【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(1日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる1日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシア プーチン大統領 “中国 習主席に地下鉄見せたい”

ロシアのプーチン大統領は1日、首都モスクワで新たに完成した地下鉄の開通式にオンラインで出席しました。

新しい地下鉄は、モスクワの周囲を大きく走る環状線で、プーチン大統領は「全長は70キロで、世界最大の環状線だ。北京の環状線も追い越した」と述べ、みずからの側近の1人であるモスクワのソビャーニン市長をたたえたうえで、完成した地下鉄をアピールしました。

そのうえで「われわれは中国の国家主席と会談する予定だが、予定が許されれば、ぜひ見せたいと思う」と述べ、中国の習近平国家主席がモスクワを訪問する際には案内したいという考えを示しました。

プーチン大統領は、対立するアメリカをにらんで中国との関係強化をねらっていて、中国で今月に予定されている全人代=全国人民代表大会が終わったあとに、ロシアで首脳会談を開催することに意欲を示しています。

中国 習主席 ベラルーシ大統領と会談 両国の関係強化を確認

中国の習近平国家主席は、ロシアと同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領と北京で会談し、ウクライナ情勢をめぐって和平交渉を促す中国の立場を強調する一方で、欧米などによるロシアへの制裁に反対する姿勢を示しました。
習近平国家主席は1日、みずからの招きで中国を訪れたベラルーシのルカシェンコ大統領と北京で会談しました。

中国外務省などによりますと、この中で習主席はウクライナ情勢をめぐって「中国の立場の核心は和平交渉を促すことだ。各国の安全保障上の合理的な懸念を尊重し、バランスがとれ、持続可能なヨーロッパの安全保障の枠組みを築くべきだ」と強調しました。

一方で「関係国は経済を政治的に利用することをやめ、停戦のために真に役立つことをすべきだ」と述べ、欧米などによるロシアへの制裁に反対する姿勢を示しました。
これに対し、ルカシェンコ大統領は「中国による平和への提案や国際安全保障に関する取り組みを完全に支持する」と述べ、中国側の主張に支持を表明したということです。

会談のあと両首脳は、両国の包括的、戦略的なパートナーシップの発展に向けた共同声明に署名し、貿易や農業など幅広い分野の協力文書の署名にも立ち会ったということで、両国の関係強化を確認しました。

ウクライナ情勢をめぐって、中国がロシアへの軍事支援を検討しているとアメリカなどが指摘していますが、中国としては、和平を促す姿勢を内外にアピールするねらいがあるとみられます。

バフムトでロシア軍の攻撃強まる ロシア側は一方的な主張

ウクライナ東部では、ロシア側がドネツク州の掌握をねらい、ウクライナ側の拠点バフムトを包囲するように攻撃を強め、抗戦するウクライナ側と激しい攻防が続いています。

ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、バフムトの状況について「ロシア側は絶え間なく兵士を送り込んでいる。戦闘の激しさは増すばかりだ」と述べ、厳しい防衛戦が続いているという認識を示しました。

一方、ロシア国防省は28日、アメリカなどがウクライナで有毒な化学物質を使用して、ロシアによる仕業だとして責任を負わせるいわゆる偽旗作戦を計画しているなどと一方的に主張しました。

また1日には、ロシア外務省が、ウクライナ南部オデーサの港などに放射性物質が届き、ロシアへの挑発行為に使用される可能性があるなどと主張しています。

こうしたロシア側の主張について、戦況を分析しているアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は28日「最近、ロシアの情報戦が復活している」と指摘しました。

そのうえで「ロシア当局が欧米諸国のウクライナへの兵器供与などを遅らせる努力をしているとみられる」と分析した上で今後、ウクライナ側の反転攻勢が進むにつれて、ロシア側が情報戦をエスカレートする可能性が高いという見方を示しています。

米国防総省高官 F16戦闘機 “実戦配備まで約1年半”

アメリカ国防総省の高官はウクライナへの軍事支援として注目されている戦闘機の供与について、実戦配備にはおよそ1年半かかるとして、現時点で供与は現実的ではないとの政権の考えを示しました。

ウクライナへの巨額の軍事支援を続けるアメリカは、供与する兵器のレベルを徐々にあげていて、ことしに入って戦車の供与を決めたことで、次はF16戦闘機の供与にも踏み切るかどうかに関心が集まっています。
これについてアメリカ国防総省のカール国防次官は28日、議会下院の軍事委員会の公聴会で機体の供与や訓練も含めて実戦配備するまでにはおよそ1年半かかるとの見通しを示しました。

これはすでに使用されている機体を供与する場合で、新しい機体を供与するには最大で6年かかるとしています。その上で「F16戦闘機を供与することが最良の選択だとは言えない」と述べ、現時点で供与は現実的ではないとの考えを示しました。

F16戦闘機の供与をめぐってはバイデン大統領が24日放送されたABCテレビのインタビューでウクライナが必要としているのは戦車や大砲だなどとして「戦闘機は現時点では必要ない」と述べています。

ゼレンスキー大統領「バフムトは最も困難な状況」

ゼレンスキー大統領は2月28日、公開した動画で、「依然としてバフムトは最も困難な状況にあり、そこでの戦いは街の防衛にとっても重要だ」と述べ、反撃に向けて軍の幹部との会議を頻繁に開いていることを明らかにしました。

また、ウクライナ国防省情報総局のスキビツキー副局長は、2月26日に掲載されたドイツのメディアとのインタビューで、ウクライナ軍がこの春、大規模な反転攻勢に乗り出し、ロシアに一方的に併合されたクリミアとロシア本土を分断した上で、クリミアの奪還を目指す考えを示しました。

こうした中、G20=主要20か国の外相会合が1日からインドで始まり、ウクライナ情勢を巡り対立する欧米とロシアに加えて、中国なども参加し、議論が注目されます。

米 政府高官「中国がロシアに衛星画像を提供」軍事支援けん制

アメリカ国務省でアジア政策を統括するクリテンブリンク国務次官補は28日、議会下院の外交委員会の公聴会に出席しました。

この中でウクライナに軍事侵攻を続けるロシアに中国がどのような支援をしてきたのかを議員から問われたのに対し「中国はロシアとの経済的なつながりや、ロシアからの購入を増やしている」と指摘しました。
そして「ロシアを援助しているとしてわれわれが制裁リストに載せた中国企業のうちの1社は、ロシアの民間軍事会社ワグネルに人工衛星から撮影した画像を提供していた」と述べました。そのうえで、中国がロシアに軍事支援をすれば「結果が伴うことになる」と述べ、制裁も辞さない姿勢を示して中国をけん制しました。

また、米中関係についてクリテンブリンク次官補は「中国は国内ではより抑圧的に、対外的にはより攻撃的になりつつあり、アメリカの外交が試されている」との認識を示しました。

そして「アメリカはわれわれの価値観と利益のために断固、立ち上がるが、中国との衝突や、新しい冷戦も望んでいない」と強調し、中国との関係が先鋭化しすぎないようコントロールしていきたいという考えを示しました。

東部攻防激しく ロシアは治安機関引き締め

ウクライナ東部では、ロシア側がドネツク州の掌握をねらい、ウクライナ側の拠点バフムトを包囲するように攻撃を強めていて、ウクライナのゼレンスキー大統領は「状況はより困難になってきている」と述べ、防衛線を保つことが難しくなってきているという考えを示しています。

ロイター通信は、27日にバフムトで撮影したとする映像を配信し、この中では、建物のほとんどが破壊された街なかをウクライナ軍の戦車が走行する様子や、砲撃の音や銃声が絶えず鳴り響く中、住民とみられる人々が通りを歩く様子もうかがえます。

プーチン大統領 欧米側のスパイ行為への対策強化を指示

プーチン大統領は28日、ロシアの治安機関FSB=連邦保安庁の会合に出席し、ウクライナや欧米側によるロシアへのスパイ行為や破壊工作が増えていると主張して対策強化を指示しました。

プーチン大統領は「われわれの社会を分断し弱体化させようとする人々の違法行為を特定し、阻止することが必要だ」と述べて、ロシア国内だけでなく去年9月に一方的に併合を宣言したウクライナ東部と南部の4つの州でも対策強化を命じ、引き締めを図っています。

モスクワの南東で「無人機墜落」

ロシア中部モスクワ州のボロビヨフ知事は28日、州内のコロムナに無人機が墜落したとSNSに投稿しました。

コロムナは、首都モスクワから南東100キロ余りに位置していて知事によりますと、付近には天然ガス施設があるとして「民間のインフラ施設がねらわれた」と主張しています。

無人機の詳細について、ロシアの治安当局が調べているということですが、国営のタス通信は「無人機は外国製だ」と伝えています。

また同じ28日、ロシア国防省は、ウクライナに近い南部クラスノダール地方などで民間のエネルギー施設をねらったウクライナからの無人機による攻撃があったが阻止したと発表しました。いずれもけが人などはなく、施設への被害も出ていないということです。ウクライナ側はこれまでのところ、関与についてコメントしていません。

ロシアでは、去年12月、中部や南部の空軍基地などで爆発が相次ぎ、ロシア国防省は、ウクライナ軍の無人機に攻撃されたとして、警戒を強めていました。

プーチン大統領 核軍縮条約の履行停止の法律に署名

ロシア大統領府は28日、プーチン大統領がアメリカとの核軍縮条約「新START」について履行を停止する法律に署名したと発表しました。

プーチン大統領は21日に行った年次教書演説で「新START」の履行停止を表明し、その後、ロシア議会が履行を停止する法案を可決していました。

法律は28日をもって効力が生じるとしていて、一方で新STARTの履行の再開はロシアの大統領が決定できるとしています。

核軍縮条約の履行の停止については、アメリカのバイデン大統領が「大きな過ちだ」と批判するなど、国際社会で懸念が強まっています。

米国務長官が就任後初の中央アジア訪問

アメリカのブリンケン国務長官は28日、カザフスタンを訪問し、ウズベキスタンなど中央アジア5か国の外相と会合を開きました。

ブリンケン長官は会合のあとの記者会見で「中央アジアの友好国に対し、さまざまな機会を提供できるようできるかぎりのことはする」と述べ、この地域の貿易相手国の多角化などを推進するための基金などに追加で2500万ドル、日本円にしておよそ34億円を提供すると明らかにしました。
中央アジアの5か国は旧ソビエトの構成国で、政治的にも経済的にもロシアとのつながりが深い一方、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアと距離を置く姿勢もみせています。

ブリンケン長官の中央アジア訪問は就任後、初めてで、ロシアと中央アジアの国々の関係にくさびを打ち、ロシアへの制裁の効果を高めるねらいもあるとみられます。

ロシア ラブロフ外相はアゼルバイジャンを訪問

ロシアのラブロフ外相は旧ソビエトのアゼルバイジャンの首都バクーを訪問し、27日にアリエフ大統領と会談したのに続き、28日にはバイラモフ外相と会談を行いました。

アゼルバイジャンは隣国アルメニアとの間で、去年、武力衝突が起き死者が出ていて、一連の会談でラブロフ外相は、ロシアが仲介役となって両国の問題解決を進めたい意向を強調しました。
一方、この地域をめぐっては、アメリカのブリンケン国務長官が18日にドイツでアゼルバイジャンのアリエフ大統領とアルメニアのパシニャン首相と会談するなど、仲介役としての外交的な働きかけを強めています。

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を続ける中、勢力圏だとしてきた旧ソビエト諸国の間でロシアの影響力の低下が指摘されていて、ロシアとしては旧ソビエトの構成国である両国に対し、存在感を示したいねらいもあるものとみられます。

きょうからインドでG20外相会合 ウクライナ情勢が主要議題

G20の外相会合は、1日から2日間の日程でインドの首都ニューデリーで開かれ、アメリカのブリンケン国務長官やロシアのラブロフ外相、それに中国の秦剛外相が出席する予定です。

実質的な討議は2日に行われ、ウクライナ情勢を主要な議題に、世界的なエネルギーや食料価格の高騰への対応などについて、議論が交わされる見通しです。

ロシアによるウクライナへの侵攻を巡っては、アメリカやイギリスなどの欧米各国がロシアに経済制裁を科して厳しく非難する一方、中国は制裁に反対する立場を示しています。

議長国インドはグローバル・サウスの代表格

議長国インドは、欧米とロシアのどちら側にもつかない「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国の代表格で、こうした国々の声をG20に反映させていく考えを強調しています。

ウクライナ情勢をめぐって欧米とロシアが対立する中、議長国インドが、G20として各国の意見を取りまとめ、一致した対応を打ち出せるかが焦点となります。

グローバル・サウス 軍事侵攻支持せず 経済制裁にも加わらず

「グローバル・サウス」は明確な定義はありませんが、アジア、アフリカ、中南米などの新興国や途上国を指し、近年、経済規模が大きくなるのに伴い、国際社会で注目されています。

冷戦時代には「第三世界」と呼ばれていたこうした国々は、欧米かロシアかといった「二者択一」を避け、みずからの国益や地域情勢に基づいて動く傾向があるとされています。

ウクライナ情勢をめぐっても、こうした国の多くはロシアによる軍事侵攻を支持しない一方、欧米などによる経済制裁にも加わっていません。

専門家“グローバル・サウス含めた世界的危機の解決を”

近年「グローバル・サウス」が存在感を増していることについて、インドの元外交官のサラン元国家安全保障副顧問は新型コロナウイルスの拡大とロシアによるウクライナへの軍事侵攻という2つの世界的な危機がきっかけになったと分析しています。

サラン元国家安全保障副顧問は「エネルギーや食料、肥料、経済発展などに関する途上国の懸念を国際社会が聞き入れないことが問題だ。2つの世界的な危機が、グローバル・サウスの声を地球規模の問題において確実に反映させたいという考え方に導いた」と指摘しています。

そのうえで「ウクライナをめぐって『西側』対『ロシア』や『競争』といった言葉は古臭く、冷戦時代に戻ったかのようだ。持続可能な開発や気候変動といったより深刻な問題に取り組まないかぎり、世界は不安定となり、分断が続くであろう」と述べ、「グローバル・サウス」の国々を含めた世界全体で問題の解決に取り組むべきとの考えを示しました。