【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(28日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる28日(日本時間)の動きを詳しくお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ国防省高官「クリミアとロシア本土の間にくさびを」

ウクライナ国防省情報総局のスキビツキー副局長は、26日に掲載されたドイツのメディアとのインタビューで、ウクライナ軍がこの春、大規模な反転攻勢に乗り出す計画があると明らかにしました。

そのうえで「われわれの軍事的な戦略目標の一つは、南部戦線、つまりクリミアとロシア本土との間にくさびを打ち込むことだ」と述べ、ロシアに一方的に併合されたクリミアとロシア本土を分断することが目標だとしました。

そして「反転攻勢を通じて目指すのはクリミアを含むすべての領土の解放だ」としてクリミアも含めすべての領土の奪還を目指す考えを明らかにしました。

また、スキビツキー副局長は「ウクライナ軍はロシア国内の武器庫などを破壊する可能性がある。それは、たとえばウクライナへの攻撃の拠点となっているベルゴロドの周辺だ」と述べ、ウクライナと国境を接するロシア西部のベルゴロド州にあるロシア軍の施設を攻撃する可能性も示唆しました。

一方、ロシア側の動きに関連しては、すでにおよそ52万人が動員され、ウクライナやベラルーシ領内などで軍事活動に関わっているという見方を示しました。

ベラルーシ空軍基地で爆発 ロシア軍の機体が損傷

ロシアと同盟関係にあるベラルーシの空軍基地で爆発があり、駐機していたロシア軍のA50早期警戒管制機が損傷したと26日、ベラルーシの反体制派の団体が主張しました。

爆発があったのは首都ミンスク近郊のマチュリシチ空軍基地で、反体制派の団体はこの爆発は無人機を使った破壊工作によるものだとしていて、ロシア軍の駐留に反対するベラルーシ人が関与したという見方を示していますが、ロシア軍やベラルーシ軍はコメントしていません。

これについて戦況を分析するイギリス国防省は28日、ロシア軍のA50の任務は空域の偵察活動を行い、味方の戦闘機どうしの調整を行うことだと指摘しました。

そのうえで「A50の損失は、ロシアの航空作戦にとって重大なものとなる。ロシア側はさらに作戦で制約を受けることになる」と分析しています。

ウクライナ国防省 “ロシア軍 ミサイルが枯渇”

ウクライナ国防省情報総局の報道官は27日、ロシア軍が保有するミサイルが枯渇しているとする見方を示しました。

報道官によりますと、ロシア軍が保有するミサイルの数は全体で数千発で、精度の高い巡航ミサイルは100発未満だとしています。

また、ロシアのミサイルの1か月あたりの製造能力は多くとも30発から40発とみられ、製造量が使用する数に追いついていないとしています。

その上で報道官は、ミサイル不足を補うためロシアが戦術を見直す可能性も指摘しています。

ロシアの「ワグネル」など21団体 新たな制裁対象に 政府

政府は、ウクライナへの軍事侵攻で戦闘員を送っているロシアの民間軍事会社「ワグネル」など21団体を新たに制裁対象に加え、日本からの輸出を禁止します。

このロシアへの追加の制裁措置は28日の閣議で了解されました。

それによりますと、日本からの輸出を禁止する団体に、ウクライナへの軍事侵攻で戦闘員を送っているロシアの民間軍事会社「ワグネル」やロシア国内の研究所など21団体を追加するほか、新たにドローンに関連する物品などの輸出を禁止するとしています。

また122の個人や団体を新たに資産凍結の対象とし、ロシアの国防次官や、ウクライナ国内の親ロシア派の関係者のほか、ロシア国内の航空機の工場や民間銀行などが含まれています。

ゼレンスキー大統領「状況はより困難に 最新の戦闘機が必要」

ウクライナのゼレンスキー大統領は27日に公開した動画で、東部ドネツク州のウクライナ側の拠点バフムトの状況について「敵はわれわれが拠点を守るため要塞や防御に利用できるものを絶えず破壊している。状況はより困難になってきている」と述べました。

さらに、27日にはウクライナ西部フメリニツキーでイラン製の無人機による攻撃があり、2人が死亡したと明らかにした上で「ロシアの脅威からウクライナのすべての領土を守るには、最新の戦闘機が必要だ。支援してくれる国が戦闘機のタブーをといたときにわれわれは空を完全に守ることができるようになる」と述べ、欧米各国に対し戦闘機の供与をあらためて呼びかけました。

軍事侵攻から1年 住宅再建進まず

ウクライナではロシアによる軍事侵攻から1年がたった後もロシア軍によって破壊された住宅の再建が大きな課題になっています。

ウクライナ政府は、去年12月の時点で、ウクライナ全土で住宅15万棟が全壊、または一部損傷の被害を受けたとしています。

このうち、去年2月の軍事侵攻当初にロシア軍の激しい攻撃を受けたキーウ近郊のイルピンでは、NHKの取材班が入った27日も破壊され廃虚となったアパートや住宅の多くが手つかずのまま残されていました。イルピンに住むナタリア・ツカロさん(62)の住宅も去年3月に砲撃を受け、屋根や壁が崩れ落ちるなど大きな被害を受けました。

しかし、その後、半年間は移り住める場所が見つからず、崩れ残った部屋で雨露をしのいでいたということです。現在は、支援団体の助けを借りて近くの空き家に移り住み、36歳の息子と暮らしています。

ツカロさんは「これまでの生活や家などすべてが砲撃によって奪われました。これから家を修復してできれば来年には戻りたいですが、どうなるかわかりません」と話していました。

米 イエレン財務長官 ウクライナ訪問 継続的な支援を約束

アメリカのイエレン財務長官が27日、事前の予告なしにウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談しました。

会談の中でイエレン長官は「ウクライナの人々の戦いは私たちの戦いでありこれからもウクライナとともに歩んでいく」と述べて継続的な支援を約束しました。

アメリカはこれまでおよそ500億ドル日本円で6兆8000億円にのぼる支援を行っていますがイエレン長官は経済的な追加支援として今後数か月の間に80億ドル日本円で1兆円余りを拠出することを改めて表明しました。

また去年12月ゼレンスキー大統領がアメリカの首都ワシントンを訪れて行った演説の言葉を引き合いに「支援は慈善行為ではなく世界の安全保障と民主主義への投資だ」として「いまこそウクライナの自由のための支援を倍増させることが重要だ」と強調しました。

サウジアラビア外相 ウクライナ訪問 中立な立場だと強調か

中東サウジアラビアのファイサル外相は26日、ロシアが侵攻を続けるウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領らと会談しました。この会談についてサウジアラビア政府は「ウクライナとロシアの政治的な危機を解決するために取り組むと表明した」などと説明しています。

ウクライナ政府によりますとサウジアラビアの外相がウクライナを訪問するのは今回が初めてだということです。

ゼレンスキー大統領は「訪問に感謝したい。ウクライナへの支持を示す重要な証しだ」と述べ、歓迎しました。

世界有数の産油国のサウジアラビアは、原油の生産調整でロシアと協力関係にあり、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の後も良好な関係を維持していますが、サウジアラビア政府としてはウクライナに外相を派遣することで、国際社会に中立な立場だと強調したい狙いがあるものとみられます。

専門家 “中国 仲介役担うこと考えられない”

今回、ベラルーシのルカシェンコ大統領が中国を訪問することについて中国の政治や外交に詳しい、慶應義塾大学の加茂具樹教授は「ロシアによるウクライナ侵略の状況下で、中国自身が大国として、さまざまな方面からの声を聞くという姿勢を国際社会にアピールする狙いがあるのではないか」と指摘しています。

その上で「中国は、ロシアのウクライナ侵略に対し支持も批判もしておらず、大きな政治的な対話を通じて問題解決をするべきだという主張を続けている。ルカシェンコ大統領の訪中を受けて、すぐさま中国が仲介役を担うことを宣言することは考えられない」と述べ、停戦交渉に向けて中国が早期にロシアとウクライナ双方の仲介に乗り出す可能性は低いとの見方を示しました。

また中国外務省が2月24日にウクライナ情勢をめぐる立場を示す文書を発表したことについて「中国の立場は非常に慎重で、この戦争に対して積極的な役割を発揮するという考え方ではなく、外交活動の中で中国がよりよい環境を維持し、外交上の選択肢を広げるための布石と考えた方がいい」と指摘し、自国の安全保障や対米関係などを考慮しながら国益の最大化に向けた立場を今後もとり続けていくという見解を示しました。

ベラルーシ大統領 中国訪問 ロシア支援めぐる発言が焦点

ロシアと同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領が、28日から中国を訪れ、習近平国家主席とも会談する予定です。訪問は、習主席による招待だとされ、去年2月のロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってからルカシェンコ大統領が中国を訪れるのは初めてです。

訪問を通じて、両首脳は両国の経済関係の強化のほか、ウクライナ情勢についても協議するものとみられ、ロシアへの支援をめぐってどのような発言をするかが焦点です。

ロシアへの支援についてアメリカ政府は、中国が、ロシアに対し、無人機や弾薬の供与など軍事支援を検討しているとして、中国に兵器の供与を行わないよう圧力を強めています。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、25日の分析で、中国からベラルーシを経由してロシアへ兵器が供与される可能性もあるとして「中国がベラルーシを利用して、制裁違反をわかりにくくしようとするかもしれない」という見方を示しています。

“反転攻勢 クリミア情勢焦点か” 米の元駐ウクライナ大使

アメリカの元駐ウクライナ大使のウィリアム・テイラー氏がNHKのインタビューに応じ、ウクライナがことし春から夏にかけて反転攻勢を強めるとみられることについて、ロシアが一方的に併合しているクリミアをめぐる情勢が焦点になるという見通しを明らかにしました。

このなかでテイラー氏は「もしウクライナがロシア軍の大部分を追い出すことができれば、交渉のテーブルにつき、クリミアを外交的にどう取り戻すか話し合うかもしれない」と述べ、ウクライナは、戦況を極めて有利な状態に持ち込んだ上で、ロシアに停戦を呼びかけ、クリミアを巡って交渉を始める可能性があるという見方を示しました。
その一方で「アメリカは、ウクライナに対してアメリカの兵器をロシア領内で使わないよう助言しているが、クリミアは、ロシア領ではない」とも述べ、ウクライナが外交ではなく軍事力でクリミア奪還を目指すことをアメリカが認めていないわけではないとしています。

その際にロシアが核兵器の使用に踏み切る可能性については、「ロシアから見て国内的にも国際的にも合理性がなく、とても低い。プーチン氏は、合理的ではないというわけではない」と述べました。

そして、テイラー氏は「ウクライナは、クリミアを含めていかなる領土も決してあきらめない」と述べ、ウクライナが領土保全を回復するまで欧米各国は、支援を強化していく必要があると訴えました。