プーチン大統領 ウクライナ マリウポリ訪問 支配誇示ねらいか

ロシアの大統領府は、プーチン大統領が、去年9月に一方的に併合したウクライナ東部ドネツク州の要衝マリウポリを訪れたと発表し、ウクライナ側が南部や東部で反転攻勢を目指している中、ロシア側による支配を誇示するねらいがあるものとみられます。

ロシア大統領府は19日、プーチン大統領が、去年9月に一方的に併合したウクライナ東部ドネツク州の要衝マリウポリを訪問したと発表しました。

大統領府のペスコフ報道官は、大統領は18日の夕方から19日にかけて現地を訪れたとしています。

去年2月にロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めて以降、ロシア側が掌握した地域をプーチン大統領が訪れたとされるのは、初めてです。
プーチン大統領がマリウポリを訪れた際に撮影されたとされる映像では、辺りが暗い中、大統領がみずから車を運転して市内を視察し、助手席に座る副首相から説明を受ける様子が見られます。

また、市内に新たに建設されたという集合住宅を訪れ、住民と立ち話をしたり住宅の中に案内されたりする姿も見られました。
プーチン大統領が一方的に併合した南部クリミアを18日に訪れたのに続いて、激しい戦闘の末に掌握したマリウポリを訪問した背景には、ウクライナ側が南部や東部で反転攻勢を目指す中、ロシア側による支配を誇示するねらいがあるものとみられます。

マリウポリ市の幹部の1人は19日、自身のSNSに投稿し、プーチン大統領の訪問とされる映像が夜間であることについて、「昼間であれば破壊された町並みがあらわになり、再建が進んでいるなどと言えないだろう」などと非難しました。

ロシア側が公開した映像では

ロシア側が公開した映像では、プーチン大統領を乗せたとされるヘリコプターが空港に着陸し、その後、大統領みずから車を運転しながらマリウポリ市内を移動する様子が確認できます。

車内でプーチン大統領は、助手席に座る副首相から、ロシア側が一方的に進めている町の建設や道路の整備状況について説明を受け、うなずいたり、説明を受けた場所を指さしたりしています。

その後、市内に新たに建設されたとされる集合住宅を訪れ、担当者から工事の進捗(しんちょく)などについて時折質問を交えながら説明を受けていました。

さらに、この地域に住む住民たちとことばを交わす姿も見られ、住民から「勝利してくれてありがとう」などと声をかけられていました。

また、別の住民から「よかったら部屋をご案内します」などと誘いを受け、実際に住宅の1室を訪れて台所などを見学し、住民に寄り添う姿勢も強調していました。

首都キーウの市民からは怒りの声

プーチン大統領がウクライナ東部のマリウポリを訪れたとロシア大統領府が発表したのに対し、首都キーウの市民からは怒りの声があがっています。

このうち36歳の女性は「ロシア軍が多くの人々を殺害したマリウポリを訪れるなんて、まともな神経ではありません。ウクライナ人として怒りと憎しみを感じます」と話していました。

また、37歳の男性は「ウクライナ人はみんな怒っているし、プーチン大統領を残虐で非道だと言っています。私にもマリウポリ出身の友人がいて、ひどい経験をしたと話していました。プーチンとこの戦争を絶対に許すことはできません」と話していました。

さらに、20歳の女性は「プーチン大統領の訪問にはなんの意味もありません。彼は残虐で、まともな政治家ではないからです。私たちの土地からプーチンとロシア軍が立ち去ることを願います」と話していました。

マリウポリ ロシアが戦略的要衝として重視

ウクライナ東部ドネツク州のマリウポリは、アゾフ海に面し、石炭や鉄鋼の輸出で栄えてきた港湾都市です。

ロシアは、9年前に一方的に併合した南部のクリミア半島とロシア本土を結ぶ線上に位置する戦略的要衝として、マリウポリを重視してきました。

今回の軍事侵攻で、マリウポリはロシア軍から激しい攻撃を受け、ウクライナ側はアゾフスターリ製鉄所を拠点に抵抗を続けましたが、去年5月、ロシア国防省は、マリウポリ全域の掌握を発表しました。

その後、プーチン政権は激しい戦闘で破壊された学校や病院、それに港湾施設などの再建に向けた基本計画を一方的に策定し、ロシアによる支配を既成事実化しようとしています。