをした場合は、株式を持つ株主が、債券を持つ投資家よりも先に損失を負担することになる。
しかし、今回は、株主は必ずしも負担がゼロとはならない一方、AT1債を持つ投資家はその価値がゼロとなり、全額負担という形となった。
これまでAT1債は、大手の金融機関が発行しているかぎりにおいては、現実に損失が発生することはあまり意識されてこなかったが、今回の措置で改めてリスクを伴う債券だということが強く意識された。
その結果として、きょうのアジア市場でもこの債券をめぐって動揺が生じた。
今回は、短期間で買収をまとめなければいけないという異例の措置としてクレディ・スイスを買収しやすくするようないくつかの条件設定が行われたので、やむをえなかった面はあると思うが、AT1債のリスクをめぐる市場の動揺が金融システムに波及しないかという点が、今回の買収の副作用として心配される。
Q.日米欧の6つの中央銀行が協調して市場へのドルの供給を拡充すると発表したねらいは。
A.国際金融システムではドルを中心に取り引きが行われており、リーマンショックの際には、各国の金融機関でドルが不足して混乱を招いた経験がある。
現在も金融機関の間で不安心理がまん延している状況で非常に慎重になっているので、不安を和らげる必要ががあった。
各国の中央銀行が連携する形で金融機関が必要とするだけのドルを十分に供給すると約束することで、ドル不足による危機は防ぎますという強いメッセージとなっている。
Q.金融市場の混乱は収束するのか。
A.市場の不安心理は完全には払拭(ふっしょく)できていない。マーケットでは、今回のクレディ・スイスやアメリカで破綻した銀行と同様の経営問題を抱えた金融機関がほかにもないのか、リスクの再評価が行われている状況で、今後も同様のことが起きる可能性は否定できない。
欧米の金融当局は、インフレを抑制するために金融引き締めを行う一方で、金融システムの安定を維持するために市場での流動性は潤沢に供給するという難しい対応を迫られており、しばらくは綱渡りの状況が続くと見られる。
Q.日本経済への影響は?
A.日本の金融機関ではアメリカのように特定の分野に預金を依存するような特殊なビジネスモデルは見られない。
また急激な利上げが進んだ欧米と比べて、日本でははるかに低水準に金利が抑えられるなど、欧米の金融機関とは取り巻く環境が違うので、欧米の金融機関のように資金流出が起きるリスクは低いとみられる。
ただ欧米での金融システムの混乱を通じて、想定以上に世界経済が減速して日本経済に影響がでるおそれもあり注視が必要だ。