憧れの父の背中を追って

憧れの父の背中を追って
「追いついて、追い越したい」
かつて甲子園を沸かせた憧れの父を超えたい、清原勝児(かつじ)選手はそんな決意を語りました。
5年ぶりにセンバツ高校野球に出場する慶応高校(神奈川)のレギュラーとして大舞台に臨む清原選手には、父・和博さんとの強い絆がありました。(横浜放送局記者 高橋哉至)

“父親譲り”の勝児選手

ライナー性の当たりでレフトへのホームラン。

センバツ開幕まで1週間となったこの日、清原勝児選手は強豪・東海大相模高校のエースから貴重な追加点を挙げました。
父・和博さんのような放物線を描いた打球とは異なりましたが今シーズンの第1号でした。

身長1メートル75センチ、体重85キロのがっしりとした体は努力のたまもの。冬場にウエイトトレーニングなどで下半身を強化し、スクワットでは以前より60キロも重い180キロを上げられるようになりました。
清原勝児選手
「打球を遠くに飛ばせるように練習を積んできた。もっと力強さや、さらに飛距離を求めていきたい」
森林監督
「ここ1番での集中力というか、打席でピッチャーに対して打ってやるぞっていうような気迫は、父親譲りと感じることもあります。注目されて大変なところもあると思います。ただ、注目されることは得難い経験になるので清原もプラスに捉えようとしています」

父は甲子園の“怪物”と呼ばれた

清原選手の父、和博さんは甲子園で名をはせたスーパースター。

大阪・PL学園で1年生の夏から4番として大活躍し、甲子園だけでなく、日本中を沸かせました。
春のセンバツと夏の全国高校野球には出場可能な5回すべてでプレーし、センバツで準優勝1回、夏は優勝2回と準優勝1回を成し遂げました。

甲子園で積み重ねた通算ホームランの数は合わせて13本。およそ40年前に作られた記録はいまだに破られていません。

父とのキャッチボールから始まった

野球を始めたきっかけは、幼いころに父と3歳年上の兄・正吾さんと一緒にしたキャッチボール。

小学1年生でチームに所属して以来、好きな野球を続ける中で、甲子園の魅力も知りました。
清原勝児選手
「(小学生の時)甲子園で高校野球を見て、すごく格好いいなと憧れました。(今は)野球を通して親やいろいろな支えてくれた人たちに恩返しをしたい」
これまでも“清原の子”としてたびたび話題にのぼってきました。

センバツ出場が決まってさらに注目されるようになり、取材のたびに報道陣から父に関する質問が繰り返されました。
清原勝児選手
「注目されることはわかっています。そこをいかにプラスにできるかを常に考えてやっています。メンタルトレーニングの1つで『自分が打ったらヒーローになれる』というのを意識して、プレッシャーがかかる場面でもプラス思考でやることにしています」

父をそばで感じていたい

慶応の5年ぶりのセンバツ出場が決まった1月27日。

清原選手は父と電話で話し「おめでとう。精いっぱい自分ができるプレーを頑張れ」と伝えられたと言います。
清原勝児選手
「ふだんも連絡を取って、いろいろなことを話しています。ただこの時は、やってやるぞっていう気持ちがわいてきて、また気持ちを改めて頑張ろうと思いました」
甲子園を知り尽くす“大先輩”の父からのことばは大きな原動力になっています。

同じ日、父も自身のSNSに心の内をつづっていました。
清原和博さんのツイッター
「うれしく思うと同時に40年前、私自身が初めて甲子園に出たとき以上の緊張感が湧き起こっています。出場するすべての選手に、あの大舞台で、悔いなく全力でプレーしてほしいと願っています」
その父がマジックで書いてくれた4つのメッセージが清原選手の試合用の帽子のつばの裏に記されています。

センバツ出場に向けて重要な位置づけとなる去年(22年)秋の大会前、清原選手が「お父さん、大事にしていることを書いて」とお願いしたのです。
『氣』・『己を信じて』・『リラックス』・『センター返し』。

どれも甲子園を目指す清原選手の心にスッと入ってくることばでした。
清原勝児選手
「いつも気にかけて励ましてくれて自分のプレーを後押ししてくれます。帽子は試合中に見ていて、気持ちで負けないように自分を奮い立たせてくれています。安心するというか、父のように輝けるように頑張りたい。そういう意味では負けないという思いを持って戦うことができていると思います」
甲子園で着る試合用のユニフォームにも父との絆がありました。

左肩にある校章の裏に縫い付けてある白い布。

この中には数字の「3」が書かれています。

父が高校時代だけでなくプロ野球・西武で活躍していた当時の背番号です。

憧れの父の姿を身近に感じながらプレーをしたい、ピンチや苦しい場面で心のよりどころになっています。

陽気で明るい性格、ムードメーカーとしても

まもなく開幕するセンバツ、陽気で明るい性格の清原選手はムードメーカーとしての役割も期待されています。
清原勝児選手
「野球をしていると楽しくなっちゃって、特に明るさは意識していなくて気付いたらテンションが勝手に上がっちゃうんです。チームを盛り上げて、エンジョイベースボールです」
大村昊澄(そらと)キャプテン
「勝児は本当に明るくて、チームを盛り上げてくれる存在で、野球に対してはストイックで一生懸命です。自分から特に何かを言うことはないので、ありのままの勝児で頑張ってくれれば、それだけでチームにいい影響を与えてくれます」

“父を超えたい”果たせなかったセンバツ優勝を目指して

公式戦では6番や7番を打つことが多かった清原選手は、父が高校時代に座り続けた4番にもこだわりがあります。

偉大な父の背中を追って目指すのは、父が果たすことができなかったセンバツ優勝です。
清原勝児選手
「試合を左右するのが4番。自分が4番に座りチームを勝たせるプレーヤーになりたい。お父さんの甲子園での映像を見て、自分がその舞台に近づくに連れて、本当にすごいなと痛感しています。お父さんはすごく尊敬できる選手なので、追いついて追い越せるようにしたい」

慶応高校の初戦は21日

慶応は今月21日、去年夏の全国高校野球で東北勢初の優勝を果たした仙台育英高校(宮城)と対戦します。
横浜放送局記者
高橋哉至(かなた)
2018年入局
宇都宮局を経て現所属
小学校から大学まで野球部に所属
富山県の高校で甲子園出場を夢見ていた