18日の開会式、入場行進をグラウンドの片隅で見守っていたのが、小倉好正さん(64)です。
この3年余り、高野連=日本高校野球連盟の事務局長として、新型コロナの感染対策に奔走。5月での退任が決まるなか、事務局長として臨む最後の大会でようやく実現した本来の行進を目に焼き付け、1校1校に拍手を送っていました。
球児たちが元気よく掛け声を出して、甲子園の土を踏み締める本来の姿に喜びを感じていました。

“甲子園本来の姿を取り戻す” コロナと向き合った大会運営
~今ありて未来も扉を開く 今ありて時代も連なり始める~
センバツ高校野球の大会歌「今ありて」の一節です。
高校野球は、この3年間、新型コロナウイルスの影響を受けてきました。
「選手全員で場内を1周する入場行進」
「声を出しての応援」
「人数制限のない中での吹奏楽部の演奏」
ことしの大会では、しばらく見られなくなっていた光景が復活。センバツの歴史が再び未来に向けて動き始めました。
苦しかった今と向き合ってきたからこそ、未来につながる。球児たちを迎え入れてきたある人物の思いに迫りました。
(センバツ取材班 並松康弘)
“やっと高校野球が帰ってきた”


日本高校野球連盟事務局長 小倉好正さん
「やっと高校野球が帰ってきたと思いました。これまで歯がゆさを感じていましたが、どのチームも力強く、胸を張って堂々と行進していて、『準備をしてきたぞ。さあ、戦うぞ』という意気込みが感じられ、うれしく思いました」
「やっと高校野球が帰ってきたと思いました。これまで歯がゆさを感じていましたが、どのチームも力強く、胸を張って堂々と行進していて、『準備をしてきたぞ。さあ、戦うぞ』という意気込みが感じられ、うれしく思いました」
想像もしなかった3年間
小倉さんは地元、愛媛県の高校で、野球部の指導者や校長などを務めたあと、2019年秋から高野連の事務局長に就任しました。
しかし、翌2020年から新型コロナウイルスの感染が拡大し、春夏の甲子園がいずれも中止に。その後の大会では、常に感染対策と向き合うことを余儀なくされました。
小倉好正さん
「大会が中止になって、その時に悔しい思いをしています。その思いを忘れることなく、選手や観客、大会関係者が安心、安全に大会が終えられるようにやってきました。経験もなく、知識もないことだったので、試行錯誤の日々でした」
しかし、翌2020年から新型コロナウイルスの感染が拡大し、春夏の甲子園がいずれも中止に。その後の大会では、常に感染対策と向き合うことを余儀なくされました。
小倉好正さん
「大会が中止になって、その時に悔しい思いをしています。その思いを忘れることなく、選手や観客、大会関係者が安心、安全に大会が終えられるようにやってきました。経験もなく、知識もないことだったので、試行錯誤の日々でした」
葛藤が続く日々
コロナ禍の大会を安全に運営するために、高野連などでは感染対策のガイドラインを設けて、大会運営にあたってきました。
緊急事態宣言が出ているなかでの開催となったおととし夏の大会で示された感染対策のガイドラインです。
~2021年夏の全国高校野球感染対策ガイドラインより~
▽ブラスバンドは50人の人数制限を設ける
▽声を出しての応援は行わず、拍手での応援を基本とする
▽代表校から感染者ならびに感染が疑われる人が判明した場合、緊急対策本部で協議のうえ、参加可否を決定する。集団感染かどうかを重要視する
安全のためとはいえ、ガイドラインで厳しい基準を設けたことで、集団感染で出場を辞退せざるをえない学校も相次ぎました。
~大会を辞退したチーム~
2021年夏 ▽宮崎商 ▽東北学院(宮城)
2022年春 ▽京都国際※開幕前 ▽広島商
集団感染に至らなかったものの、感染した選手を特定されたくないという理由でやむをえず辞退を選ぶ学校も。想定していなかった出来事も起こり、事務局長として、頭を悩ます日々が続きました。
小倉好正さん
「ガイドラインが本当にベストだったかどうか、もう少し修正できるのかということの葛藤というか…」
緊急事態宣言が出ているなかでの開催となったおととし夏の大会で示された感染対策のガイドラインです。
~2021年夏の全国高校野球感染対策ガイドラインより~
▽ブラスバンドは50人の人数制限を設ける
▽声を出しての応援は行わず、拍手での応援を基本とする
▽代表校から感染者ならびに感染が疑われる人が判明した場合、緊急対策本部で協議のうえ、参加可否を決定する。集団感染かどうかを重要視する
安全のためとはいえ、ガイドラインで厳しい基準を設けたことで、集団感染で出場を辞退せざるをえない学校も相次ぎました。
~大会を辞退したチーム~
2021年夏 ▽宮崎商 ▽東北学院(宮城)
2022年春 ▽京都国際※開幕前 ▽広島商
集団感染に至らなかったものの、感染した選手を特定されたくないという理由でやむをえず辞退を選ぶ学校も。想定していなかった出来事も起こり、事務局長として、頭を悩ます日々が続きました。
小倉好正さん
「ガイドラインが本当にベストだったかどうか、もう少し修正できるのかということの葛藤というか…」

“まずは地域の声を聞きたい”
小倉さんが大切にしたのが、加盟校の要望や現状を把握することでした。
自身が愛媛の高野連の理事長を9年間務めた経験からそれぞれの地域の考えをしっかり受け止めることが大切だと考えたからです。
自身が愛媛の高野連の理事長を9年間務めた経験からそれぞれの地域の考えをしっかり受け止めることが大切だと考えたからです。

アンケートやオンラインでの会議を重ねて、選手たちがどの程度練習できているのかや全国大会に参加する際の懸念はないかなど聞き取ってきました。
さらに集団感染で、春夏の甲子園への出場を辞退した学校には、みずから足を運び、監督などと直接、意見交換をしたということです。
小倉好正さん
「大会を辞退したチームと意見を交換する中でなんとか試合に出られるような方策がないか、さらに考えないといけないと思いました。まずは地域の声を聞いたうえでルールの修正や改正を議論するという流れで3年間取り組んできました」
さらに集団感染で、春夏の甲子園への出場を辞退した学校には、みずから足を運び、監督などと直接、意見交換をしたということです。
小倉好正さん
「大会を辞退したチームと意見を交換する中でなんとか試合に出られるような方策がないか、さらに考えないといけないと思いました。まずは地域の声を聞いたうえでルールの修正や改正を議論するという流れで3年間取り組んできました」
去年夏 成果が
その成果がひとつの形になったのが、去年夏の全国高校野球です。
大会の直前から序盤にかけて、6校で集団感染が起きました。
それでも、涙を飲んできたチームの要望を踏まえ、登録する選手全員が試合前の72時間以内にPCR検査で陰性が確認されれば出場できるという基準を新たに設けたことで、辞退する学校を出さずに大会を終えることができたのです。
大会の直前から序盤にかけて、6校で集団感染が起きました。
それでも、涙を飲んできたチームの要望を踏まえ、登録する選手全員が試合前の72時間以内にPCR検査で陰性が確認されれば出場できるという基準を新たに設けたことで、辞退する学校を出さずに大会を終えることができたのです。

本来の姿を取り戻し 集大成の大会
そして、幾多の苦難を乗り越えた末にたどりついたことしのセンバツ。
入場行進のほかにも、感染がひろがる前の本来の姿が戻ってきました。
入場行進のほかにも、感染がひろがる前の本来の姿が戻ってきました。

声を出しての応援が認められたほか、アルプス席の吹奏楽部の人数制限もなくなり、早速、球児たちの背中を押しています。
小倉さんが集大成として臨む大会がいよいよ始まりました。
小倉さんが集大成として臨む大会がいよいよ始まりました。

日本高校野球連盟事務局長 小倉好正さん
「この3年間、球児をはじめ、高校野球に関わっている人たちは本当に我慢をしていたと思います。100%ではありませんが、少しずつ本来の形に戻るということに非常に喜びを感じています。3年間の経験、知識を総合して、この大会に取り組んでいきたいです」
「この3年間、球児をはじめ、高校野球に関わっている人たちは本当に我慢をしていたと思います。100%ではありませんが、少しずつ本来の形に戻るということに非常に喜びを感じています。3年間の経験、知識を総合して、この大会に取り組んでいきたいです」