国産ロケットの開発に長年携わってきたJAXA=宇宙航空研究開発機構の的川泰宣名誉教授は、8日午後、東京 千代田区の日本プレスセンターで講演し、7日に新型ロケット「H3」の初号機が打ち上げに失敗したことについて、「初号機は、従来と異なる部品の組み合わせになるため、取り扱いに慣れていない。できるかぎりチェックはするが、チェックしきれないものが残ることはある」と述べ、初号機ならではの難しさについて、みずからの考えを述べました。
そのうえで、今後の打ち上げについて、「『H3』を使った火星へのミッションも計画されているが、火星に行く機会は、およそ2年に1度しかないため、海外のロケットで探査機を打ち上げることを探る必要も出てくる。宇宙開発への参入という点で、今はチャンスの時期で、次の打ち上げが遅れれば遅れるほど影響が出る。きのうの打ち上げで着火しなかった2段目のエンジンはH2Aの改良型であり、影響しないか心配だ」と話していました。
一方で、今回の打ち上げ失敗の原因究明の進め方については、「日本では、内閣府の宇宙関連の会議は非公開のところがあり、透明性のある発表のしかたにしていくことだ」と指摘しました。
また、イプシロン6号機をはじめ、打ち上げ失敗などが相次いでいることについて、「個人的な感想だが、JAXAの現場に人が足りていない印象がある。現場が自転車操業だとしたら、JAXAのマネージメントにバランスのとれたものがもっと求められるかもしれない」と話していました。
「H3」“着火前後 機器の一部で電圧などに異常値” JAXA
日本の新たな主力ロケット「H3」の初号機が発射後、2段目のエンジンに着火せず打ち上げに失敗した原因について、JAXA=宇宙航空研究開発機構は、飛行時のデータを分析した結果、着火するタイミングの前後、機器の一部で電圧などの値に異常があったことを明らかにしました。
日本の新たな主力ロケット「H3」初号機は7日、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられましたが、機体の1段目と2段目を分離したあと、2段目のエンジンに着火せず、発射からおよそ14分後にロケットを破壊する信号を送り、打ち上げは失敗しました。
8日に文部科学省で開かれた有識者会議で、JAXAはこれまでの調査結果を報告。
飛行時のデータを分析した結果、2段目のエンジンに、機体から着火の信号が送られ、エンジン側の装置でも受信が確認された一方、着火に必要な機器の一部で電圧などの値が異常を示していたことが判明したということです。
JAXAは、着火するタイミングの前後で異常が起きたとみて、原因を詳しく調べるとともに、対策を講じたうえで、できるだけ早く次の打ち上げを目指す方針です。
JAXA 的川名誉教授 “宇宙開発への参入に影響も”
